第52話 対策会議からの気分転換
続きです。
長ったらしい会議ほど無駄なものはないですね。
パーッと行きましょう。
2018/02/05 読みにくい箇所を修正しました。
濃密な一夜から明けて翌朝。
俺達はアルベルトさんにやられたことへの対策会議を開いていた。
「昨日、アルベルトさんやライアンさんにやられたことなんだけど」
「一瞬で間合いを詰められましたね」
正直どうやったのかわかっていない。
「あれならわかるわよぉ〜?」
ソファに横になりながら、ルイーズが言う。
似合うなぁ、おい。
煙草でもふかしてりゃ、売春宿の女元締めだわ。
「あれ、なんだったの?」
「あれはねぇ、ただの歩法よぉ。意識を逸らせてぇ、その隙に近づいただけぇ」
「マジ? つまりただの技術か?」
「そうねぇ。前に『洗練された』がつくけれど」
……練習するしかないやつだ、
一朝一夕ではどうにもならないやつ。
正直魔法は、魔力をぶち込んでやれば威力が上がる。
詠唱しても一緒。
でもこういうのは、いかに自然に淀みなく出来るかが重要で、それには練習するしかない。
ただ、言い換えれば『練習すれば俺にも出来る』だからな。
頑張りがいがあるってもんだ。
「じゃあアルベルトさんのナイフはなんだったんだろう? 魔法じゃなかったよな? 技術、でどうにかなるもんでもない気がするんだけど……」
うーん。
「もしかして……でも……それくらいしか……まさか……」
オードリーがブツブツと自分との対話を繰り返している。
「どうした、オードリー。何か思いついたのか?」
ハッとして顔を上げる。
まだ悩んでいるようだ。
「エーリ。私自身半信半疑なので、合ってるかどうかわかりませんが、いいでしょうか?」
「いいよ。なんでも言ってくれ」
今はどんな情報でも吟味する時間だ。
「ただの知識でしかないのですが、あれは『武技』というものではないかと」
「武技? 初めて聞いたな。なんなんだ? それ」
「武技も技術、と言えばそうらしいのですが、特に高度な攻撃技術で、魔法とも違う、ただの技とも違う、未だ解明されていないものらしい、です」
なんとも、ふんわりしているな。
「これを極めた人は、魔法をたやすく切り裂き、相手を倒すことが出来たと言われています。魔力がなくとも使えるらしく、はるか昔には大勢いたらしいのですが、今は一部の達人のみ使える技術であると、昔読んだ本の中に書いてありました」
「なんか『伝説の剣豪、ゴエゲート』みたいだね!」
ステフがさらりと言う。
ゴ、ゴエゲート……。
ゴエ + ゲート(門) = 変換は各自で
「な、何それ?」
「え? 知らないの? ゴエゲート。魔力持っていなかったけど、岩だろうが鉄だろうがミスリルだろうが、果ては魔法でさえ切り裂いて、『またつまらん物を斬っちゃった! てへ☆』って言う人」
……イメージが崩れるな。
あとそいつ絶対転生者だろ!
悪ふざけしやがって……。
「ま、まあ人となりはともかく、話自体は武技を使っていたように思えますね」
「あ、ああ。昨日のナイフも武技だと考えると納得がいく、か。ただそうなると、魔法とは違う方向の力ってことになるな。防ぎ方としては、同じく武技を使うか、攻撃の届かない所に移動する、とかそんな感じになるな。今のところ逃げるしかない」
「……でもぉ、もし別の力を使っているとしたらぁ、魔力と同じでそうそう連発出来ないんじゃないかしらぁ?」
「もしそうなら、逃げ回って適当な物を切らせるのも有効な手ですよね」
「まあなぁ。ただ、昨日みたく狭い場所だとどうしようもない、ってことだろうし、結局対策にはなっていない気がする」
正直八方塞がりだな。
こういう時は……。
「よし、出かけよう!」
「お兄ちゃん?」
「気分転換だよ。確かにこうやって考えを出し合うことは大事だ。色んな考えが出るからな。でも、行き詰まったら気分転換すると、意外にいい考えが浮かんだり、手がかりに出会えたりするんだよ」
これは前世でもそうだった。
2時間続いた会議で出なかったアイディアが、風呂に入って5分で出たこともあった。
ご飯の最中だったり、眠る直前だったり、リラックスしている時の方が脳みそだって働くはずだ。
「じゃあどこ行くの?」
「甘い物でも食べに行こうぜ。確か、帝都でしか食べられない甘味があったよな?」
バッと目が光る女性陣。
「チヨコレイト、ですね!」
「チヨコレイト!?」
「あらぁ、まだあるのねぇ」
「おいしいです。食べたいです」
どうやら満場一致で決まったようだ。
「よーし、目指すは帝都中央チヨコレイト専門店、『ココア・ド・コ』だ!」
「「「「おー!」」」」
ネーミングセンス!
