第37話 帝都到着
お待たせしました。続きです。
2018/01/06 読みにくい箇所を修正しました。
黒歴史を刻んでしまった俺は、道中女性陣の言いなりとなっていた。
「お兄ちゃんあれ取って」「はい! ステフ様!」
「エーリきゅんマッサージを」「はい! オードリー様!」
「エーリく〜ん。魔力ちょうだぁい?」「はい! ルイーズ様! 喜んで!」
エーリきゅんやら無属性魔力やらが出てしまっているが、
「私、任意の記憶消せるからぁ、どれだけ話しても大丈夫よぉ〜?」
と言うルイーズの言葉に従って、普通に過ごすことにした。
御者と乗客の皆さんにも[不憫な子]という二つ名が芽生える程に同情してもらったため、記憶の消去に同意してもらったのだ。
そのおかげかそのせいか、俺はパシリ道をひた走っている。
何故だろうか、【雷帝】に会いたい……。
ゴーレム馬車で街道を走り、第2、第3のミルク村を通過した。
村人達は早速神像を建設する予定地を確保し、自身も鍛錬に勤しんでいるようだった。
「ミルク村と帝国に遣いを出せ! 姉妹村の締結と、改名の許可申請を行うんだ!」
「「「「「はい!」」」」」
「どうしたぁ! お前の信仰心はその程度かぁ!?」
「うう……ま、まだやれます! ミルク様ばんざぁい!」
「ようし! さぁ、あともう10セットだ!」
「ミルク様ばんざぁい! ミルク様ばんざぁい! ミルク様……」
「いやぁ、やってるなぁ。村長様も喜ぶんじゃないか? なあ、ステフ!」
「……」
「ステフ? オードリー……」
「……」
「ルイーズ」
「あれは、ないわぁ」
「え?」
ゴーレム馬車の人間達は、一様に目を背けていた。
休憩予定だったはずが、足早に村を後にする。
「……お兄ちゃん。ミルク様にバレても、私庇わないから」
「え?」
「罪は一人で背負って……」
俺は2度死ぬことになりそうです。
その後馬車内は、ルイーズのいた町に入るまで静寂に包まれていた。
〜〜 ルイーズのいた町、テンダリール 〜〜
「ここで降りる人は、こっち来てぇ」
ルイーズに記憶の消去をしてもらい、オードリーに簡易鑑定で影響がないことを確認してもらって、馬車を後にしてもらう。
記憶を消去した人には黒歴史の記憶はなくなる。
ただ、俺が不憫な子であると言うことだけが残っているとのことだった。
不憫な子、も消して欲しかった……。
これで大丈夫だとホッとした俺だったが、忘れていたんだ。
この世界にも、[日記]と言うものがあったことを。
この日記で何が起きたか理解した人間達によって、壊変されたものが拡がっていくことになる。
「ちょっと待っててぇ」
ルイーズは自分の店に入ると、10分程して出てきた。
「ちょっとエーリくんにもらった魔力を魔石化してきたのぉ」
その手にはダイヤモンドのようなとても綺麗な魔石が握られていた。
「こうすればいつでも取り出して使えるわぁ。こうやって偽装も出来るしねぇ」
そういうとルイーズは魔石の色をコロコロ変えていく。
「(無属性の魔石って、高いのよぉ〜。こんな良質かつ高密度の魔石を持っていることは、知られない方が賢明なの」
オードリーも頷いている。
たまに忘れるが、俺も色々凄かったんだった。
買い物などの用事も済んだため、町を出ることにする。
ギャレットに挨拶でもしようかと思ったが、見つけることは出来なかった。
「また会えるわよぉ。気にしないでぇ」
と言ってはいたが、知り合いとなったのだから会いたかったな。
「律儀ねぇ」
「エーリきゅんはそう言うところが魅力なんですよ」
「……何となく、わかるわぁ。ふふふ」
そんな女性陣の会話を聞きながら、町を後にした。
その後、帝都についた後について、スケジュールを確認した。
「まずはやることをやっちゃいたいんだ。俺はオードリーとギルドに行って登録してくる。パーティメンバーは俺、オードリー、ルイーズ。リーダーはオ「エーリきゅんで」……オードリー……。なんで? だって俺、新人だろ? 周りから変に見られないか?」
10歳の子どもが17歳と??歳の美女に囲まれてリーダーやってるって、見た目的におかしい。
「そこはほら、リーダーになりたがっている子にさせてあげている私達、という構図でいこうかと」
「まぁ、良いとこの坊っちゃんとかはそういうのあったわねぇ。周りが高ランクの冒険者で固められたパーティとかぁ」
「まあ目立たなきゃいいんだけど……」
「この面子に囲まれてる時点で無理でしょ……」
「うっ」
ステフがバッサリ斬って捨てる。
「で、お兄ちゃん。その後はどうするの?」
「宿を取ったら俺はオードリーと魔法鞄を見に行こうと思うけど、二人はどうする?」
「うーん、私は観光かなぁ。ルイーズさんついて来てくれる?」
「ええ、良いわよぉ。帝都にいたのはかなり前だけど、だいたいのことはわかるわぁ」
「?! エーリきゅんとデート、エーリきゅんとデート、エーリきゅんとデート、エーリきゅんとデート……」
約1名会話出来なかったが、まあ予定は決まった。
ステフの入所式まで、ゆっくり過ごすとしよう。
