第35話 魔石士:ルイーズ・キングリッジ
おまたせしました。続きです。
おばあちゃんとのお話です。
2018/01/06 読みにくい箇所を修正しました。
おばあちゃん魔石士に連れられ、地下にある工場に向かう。
これから魔石の合成を行うためだ。
前を歩くおばあちゃんは、若かりし頃ならさぞ魅力的だったであろう勝負服を纏っている。
今は別の破壊力を宿しているが……。
正直この人と人目がない場所には行きたくない。
工場へ向かう螺旋階段を降りると、そこはまさしく仕事をする部屋だった。
様々な道具が並べられ、作成途中と思われる魔石や素材、本や巻物など、雑多な中にも規則性を感じさせる配置となっている。
奥には魔法陣が書かれており、祭壇もあるようだ。
「着いたわぁ。じゃあ、まずは作業を行う前に、自己紹介しましょうか。私は元帝国魔石士、ルイーズ・キングリッジ。年齢はぁ、ひ・み・つ、よ」
セクシーポーズを取りながらおばあちゃんが近づいて来る。
見えてはいけない所が見えそうだ!
ぐふっ! なんて破壊力だ!
仕草と見た目が合ってないと、ここまで凄いのか!
「み、ミルク村、ルークとミリアの子、エーリです。年齢は10歳です」
「『ミルク村』。……なるほどぉ。だから魔力の質がいいのねぇ」
「え?」
ミルク村ってだけで関係あるの?
「魔力の質はねぇ、その人がもともと持っているものと、影響を受けた魔力によって決まるの。大体5歳くらいまでにいい魔力に触れられれば、質はさらに良くなるのよぉ〜。あなたは年齢的に産まれた時からあの有名な【神域】内で育ったでしょう? なら、全能神様の魔力を受け続けているんですもの。色んなことが出来るようになるはずよぉ」
「へぇ〜〜。それは知りませんでした」
まあその理屈だと、村の子供たちにもいい影響がありそうだな。
「さぁ、始めましょうかぁ。ちょっと、元に戻るわねぇ?」
「もと?」
「ちょっと離れていてねぇ……」
おばあちゃんが何事かブツブツ言っている。
……呪文?
徐々にピンク色の魔力が湧き上がり、おばあちゃんを包んで行く。
そして頭まで覆われた時、包んでいた魔力が弾け……
「お待たせぇ〜〜」
ボン、キュッ、ボン
その表現しか頭に浮かばない妖艶な美女が、そこに居た。
俺の目線くらいの身長も、見上げる程に伸びている。
「へ?」
「んー〜〜! 久しぶりだから戻れるか心配だったけどぉ、大丈夫だったみたぁい。お待たせ、エーリくん」
「あ、はい。とても良いです。でも。えと。何が、どうなって……?」
あの破壊力が正しい破壊力に変わったのだ。
とても嬉しいのだが、説明が欲しい。
「んーほらぁ。人間族って寿命が短いでしょう? そのまま生活したらぁ、すーぐおばあちゃんになって、ヨボヨボのまま死ぬのよぉ〜?! そんなの耐えられなくてぇ……。だ、か、らぁ。魔法で延ばせば良いと思ったのよ〜。普段はおばあちゃんで寿命を余り使わずにいてぇ、大事な時は元に戻れば、死ぬ時は若いまぁま!」
「は、はぁ。それで……失礼ですが、今おいくつで?」
「ふふふふ」
「えーと?」
「ふふふふふふふふふふふふ」
顔が! 真顔に!!
「ご、ごめんなさい!」
「わかればいいのよぉ〜」
スッと元の妖艶な顔に戻る。
「さ、て。始めるからこちらに来てくれるぅ?」
「あ、はい」
魔法陣の方に促される。
「じゃあエーリくんはここに手をついてぇ、無属性の魔力を補充してちょうだい。常に満タンを維持する感じよぉ〜。出来るぅ?」
出来る、の時点でおばあちゃん、もといルイーズが前かがみになり、顔を俺に近づけて来る。大人なルイーズが前かがみになる。つまり谷間が目の高さに来る。
じー。
「エーリくん?」
じー。
「あ〜ら。おませさんね! ……チラ」
指で胸元をさらに広げてくれる。
素晴らしい。こんなイベントは久しぶりだ。全能神や妹やお母さんが居ないのだ、堪能しておこう。
……ふう。
「……ありがとうございます。さあ、やりましょう」
成し遂げた男の顔が、そこにはあった。
何を、とは聞かないのが人情である。
「ふふ。まずは魔石よ。使うのは、こぉれ」
ジャラジャラっと袋から色とりどりの魔石が取り出される。
とても綺麗で、素人目にも良いものだとわかる。
「私の全盛期に作った最上級品よぉ」
懐かしいものを見る目で、ルイーズは宝石を見つめている。
「雷火水土風、これがあの魔石に合成されていた属性よぉ。普通あのレベルを買おうと思ったら、家が10軒以上立つわねぇ」
「そりゃあショックだったでしょうね。若い時にすごく苦労して手に入れたって言ってましたから」
「だと思うわぁ。私もあんな上物久し振りに見たもの〜」
ルイーズは祭壇に5つの魔石を置く。
「じゃあエーリくん。魔力をおねがぁい。いーっぱい、出してねぇ」
何を?! 俺まだ子供だからそれはちょっと……はい、魔力ですね。
あ、そうだ。一応。
「あの、この魔法陣、容量ってどれくらいですか?」
「え?」
「壊れたり、しないですよね?」
「……随分魔力量に自信があるのね〜。大丈夫よぉ。溢れた分はあっちのタンクに入るから」
ルイーズが指差す方向には、大きなタンクがある。
醤油を入れるような大きなものだ。
……あれなら大丈夫か?
