第51話 夕食会の終わり
続きです。
濃密な夜がようやく終わります。
2018/02/03 読みにくい箇所を修正しました。
女帝が来てからの夕食会は、和やかなものだった。
……表面上は。
「うふふふ。エーリくんのお母様とは一度お会いして話をしてみたいものだわ」
「はい。きっと仲良くなると思いますよ。
【女帝】のマチルダと【絶望】のミリアの会合か……。
『私、絶対同席したくない』『右に同じで』
『私はエーリくんのお母様には会ったことはないけれどぉ、遠慮しておいた方が身のためな気がするわぁ』
『ご飯が美味しいです』
「母さん、話をk 「ライアン」 はいっ!」
「後で話はたっぷり聞くわ」
「……はぃ」
この絶対的な差はなんなのだろうか。
Sランクなんて、冒険者の1%しかいない化け物達なはずなんだが、少なくとも2人は尻に敷かれている。
「私の現役時代最大の功績は、マチルダを射止めたことなんだよ」
アルベルトさんが自信満々に言う。
「もう、アルベルトったら!」バチン!! ズパン!!!
シュー……
……耐久だけは現役のままだろうな。
実際当時の新聞(魔法新聞?)を見せてもらったが、そこには、『【女帝】結婚!』の見出しと共に、一面をマチルダさんの写真が埋めていた。
皇帝婚約の記事が隅っこに追いやられていることからも、相当な『事件』だったらしい。
可哀想な皇帝。
それにしても。
「今もそうですが、この頃は特にジャンヌさんそっくりですね」
「あらそう? 大分昔の写真だけれど。うふふ」
【女帝】はご機嫌である。
アルベルトさんから小さくサムズアップが送られてきた。
「並んでみると、姉妹か従姉妹? くらいに思えますよ」
「まあ、お上手ね」
「実際親子揃ってナンパされたこともあります」
「それだけお若ければ納得ですわぁ。美の秘訣を教えていただけませんこと?」
「あら、私もルイーズさんにお聞きしたかったことですわ。今度お茶でもいかがかしら?」
「ええ、喜んで」
よしよし。
絶対強者の取り込みは順調だな。
このまま進めよう。
『『『了解』』』』
基本メイガード家の男は黙っている。
たまにアルベルトさんが持ち上げてズパン!!! されているくらいで、ライアンは黙って食事をしていた。
顔が青いのは、この後訪れる『お話し』の時間のせいだろう。
その気持ちだけは共感するよ。
絞首台の順番待ちをしている囚人の気持ちだからな。
そんな楽しい? 時間も終わりは来る。
「ふわぁ……。あ、ごめんなさい」
アンジーが大欠伸をしていた。
時計を見ると、もう23時か。
「あら、もうこんな時間? ごめんなさいね。あんまり楽しくて随分お引止めしてしまったわ」
「いいえ。楽しかったのは私達も同じですよ。なあ?」
メンバー全員にこやかに頷く。
アンジーだけは目をこすっているが。
「それは良かった。エーリくんも皆さんも、これから長いお付き合いになりそうだ。これからも娘共々、よろしく頼むよ」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
アルベルトさんとがっちり握手をする。
「エーリくん。君とは手合わせの約束をしていたね。楽しみにしているよ」
青筋浮かべたライアンさんが、俺の肩を握りつぶさんばかりに掴んでくる。
うん。これなら対応出来ているな。
「ええ。いつか。その時までには、今日の思い出を記録に残して、ジャンヌさん経由でお渡ししますね」
にこやかに言ってあげよう。
楽しみに待っていやがれ。
「なっ……!?」
ライアンさんは顔面蒼白になって、口をモゴモゴさせたままよろけるように下がっていった。
ふはは。絶対にボコってやる(精神的にもだ)。
「今日は久しぶりに楽しかったわ。またいらっしゃい」
「はい。久しぶりに、母と話したような安心感がありました」
「私もです。マチルダ様は帝都のお母様です」
「うふふ。あなた達みたいな子どもなら、いくら増えても大歓迎よ。何かあれば、お母さんを頼りなさい」
よし! 絶対強者ゲットだぜ!!
