幕間 【雷神】の独白
エーリに殴り飛ばされる(予定)の【雷神】さまのお話です。
短いですがどうぞ。
2017/12/23 読みにくい箇所を修正しました。
「怒っとるなぁ……」
【雷神】ガルドリオスは下を見て呟く。
彼の足下ではあの子が叫んでいた。
足下と言っても2km程下なのだが。
「わしのことをぶっ飛ばすとか言っておる。……そのうちホントにやりそうだな」
少し冷や汗が出た。
「あのゲム魔法とか言う無属性魔法。正直強すぎるな。魔力さえあれば、相手の衝撃でも魔法でも吸収、反射が可能とか、どんな冗談だ」
ただの実験で、神たる自分に怪我を負わせ、魔力消費もそれほどでは無い。あれでまだ5歳。
たかだか5歳であれならば、長命の才能があるエーリがこのまま鍛錬を続ければ、そう遠く無いうちに殴り飛ばされることになりそうだ。
「しかし……必要なこととは言え、やりすぎたかのう」
エーリに戦わせた25万の魔物の群れ。
恐らくあれも【トラブルホイホイ】のせいだろう。
【神域】と【聖域】に住処を追われ、難民キャンプ状態になった魔物たち。
多種多様の群れが近づけば、普通はお互いに潰し合う。
縄張りがゴチャゴチャになるのだから、自分のテリトリーを主張するために、邪魔な奴らを排除する方向に流れるはず、だったが。
「まさか、共生、交配し合うとは……」
互いに食い合うこともなく、犬猿の仲の種族間でさえ交配が行われ、今まで存在しなかった魔物達が生み出されていた。
最初5万程だった数も、この5年で25万にまで膨れ上がり、数は充分とみたか、帝国に向けて進軍を開始しようとしていた。
「あのミノタウロス、明らかに知性を備えておったしな。魔物が知性と共生を覚え、軍を作り人間を襲う、か。恐らくここだけの話ではあるまい。世界的にこれが進めば……」
魔物が支配する世界になるだろう。
「今回の件、エーリには悪いことをしたが、いい経験を積ませることはできた。あの子のためなら、わしは悪役でもなんでも引き受けるぞ。それが、神としてあるまじきことでも……」
エーリを鍛えてほしい、そのために、あの魔物達と戦わせてほしい。
泣きそうな顔で頼んできた可愛いあの子。
流されやすいから戦ってくれるとは思うけど、優しいからきっと途中で魔物の立場にも立ってしまう。
でもその優しさで、大切な誰かを死なせてしまうかもしれないし、もしかしたらエーリ自身が死んでしまうかもしれない。
死なせないように、吹っ切れるように、そう追い込むことは出来ないか。
優しすぎるあの子は、自分を傷つけながら頼んできた。
「だがあの坊も、お前が思っとるよりしっかりしとるぞ? ミルクよ」
途中ゲム魔法の強さに油断しきりだったが、自ら諌めて戦闘方法の確立まで行った。意思を持たないはずの相手と意思疎通をして、落とし所を話し合うことも出来た。
「神に対しての不信感は出来てしまったろうが、これでエーリの準備は終わった。これからきっと鍛錬を積んで、帝都への縁も出来ているし、ミルクも動くであろう。ふふふ。お主が殴りに来るのを、楽しみにしておるぞ。……わしも修行せんとな」
将来のへの期待と不安を胸に、【雷神】は神の世界へと戻っていったのだった。
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