いや、怖いな。
「あの、実験させてもらえませんか?」
「いいけど……」
良し、じゃあまず出力1割から。
俺は魔法陣に手を置き、無属性魔力を流し込む。
魔法陣はすぐに満たされ、余剰分がタンクに溜まっていく。
グーン……。
メーターの上がり具合からするに、これなら余裕か。
じゃあ2割……。
ギューン!
マズイ!
俺は魔力を止める。
メーターは一気に半分近くまで溜まってしまった。
どれくらいの速度で使われるかわからないけど、1割位が妥当かもしれないな。
「ありがとうございます。大体わかりました」
ルイーズは目を見開いて固まっている。
「あの、ルイーズさん?」
「エーリくん。……あなた、何者ぉ?」
訝しむように細められた瞳が妖しく光る。
「えーと、昔から魔法が楽しくて、使い切っては倒れを繰り返していたので、人よりかなり魔力量が多いと言いますか。ごにょごにょ」
「ふ〜ん。……まぁいいわ〜。終わったらぁ、じ〜っくり、たぁ〜っぷり、聞かせてもらうわねぇ」
耳元で囁くように言われる。
背筋がゾクゾクするぜ!
くっ! 時間があれば!!
……ふう。
「じゃ、じゃあ、すぐに終わらせましょう?」
「ええ、すぐに、ね」
なんとか会話を終わらせ、それぞれが配置に着く。
「じゃあいくわぁ。魔力、いっぱいちょうだい」
「はい!」
出力1割!
グーン……
ルイーズからも5色の魔力光が迸る。
!!
自分以外ではこれほど多くの魔力を扱える人間は初めて見た。
5色の魔力は、それぞれの魔石に吸い込まれていき、魔石も光を帯びだす。
「我はルイーズ・キングリッジ。汝らと友誼を結ぶものなり。我が願いを聞き届け、一つとなりて我が前に姿を現したまえ。雷、火、水、土、風。5つの属性を司りし神達よ。我が魔力を用いて、異なる物を一つに繋ぎたまえ」
言葉を発する毎に、魔力密度が高まっていく。
それに伴い、無属性魔力の消費も始まった。
ズズズっと魔力が吸われていく感覚があり、その度の魔力を注ぎ続ける。
チラリとルイーズが俺を見る。
「……。エーリくん。これから飛ばすわぁ。しっかりついて来るのよぉ?」
「はい! 任せてください!」
「ふふふ。良い子ね」
ルイーズが前を向いた瞬間、無属性の魔力消費が段違いに早まった。
どうやら無属性魔力を接着剤の用途の他に、それぞれの属性にまた変化させて、魔石に追加しているようだ。
タンクに貯めた魔力も、少しずつ減っていっている。
これなら出力も2割にしても良さそうだ。
良し、行け!
グッと力を込め、魔力出力を上げる。
ググググ……
またタンクへと貯蔵が始まった。
「凄いわぁ。これなら…………イケるぅ!」
カッ!
工場を光が埋め尽くす。
それが収まった時、見たこともないとても綺麗な魔石が浮かんでいた。
魔石の中を5色の光が液体のように動いている。
「キレイだ……」
思わず声が出る。
「ふふふ。ありがとうエーリくん。私の人生の中でも、最高傑作になったわぁ。これ、国宝に指定されてもおかしくないくらいよぉ?」
確かに、この魔石には人を惹きつけるほどの力が備わっている。
「含有魔力も桁外れ。出力も測定出来るのかわからないくらい高度になったわぁ」
ルイーズは汗を垂らしながら、満足そうに言ってくれる。
顔から垂れた汗が、とある谷に吸い込まれていく。
どこまで行くのか、追跡したいくらいである。
だが、あまり時間がない!
