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第36話 教訓(黒歴史付き)

続きです。


エーリに何度目かの黒歴史が刻まれます。


2018/01/06 読みにくい箇所を修正しました。

「よいしょ。うん、これでいいわぁ!」


 ルイーズの店の前に、『無期限休業中』の看板が掲げられた。


「本当に良いんですか? ルイーズさん……」

「もう、エーリくんたらぁ。……良いのよ。ここでの仕事は終わったわぁ。それはそうと〜」


 ギュッ!


「はう!」


 大切な所を掴まれて、情けない声が出る。


「私のことはぁ、ルイーズって呼び捨てにしてくれなきゃ、イヤよぉ。ね?」

「は、はい。ル、ルイーズ。恥ずかしいから、離して」

「んふ。良い子ね」


 ルイーズが離れてくれる。

 こういうのはまだちょっと早いと思うんだ。


「ルイーズ、出て行くのかい?」


 声のした方に振り返ると、白い髭を蓄えた身なりのいいお爺さんが立っていた。


「ギャレット……。ええ、いい人、見つけちゃったぁ」

「うっ!」


 俺を抱きしめて、ルイーズがにっこり笑う。


「そうか。見つかったか……。おめでとう、ルイーズ」

「……ありがとう」


 なんか、すごく二人の世界感を醸し出している。

 抱きしめられているのにハブって……。

 ……?! これが世に言う放置プレイか?!


「あ、あの! ギャレットさんとはどういう?」


 俺にはまだ早い! まだ(・・)早いんだ!


「あ〜ら、エーリくん嫉妬してくれてるのぉ? 元彼よぉ。今は何もないわ……。あ、因みにこの町の町長様よぉ」

「はじめまして、エーリくん。私はギャレット。ルイーズが説明してくれたように、この町の町長なんぞしておるよ。君が、新しい彼女のいい人、なんだね?」

「はじめまして。ミルク村、ルークとミリアの子、エーリです。いい人かどうかは分かりませんが、ルイーズとパーティを組むことになりました」


 自己紹介すると、ギャレットはにっこりと笑った。

 心なしか涙を浮かべているように見える。


「そうか……そうか……。エーリくん、どうかルイーズを宜しくお願いします」


 そう言うと、ギャレットは深々と頭を下げた。


「え?! あの、頭をあげて下さい! ギャレットさん! 人が見てます!!」


 流石に町長ともあろう人が、人前で子どもに頭を下げるのは良くないだろう。


「君がルイーズを任されてくれるなら、すぐにでも上げよう」

「ちょっ! 意味がわかりません! お願いですから!」


 なんだこの爺い! 世間体が悪いだろうが! なんかヒソヒソ言われてる!?


「任されて、くれるかね?」

「わかりましたって! 任されますから! 早く頭を!」

「ずっとかね?」

「えぇ!? いや、ずっとって……あ〜もう! ずっとです! ずっと面倒みますから!」


 そう言うと、バッと頭を上げたギャレットさんは、俺の耳元でこう言った。


「約束したな? ずっとだぞ? 約束破りやがったらタダじゃおかねえからな、坊主」

「は、はい!」


 殺気?! それにさっきまでの温和な口調はどうした?!

 ドスの効いた声で脅迫してきたギャレットさんは、俺から離れると先程までの柔らかい顔に戻った。


「よろしい。ではな、エーリくん、ルイーズ。また、いつか」

「あなたも、元気でね」


 そう言われたギャレットさんは、何も言わずに手を上げて去っていった。


「……なんかすごい人でしたね」

「今はあんなだけど、昔は『血塗(ちまみ)れ』って二つ名を持った冒険者だったからねぇ。今はあんなだけどぉ」

「ああ、通りで……」


 脅迫の仕方が淀みなかったわけだ……。

 ただ、この姿のルイーズを見て、普通に話しかけてきたってことは。


「ギャレットさんはルイーズのこと、色々知ってるんですね」

「ええ、大体のことは知っているわぁ。サイズ感とかはバッチリよぉ」


 ほう。羨ましい。

 ……大人になれば俺だって。

 いや、大人にしてもらうんだ俺だって!


「そんなことよりぃ、早くイカないのぉ?」

「え?」


 もう?


「? 魔石、届けるんでしょう?」


 あ。


「忘れてたぁああああああ!!」

「あらぁ」


 既になんだかんだで夜になりそうである。

 ダッシュで町を出る!


 門番から見えなくなったところで


「ルイーズ! 捕まってて!」

「え? キャァ!」


 ドン!


 ルイーズをお姫様抱っこし、全力で戻る!


「え? エーリくんスッゴォい!」

「まだまだぁ!」

「!? ぁん!」


 ギュン!