テンダリールから帝都までの道のりは、かなり平穏だった。
魔物の襲撃は5回しかなかったし、山賊や魔物に襲われているのを解放した村の数も12だけだった。
途中からめんどくさくなって、ルイーズの記憶消去を頼りに普通にゲム魔法で狩ってたっけ。
捕まえた山賊や魔物の素材は、本当に良質なもの以外は村の復興や繁栄に使ってもらうことにした。
全てミルク様の思し召しということにして。
どうせ怒られるのだ。派手に逝こう。
そしてミルク村を出発して1ヶ月が経った頃、
「帝都が見えたぞ!」
俺達は帝都、グランドミルキスタに到着した。
「うわぁ……大きい……」
「わー! 綺麗だねー!」
「城下町も凄いんですよ。時間はありますから、ゆっくり回りましょう」
「何年ぶりかしらぁ。ふふ、あまり変わってないわねぇ」
各々感想が出たが、この帝都、本当に大きい。
まず、現在帝都への最後の山を越えた辺りである。
そこから優に20㎞も先に帝都があるが、中心にある帝城は一段と高く、高さ500mはあるだろうか。
城下町も半径10㎞に渡って存在し、それぞれ城壁で区画が分かれている。
あれを攻め落とそうと考えるなら、中心部に一気に迫れる方法が必要だろう。
正直無理がある……。
しかも聞いたところによると、物理的にも魔術的にも最高レベルの技術と資材が投入されているらしく、傷を付けるだけでも、化け物クラスの強さが必要なのだそうだ。
更には中心部に向かう程、それが強くなってくる、と。
「まあ直接的じゃなくても内部から色々な分解は出来そうだから、絶対無理ってことはないと思うわ」
とは天才の弁である。
が、頑張れ。
俺たちはまず、一番外側にある定期便用の通用門を目指した。
「やっと帝都に着いたな……10年、か」
柄にもなく感傷に浸ってしまう。
が、
「お兄ちゃん、似合わないよ?」
「エーリきゅん。普通ミルク村くらいど田舎の村出身の子どもが、10歳で帝都とか来ないよ?」
「余程優秀で伝手がないと無理よねぇ」
バッサリいかれる。
いーじゃん少しくらい黄昏たって!
異世界転生果たしたのに、10年も冒険できなかったんだぞ?!
「はいはいむくれないのぉ。んしょっと!」
むにゅん
「あ!!」
はい、ありがとうございます。
「離れてもらえますかねぇ……?! エーリきゅんが嫌がってるでしょうがぁ!」
「ええ〜〜? ほらぁ、しっかり掴まってるわよぉ?」
「エーリきゅん?!」
ひし
「みんなしていじめてぇ。おーよしよし」
「グスっ」
「エーリきゅんごめんなさい! 謝るから私にもギュってしてぇ!」
「……あれが元【竜鱗】だなんて、もう誰も信じないわね」
……というコントを暇つぶしに挟み、ついに通用門までやってきた。
手続きは専用の魔道具(高速のet○的なやつ?)を使うため、一瞬だった。
「お客さん達、ひと月以上一緒だったが、ついにお別れだ。色々あって忘れられない旅になった。まあこれから忘れることもあるけどな! わははははははは! ……また縁があれば、どうぞご用命くださいませ。また会える日を楽しみにしてるぜ。皆の未来に、ミルク様の加護があらんことを」
御者のおじさんがそう言うと、誰からともなく感謝の言葉を発していた。
「皆さん、俺たちのせいで騒がしい旅になってしまってすみませんでした。これから少しだけ記憶も消させてもらいますが、これは皆さんを守るためでもあります。この1ヶ月、本当に楽しかったです。またどこかでお会いしましょう」
「私も楽しかったわぁ。ごめんなさいね〜。代わりに1ヶ月はいい夢を見られるようにしておくわ」
「私もやかましくてすみませんでした……。以前はこうではなかったんですが……。でも、素を出せることがこんなに楽しいことだと、この旅で知りました。皆さんのおかげです! 本当にありがとうございます。簡易鑑定時に知りたいことをお教えしますので、何でも言ってくださいね!」
「皆ありがとー! 私もお兄ちゃんも、初めての旅がこんなに楽しくなって、本当に幸せだったよ。皆の顔と名前はしっかり覚えました! もし困ったことがあったら、このステフ特製感謝状をミルク村の人達に見せてください。きっと助けてくれると思います!」
馬車内に笑顔が溢れ、その流れのまま、ルイーズが記憶消去の魔法をかける。
その後、オードリーが皆の鑑定を行って、本当の別れの時がやってきた。
各々荷物を降ろし、目的の区画へと歩き出す。
皆名残惜しそうに手を振り合いながら、見えなくなるまで目で姿を追っていた。
「……ステフ。オードリー、ルイーズ」
「なあに?」「はい」「なぁにぃ?」
「目的地には着いた。でも、ここからが本当の始まりだ。めいっぱい、楽しもうぜ!」
「うん!」「ええ!」「いつまでも、ね」
不安もある。だけど、それ以上に楽しみで仕方がない!
俺たちの冒険は、まだ始まったばかりだ!
〜〜 完
……とはならない。
なってたまるか。
書いてて思いましたが、この終わり方、すごくいい終わり方っぽくなるから使われるんですよね。
だけどまだ終わりません。