俺は好きだぞ。
「ということでぇ」
「やってきました!」
「ココア・ド・コーー!!」
「ぱふぱふ!」
帝都中央、高級商業地区。
ここには様々な高級店が軒を連ねている。
服飾、宝飾、武具や魔導具、食に性。
ありとあらゆる高級が揃うこの区画は、ドレスコードが設定されており、さらに冒険者は最低でもBランク以上じゃないと入ることが出来ない。
ではなぜ俺達が入れているかというと。
「凄いわねぇ、ジャンヌの名刺って」
「ジャンヌ様様だね!」
「良い方とご縁が出来て幸せです!」
「ジャンヌは私の友達」
そう。
ジャンヌの名刺でOKだったのだ。
……門で止められた時はどうなるかと思ったけど。
縁は繋いでおくべきだね。
兎にも角にも店まで来れた。
「高い、んだよな?」
「ええ、とても」
「さっき看板見てきたけど、チヨコレイト一粒銀貨1枚、だって……」
「『へべれけ』で酔いどれられるわねぇ」
「おいしい物食べたいです」
……いよし!
「入ろう。せっかく帝都に来たんだ。最高を知っておくのはいいことだと思う」
「まあ、お金は魔物の売却額がありますし。冒険者なんですから、また稼げば良いんです」
意を決して店に近づく。
当然のごとく居るドアマンがにこやかに扉を開けてくれる。
「いらっしゃいませ。ようこそ、甘美なる世界へ」
扉が開け放たれた瞬間、あの独特な甘い香りが、鼻孔をくすぐる。
「すーーーーーー……はぁ」
思わず深呼吸してしまう。
世界は違っても、この匂いは変わらないのか。
「いい、匂いだねぇ」
「ええ。本当に」
「このお風呂に入りたいわぁ……」
「入って飲みます」
気持ちはわかる。
「ようこそいらっしゃいました、『虹の絆』の皆様」
「え?」
声をかけて来たのは、妙齢の婦人だった。
焦げ茶色の髪を綺麗に編み込み、シックなドレスに身を包んでいる。
泣きぼくろが特徴的な美女だ。
それにしてもなぜ、知っているんだ?
「あの、初めて来たと思うのですが……」
「はい。初めてでいらっしゃいます。ですが、上級受付のジャンヌ様の名刺をお持ちであることは、私共の耳には入って来ております。将来有望なお客様は覚えておくのが、商売人でございますから」
柔らかな笑みを浮かべているが、つまりは情報が筒抜けです、と言われたのである。
そして、ジャンヌの名刺がなければ、入店などできていなかった、とも。
それが現在の評価だから仕方ないな。
「それは、頑張りがいがありますね。早く自分の名前だけで覚えていただけるようになろうと思います」
「お待ちしておりますよ。申し遅れました、私当店の店主を務めております、ショコラ・ココアでございます」
うわぁ〜お。
そのまーんま。
「ご存知でしょうが、『虹の絆』リーダーのエーリです」
「ええ、存じ上げております。こちらへどうぞ」
店内を案内される。
チヨコレイト専門店なので、茶色、黒、白などが基調の店内は、流石高級店という感じだった。
店員のお兄さんお姉さんも美男美女揃いだ。
「本日はどのような品をお求めでしょうか?」
店主自ら接客してくれるのはありがたいが、周りの客がコソコソ話しているのが気になる。
多分、珍しいんだろうな。
「帝都にしかない甘味があると聞いたので来た、と言うのが正直なところですね。私や妹は食べたことがないもので。何があるかもわかっていません」
「それではご説明させていただきますね」
「あの」
「はい」
「ココアさんが店に立つのは、珍しいのではないですか? 他のお客さんもチラチラとこちらを見ていますし」
絶賛チラ見され中である。
心なしか店員にも緊張が走っているような?
