第49話 アンジーの力
続きです。
アンジーの実力やいかに。
2018/02/03 読みにくい箇所を修正しました。
夕食会はその後、楽しく進んだ。
アルベルトさんの昔話をたくさん聞かせてもらい、ワクワクした気持ちがとても高まった。
「アルベルト様もエーリも男の子ですね」
「冒険者、でしょう? あなたもワクワクしているんじゃないのぉ?」
「は、はい……かなり」
「ふふ」
オードリーも同じ気持ちだったようだ。
ジャンヌさんはと言うと、アルベルトさんの話をスルーし
「アンジェリーナさんは 「アンジーでいいです」 アンジーさんは 「さんもいらないです」 アンジーは……」
とアンジーに強制的に仲良くさせられ、それからは普通の女の子の友達同士のような接し方をしていた。
そうして1時間ほど経った頃。
ガチャ
「ただいまー」
「兄さんお帰り」
「おお、帰ってきたか。エーリくん、これが現【確殺】、息子のライアンだ」
「父さん、それ恥ずかしいんだからやめてよ。そもそも俺、何度か失敗してるでしょ。っと、失礼しました。アルベルト、マチルダの息子、ジャンヌの兄、ライアン・メイガードです。一応Sランクです」
そう握手を求めてきた青年は、学校に一人はいる、文武両道の憧れの先輩風な人だった。
青と銀が混ざったような髪の色で、短髪。
整った顔立ち。細マッチョであろう肉体。
歯は白い。
「ミルク村、ルークとミリアの子、『虹の絆』リーダーのエーリです。一応Cランクです」
「君がジャンヌのお気に入り、だね。歓迎するよ!」
「ジャンヌさんにはいつもお世話になっております」
イケメンで爽やかで強いのか。とんでもない人だな。
『エーリもかっこいいですよ』
あ、ありがとう。
「ははは。受け答えもしっかりしているし、お連れさん達も美人揃いだね。紹介してもらえるかい?」
「はい。こちらが……」
アルベルトさんの時と同じようなくだりが続き、アンジーの番になったときだった。
「最後にアンジェリーナ。魔法鞄です。ベルウッドさんから譲り受けました」
「へぇ。あのベルウッドさんから! よろしく、アンジェリーナさん」
「よろしくお願いします」
『エーリ様、この人変です。顔は笑っていますが、とても怒っています』
アンジーがそんなことを言ってきた。
怒っている?
『そう、は見えないですけど』
『私もなーんか変な気がした。なんとなく、比べられた気がする』
……誰と?
『わかんないよ。気のせいかもしれないけど』
うーん。
さっきのアルベルトさんのこともあるし、気をつけよう。
『『『『はい』』』』
表面上は和やかに、内面では緊張しながら、夕食会は進む。
「でな、ジャンヌはエーリくんの話をする時、まあよく喋るんだ。あの子はきっとSSになる! とか、私が1番推している冒険者よ、あの部屋使ってないなら貸してあげて! とかね」
「親j こほん。父さんはもう黙って!!」
あ、今親父って言おうとしたな。
『『『『した』』』』
「ははは。随分と肩入れしているじゃないか、珍しい。何か偉業でも達成しているのかい?」
「いえ、大したことは」
「5歳の時に4万の魔物を討伐したそうです」
「そりゃ凄いな!」
おーい、守秘義務ー。
『こういう系の情報は広めてもいいのよぉ〜。冒険者なら自分の価値を高めることを優先するしねぇ』
うーん。目立ちたくないんだけど。
『お兄ちゃん、それは無理だよ』
『『『うん』』』
はぁ。
「エーリくん、今度手合わせしないかい?」
「ライアンさんとですか? うーん、相手にならないのでは?」
「そんなことはないと思うよ。Sランクと言っても、俺は強い方じゃないし」
絶対謙遜だよなぁ。
「では、そのうち。軽くでお願いします」
「そんな謙遜しなくていいのに。あ、そうだ。父さんは試したの?」
「ん? ああ。私はいいと思うぞ?」
「……へぇ」
意外だ、という顔をしている。
皆、多分また来る。
密度を高めるけど、警戒して。
『またぁ?!』
ステフはうんざり気味だ。
「ジャンヌ、これお代わり」
「もう、自分で取ってきてよ」
ジャンヌさんが部屋を出る。
2度目だなぁ、これ。
「エーリくん。そこのソース取ってくれるかい?」
「あ、はい」
俺がソースに手を伸ばした瞬間。
「ダメじゃないかエーリくん。大切な妹から意識を外しちゃあ」
「え? 私?」
そこには、ステフの方に手を乗せているライアンさんの姿があった。
笑顔で殺気は、親子だな。
ステフ、大丈夫か?