『最強の一角と縁が出来た……ふふふ。また一歩掌握に近づいたわ』
『兄妹ねぇ』『ですねぇ』『エーリ様とステフはそっくりです』
ふふふ。はぁーはっはっはっは!
『ふふふ。はぁーはっはっはっは!』
うむ。家族だな。
「特級になったジャンヌさんとマチルダさんに受付をしてもらえるように、頑張ります」
「エーリ様……。私も頑張りますね。それまでは東地区支部でお待ちしております」
「はい。頑張りましょう」
ジャンヌさんとも堅い握手を交わし、メイガード家を後にした。
見えなくなる寸前、ライアンさんが首根っこ掴まれて、扉の奥に消えていくのが見えた。
扉が閉まる音が、死刑宣告の木槌の音に聞こえたのは、俺だけではないだろう。
ガチャ
家に戻ってきた。
誰からともなくソファやベッドに倒れこみ、今夜の出来事を反芻している。
「実りはあったけど、キツかったな……」
「うん。すごい収穫だったよ。特にお母様が」
「そうですね。アルベルトさんやライアンさんの件が些事に思えました」
「私も久し振りにあれほどのプレッシャーを受けたわねぇ。本当に魔力持っていないのかしらぁ?」
「ご飯が、美味しかったです。あの人は美味しくなかったですけど」
うん。
詰まる所【女帝】を味方につけられたこと、そのための夕食会だったと言うことか。
あ、流石に一旦リンク切ろう。
それぞれお風呂に入って、明日は反省会を行おうと思う。
『『『『はーい』』』』
「じゃあ私、お風呂沸かしてきますね」
「ありがとう。じゃあ沸いたら順次入っちゃって。俺は最後に入って、掃除してから出るよ」
「私はエーリ様と入ります。ご主人様と入るのは魔法鞄の役目です」
アンジーが腕に巻きつきながら言ってくる。
「いや、一人で入るよ?」
「じゃあ私も入ります。前回のお詫びがまだ済んでいません。今回こそ……」
何が今回こそ、なの?!
「じゃあ私も入るわぁ。楽しそうだしぃ。余裕あるわよねぇ?」
「スペース的にはあるけど……」
この家のお風呂はラブな高級宿泊施設同様かなり広い。
5〜6人なら余裕で入れるのだ。
俺の精神的なスペースは溢れるよ!
「えー。私一人で入るのやだ。一緒に入るー」
「お前もか?!」
「ミルク村では家族で入ってたじゃない。何か問題なの?」
お前だけならいいんだけどな。
美女&美少女に挟まれて興奮している兄を見られたくないんだよ!
「いや、なんというか、その……」
「理由ないなら入るからね!」
「あ、はい」
という流れで、お風呂は一緒に入りました。
アンジーが服を収納して一瞬で素っ裸になったり、オードリー、ルイーズの肢体が刺激的で、俺の分身が荒ぶってステフに『なんなの、それ?』と言われて死にたくなったりした。
アンジーは前回もやっていたそうだが、俺の精神が死んでいたせいで気づかなかったようだ。
とりあえず、大人になったら大人になってやる!
それまでは修行だと思って耐えてみせる!
中身がおっさんにはとてもキツイぜ……。
色々な意味で精神的にも肉体的にも辛い夜だった。
いつに間にか50話を超えていました。
よく書いたなぁ、と思いますが、毎日楽しく書いております。
皆様に見ていただけて、本当に毎日が幸せです。
展開が遅かったり文章が稚拙だったりしておりますが、これからも頑張っていこうと思います。
見ていただいた方、評価、ブクマしていただいた方に感謝いたします!