何故だ!!
「僕は魔力を出してただけですから。あ、お代はいくr 「要らないわぁ」 ……え?」
「最後にこんなに良い仕事ができたのもぉ、エーリくんの魔力があってこそだもの〜。あんな密度の高い魔力をあれだけの量使わせてもらって、感謝してるくらいだもの。タンクにもちょっと残ったからぁ、少し寿命も延びたしねぇ」
タンクを見ると、1割を切っていたメーターが、2割弱ぐらいになっていた。
それにしても……最後? 寿命?
「寿命って?」
「う〜んとねぇ。うすうす気づいているでしょうけれどぉ、私結構なっがぁいこと生きているの〜。でねぇ、魔力を使って、寿命を延ばす魔法を昔に作ったのよぉ。と言うよりぃ、魔力の寿命化ねぇ。寿命の魔力か化といっても良いけれど。そのタンクが、今の私の寿命なのよぉ」
このタンクに入っているのが寿命。
と言うことは、ルイーズは寿命を使って魔石を作ってくれていたのか?
「あの、これであとどれくらい『持つ』んですか?」
「……1割で約10年ほどねぇ。おばあちゃんの姿で、だけどぉ」
「今のその姿だと?」
「2年持つかどうかってとこねぇ」
だから、最後の仕事、か。
どうする?
……いや、最初から俺の心は決まってるな。
「タンクに魔力を満たせば、長生き出来るんですよね?」
「そうだけどぉ……。流石にあれだけの密度の魔力。そうそうすぐには出せないでしょう?」
「出せます」
「え?」
魔法陣に手を置き、3割出力で魔力を出す。
ギュン!
一瞬でタンクがほぼ満タンになった。
「……エーリくん。あなた、もしかして……ううん。ありがとう」
ルイーズは何か言いかけたが、飲み込んだようだ。
「いいえ。ルイーズさんの魔力の扱いとか、魔石の精製工程とか、色々見せてもらえましたし。目的の魔石も手に入ったし。しかもタダって言われたら、これくらい大したことないです!」
「そう言ってもらえるとありがたいわぁ。でも、どうしようかしらぁ」
「何がですか?」
「こんなに大量で質のいい無属性魔力のお返しって、あの魔石ぐらいじゃ釣り合わないのよぉ〜。何かして欲しいことはなぁい?」
上気した顔、汗で光り輝く肌。
重力を物ともしない山脈。
湿ったせいで肌に張り付くワンピース!
「じゃ、じゃあ……」
ごくり。
「ぼ、僕が大きくなったら……ルイーズと一夜を過ごしたいです!!」
このチャンスは手放さん!、
中身がお婆さんだぁ?!! アホか!
見た目が若けりゃそれで良いんだよ!
オードリーと違ってミリアに目をつけられてないしな!
黙っていればそのうち、この人と……えへへへへへ。
「ん〜〜。そんなことで良ければいくらでもいいけどぉ?」
いくらでも、だと?!
「い、いいんですか?!」
「良いわよぉ〜。ただぁ、ちょっとお願いがあるのぉ。聞いてくれるぅ?」
ルイーズがオレを後ろから抱きしめてくる。
全神経を背中に集中!
山脈が! 山脈が激しく主張してくる!
ヤバい! クラクラする。
「お姉さんもぉ、エーリくんのパーティに入れて欲しいなぁ〜」
入れる? ナニを? ルイーズに? へへへ。
「はい……良いですよ……。あれ?」
「良かったわぁ! 断られたらどうしようかと思ってぇ!」
ルイーズは喜びながらギュっとしてくる。
とても良い匂いだ。
「え? あの、お店は?!」
「えー? この仕事が最後って決めてやったのよぉ。今更決心を変えることはしないわぁ。それにぃ……」ぺろ
「ひゃう!」
ルイーズが首筋を舐めてくる。
「お姉さん、エーリくんのこと気に入っちゃったぁ。一緒にイキましょう?」
「は、はい。宜しくお願いします……」
魔石を買いにきただけなのに、なぜかパーティメンバーが増えました……。
その後
「ゴーレム馬車の魔石には、これはちょ〜っと勿体ないわぁ。2段くらい下のを作って、それを持って行きましょう?」
とのことで、別の魔石を作成した。
確かに、レベル的に前のと同じ物が出来たと思う。
……魔力があれば、本当にすぐ出来るんだな。
それにしても、なんて説明しよう……。
ついに10000PVを達成しました!
見てくださった回数が5桁超えたということですよね?!
正直10話くらいで「俺たちの冒険はこれからだ!」とかを予想していたので、とても嬉しいです!
これからもよろしくお願いいたします!