『何とか……』
「これは……無属性? ふーん。確かに面白いね」
ゲムもバレたか。隠蔽方法を考えないといけないな。。
「ええ、大切な妹です。ですから、手を離してもらえますか?」
密度は今出せる最高だ。
「ふーん。凄い密度だね。うーん、でも俺の魔法との相性は最悪かな?」
ジュー……
?! 溶かされている?
「溶かして、いるんですか?」
「そうだよ。俺の二つ名は【溶解】だからね。ほら、いいのかい? 大切な妹が溶けちゃうよ?」
ジューーーーー
ニコニコしながら魔法を使ってくる。
顔と行動が一致してないぜ、お兄さんよ。
「お兄ちゃん……」
こいつ、アルベルトさんとは違うな。
本気で溶かしてきてる。
ステフ、その速度なら大丈夫だ、絶対に傷つけさせない。
『わかった』
「随分余裕そうだね。これが本気だとでも思ったのかな?」
にこやかな顔に、影が落ちる。
ジュジュジュジュ!!
クッ! 速度が上がった。だが負けん。
魔法の取り込みは……無理か。
属性が隠蔽されていて、今の俺では解析出来ない。
「全く……父さんも何を考えてるんだ。こんなやつが愛しいジャンヌに近づくのを許すだなんて……。こんな妹、ジャンヌに比べたら糞以下じゃないか。他のメンバーもジャンヌの足元にも及ばない。路傍の石のほうがよっぽどましだ……。ああ、俺のジャンヌ。愛してるよジャンヌ。ふふ、ふふふふふ……」
爽やかだった顔は嫉妬と憎しみ、偏愛によって歪んでいた。
「おい、ライアン。やりすぎだ」
流石にアルベルトさんも止めてくれる。
「何言ってるのさ父さん。こいつら全員消して、ジャンヌには『帰った』って言おうよ。冒険者なんだから、遠くに行ったって言えばわかんないよ」
「私の言うことが、聞けないのか?」
笑顔に殺気がこもる。
「止められると思ってるの? 元と現【確殺】、どっちが速いだろうね?」
こいつ……!
『お兄ちゃん、【絶魔】使っちゃダメ?』
……やめとこう。
アルベルトさんがやったことを、こいつが出来ないとは言い切れない。
魔法が無効化された瞬間、ナイフでグサリはあり得る。
今は魔法で勝負、みたいな状態だから、このままの方がいい。
正直、これくらいならいつまででも耐えられる。
『……わかった。でも危なくなったら使うね。気を引くくらいは出来ると思う』
了解。
「……ふーん。魔法じゃ埒が開かないかな? 他のゴミとともにバラバラにしようか」
言ってるそばからこれか。
『流石に手を出します!』『この男、ただのシスコンだったのねぇ。後悔させてあげるわぁ』
オードリーとルイーズが、手を出そうとした時だった。
「あの、皆さん困っています。やめてもらえませんか?」
アンジーがライアンの袖をクイっと引っ張る。
「あ? 道具が喋るな」
アンジーを一瞥してライアンが言い放つ。
「そう、ですか。でも、このままだと嫌です。エーリ様や皆が悲しいです」
「そうか、お前から消えたいんだな?」
ライアンがナイフを手に取る。
その間もステフへの溶解は止まらない。
限界だ。しょうがない、皆、やろう。
『『『はい』』』
俺達が覚悟を決めた時だった。
「それは残念です。ごめんなさい」
アンジーが悲しそうな顔をライアンに向ける。
お前が謝ることじゃないよ。
だが、次にアンジーの顔を見た時、
その瞳は
真っ黒だった。
「さようなら。それでは、いただきます」
パッ
ライアンが、この世界から消えた。
3,500ユニークを達成しました!
皆さんの目に留まることが出来て幸せです。
これからも毎日頑張りたいと思います。
見てくださった皆様、評価、ブクマしてくださった皆様に感謝いたします!