「そうですね。こうして接客するのは店主となって以来ですから、5年ぶりかと。ご迷惑でしょうか?」
要はオーナーが久しぶりに店に立っているわけだ。
そりゃ珍しい訳だよ。
有名店のオーナーショコラティエが来日しました、みたいな感じだもんな。
「いえ。それは光栄なことですね。ぜひともお願いします」
「かしこまりました」
それから商品説明をしてもらう。
チヨコレイトは、カカーオという実の種を発酵、焙煎して他の材料と合わせて作った物らしい。
名前くらいしか違いがないな……。
なので、商品もビター、スイート、ホワイトなどがあった。
あとはそれらを使ったトリフ、キットなカットのようなキトカ、チヨコボールなど、どう考えても転生者が昔関わったであろう品が並ぶ。
「うわぁ、キレイ……」「ええ……」「美しいわぁ……」「じゅるり」
女性陣は目をキラキラさせながら棚を見ている。
説明聞いたげてよ!
俺しか相鎚打ってないじゃん!
「こう言った商品は、どなたが考え出しているのですか?」
「殆どの商品は初代が考え出したものと言われています。もう、500年も前の話です。それから精製技術やデザイン、滑らかさなどが追求され、今の形になっています。ただ、同じような商品が多いのは否めません」
何だかんだ異世界のアイディアだもんな。
どう扱っていいかわからなくなったのかもしれない。
と、ココアさんが店の奥で立ち止まる。
そこには他の商品とは別の棚があり、専属であろう店員が立っていた。
見た目で、この店の最高級品が置いてあることがわかる。
「皆様、ここまで様々な商品をご説明させて頂きましたが、こちらが、当店の最高の品。『ミルク』でございます」
「「「「おー〜」」」」
それは、神の名を冠したチヨコレイト。
形もミルクの姿を映したものとなっていて、細かな装飾がなされた木の箱に入っている。
「帝都に売っている物の中で、『ミルク』と敬称なしの商品は、当店の物のみとなっているんですよ」
それは凄いな。
「とても美しいですね。お値段はいかほどで?」
「一つ金貨10枚となっております」
高!!
手のひらより少し大きいサイズで10万円とか……。
「お高いでしょう? ですが、それに見合った品質でございます。味、滑らかさもさることながら、ミルク様と同じく全属性の魔力が込められております」
「え? 全属性の魔力?」
「ええ。作成時に主要5属性は直接、その他は魔石から抽出した魔力を練りこんであります。希少な魔力を使いますので、どうしてもこの値段に」
「なるほど」
「ですので、プロポーズのために買っていかれる方が多いのです。愛する女性に渡す時、『私の女神になってください』という意味と同義ですので」
全属性とかけて、私の全てになって、か。
食べれば全属性を感じられるんだし、性属性とかが仕事して、いい返事をもらえそうだしな。
ジャンヌさんやマチルダさんへのお土産に買って行こうかと思ったけど、やめておいた方が良さそうだな。
下手に持っていくと、アルベルトさんやライアンさんが発狂しながら襲って来そうだ。
「そんな意味があるなら、迂闊に送れないね、お兄ちゃん」
「ああ、ジャンヌさんやマチルダさんのお礼の品にしようかと思ったんだけどな」
「でしたらこちらのミニサイズはいかがでしょうか? こちらですと親愛の品として人気ですよ? お値段も5個入りで金貨5枚ですし」
「そう、ですね……」
小指サイズが5個で5万。
1粒1万、か。
……。
俺の中に、とある考えが浮かんだ。
25,000PVを達成しました!
読んでくださった皆様ありがとうございます!!
今後も毎日投稿します!
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