 行き(トラブル抜き)で20分かかった道のりを、5分で戻った。


 そこには……




「お兄ちゃんお帰り〜! そこに直れ!!」

「エーリ、お帰りなさい。さ、鑑定しましょうか」




 めっさ怒っている(ステフ)鑑定士様(オードリー)がいた。


 二人とも笑顔である。

 笑顔であるが、とても怖い。

 そう、ママン(ミリア)のように……。


 そして、俺はと言うと。


「ん〜ちゅっ! ありがとう、エーリくん。あんなに凄いの、お姉さん初めてぇ……」


 セクシー衣装に身を包んだ妖艶美女をお姫様抱っこして、顔を紅潮させハァハァしていた。


 ……誰がどうみても有罪(ギルティ)である。


「いや〜、あの、ちょっと色々あって! 山賊やら魔物やら土砂崩れやら! 次から次へとトラブルに見舞われてさぁ! あっはは! 参っちゃったよ! 町についても魔石士の、あ、このルイーズさんと色々あって、なかなか魔石が完成しなくて! 凄く真剣に作業に没頭してたら、こんな時間になっちゃったよ!」


 二人の微笑みが一切揺るがない!

 マズいマズいマズいマズいマズいマズい!!


「初めましてぇ〜。元帝国魔石士、ルイーズ・キングリッジよぉ。もうエーリくんが凄くてぇ! お姉さん骨抜きにされちゃったのぉ。あんまり凄いからぁ、入れてってお願いしたのよぉ〜! これからよろしくねぇ、妹さんとぉ、鑑定士様ぁ」


 ルイーズさん!? 人聞きの悪いこと言わないでもらえます!?


 微笑むステフとオードリーの目が細められている。

 ゴゴゴゴとか聞こえて来てる!

 御者さんとか他のお客さんとか、抱き合ってガタガタしてるよ?!


「ご丁寧にありがとうございます。初めまして、ミルク村、ルークとミリアの子、エーリお兄ちゃん(そこのケダモノ)の妹のステファニーです。私は帝都まで一緒なだけですから、お構いなく」

「帝国特級鑑定士、冒険者のオードリーです。親御さんからエーリくん(そこの裏切り者)の監督を任されております。パーティメンバーとして親睦を深めるために、まず鑑定、しましょうか」

「うふふふふふふふ……。良いわよぉ〜?」


「ちょ! そんな簡単に人の鑑定とかダメなんじゃn 「エーリくん?」 はいぃ!!」


 首をコテンと傾げたオードリーが近づいてくる。


「私達はあなたを信じて、ずーーーーーーーっと、いい子で待ってたんですよ? それがなんですか? 誰ですか? キレイな人なら誰でも良いんですか? 私じゃダメなんですか? いい身体って褒めてくれたじゃないですか? 何を安心してるんですか? 鑑定するのはエーリからですよ?」


『?』のたびに近づいてくる顔。

 最後の『?』の時点で、首を真横にしたオードリーの顔が、1㎝の距離にあった。

 漏らしそうです。


「我、オードリーの名において、ミルク村、エーリの鑑定を行う。我が問いに答え、汝が全てを我に見せ()。我は汝の行いを鑑定し、罪の裁定を行う。我は汝を害さぬことを誓えない(・・・・)が、汝が無実を主張するのであれば、我を受け入れ、魂の扉を開け。【鑑定(かんてい)】」


 呪文に棘が多すぎる!

 ほぼ命令じゃないか……。

 受け入れても地獄、受け入れなくても地獄……。


 ?!


 俺受け入れてないけど?!

 なんか割り開いてくる?!


『エーリくぅん……お話し、しましょうねぇ!』


 ぎゃぁああああああああああああああ!



 〜〜 5分後 〜〜


 そこには土下座して泣いている俺がいた。

 特級鑑定士の名は、伊達ではなかった……。

 全て覗かれ、全て報告された。


「うううう……ずびばぜんでじだ」


 目の前で俺を見下ろしているオードリーの目は冷たい。

 やがてニコッと微笑み、俺のアゴを人差し指の腹でクイっと上げ、


「……今後の行動で示して下さいね」

「は、はいぃ」


 俺は、俺は強くなったと思っていました……。

 調子乗ってすんません!!


「お兄ぃーちゃん! 大丈夫だよ!! 人生こういうこともあるって!」


 ステフは許してくれたのか、いつもの調子で話しかけてくれる。

 うう、いい妹だ……。


「安心して。お母さんには報告しておくから!!」

「へ?」


 死刑宣告を受けました。

 妹は天使で悪魔でした。


 俺の意識はそこで途絶えた。



 その後内容は壊変されながらこの件が全世界に広まり、ステフの二つ名の一つ、「ミルク村の天使で悪魔(エンジェリックデビル)』が誕生したのは、また別のお話。



 その夜、夢にミリアが出て来たのだが、『お話し』する時のあの笑顔でひたすら俺の顔を見続けた後、


「覚悟」


 その一言だけを言い放ち、消えていった。


 俺の転生人生は、実家に帰った時点で終わりを迎えそうです。


 ……おねしょもしてしまいました。


 翌朝、泣きながら自分の服を洗っている時、ステフとオードリーはクスクスと笑い、ルイーズはちょっと興奮しながら俺の息子を眺めていた。



 教訓:男の嘘はすぐバレる



見ていただいている方に感謝を!

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