第15話 おはなしと契約
本日最後の投稿です。よろしければご覧ください。
※2017/12/10 読みにくい箇所を修正しました。
鑑定が終わり、現実世界に戻った俺たちが見たのは、
変わり果てた両親と村長の姿だった。
グッタリとしたルーク。
髪を振り乱し、肉切包丁を握りしめ、涙を流しながらこちらを睨むミリア。
三角巾とエプロンを着け、家事に勤しむ村長。
……誰か説明してほしい。
オードリーも息を呑んでいる。
ただならぬ気配を感じているようだ。
だってミリアが睨んでるの、オードリーだもん。
「へんt・・いえ、【鑑定士】様、そこになおr……いえ、お座りください」
「え、ええ(何故かしら、殺気を感じるような)」
「鑑定は終わったのですね?私のエーリに何をしたのか……いえ、何があったのか教えていただいてもよろしいでしょうか?それによって『色々と』変わってまいりますので」
ミリアの顔は笑顔だ。
だが、今までと比較にならないくらいの殺気が放たれており、オードリーも即答出来ない。
「(私何かした?! まさかバレて……いやでもそんなはずは)」
『ただいまー……って、あら』
ミリア! これ何?!
「?! 全能神様!」
「全能神様?」
オードリーに視線が刺さる。
ミリアの殺気が増す!
俺が漏らす!!
『オードリー、落ち着いて。説明してあげるから。オードリーは精神世界でエーリと私の魔力に直接触れたでしょ?だから私の声も聞こえるし、【聖域】内ならエーリの声も聞こえるはずよ』
へー。聞こえるか、オードリー。
にょ〜。止まらんな。
「聞こえるよ、エーリきゅん!」
「エーリきゅん?」
ミリアの腕に力が入る。肉切の柄がミシミシと音を立てる。
ルークの手がミリアの腕を掴む! 頑張れルーク!!
『はあ……。ここは現実世界なんだから気をつけなさいよ。アール家の【竜鱗】さん』
ビクっとするオードリー。
『鑑定中の映像を見せるわ。それを見ればこんな状況になっている理由もわかるはずよ。はい』
頭の中に映像が流れてくる……
うわあ……これは、酷い。
まあ、さすがは特級【鑑定士】というべきか。
保護者達がこんな状態になるわけだよ。
鑑定中は触るなって言われてるし、こんなでも特級鑑定士だし。
手を出したくても出すことができない。
ミリアを除いて。
ルークも止めてくれてありがとう。
マジで母なし子になるところだったわ。
『多分話せないエーリとオードリーだけじゃこの収集はつかないわね。私が話すわ。エーリ、像に触れるように皆に伝えてくれる?』
了解。助かるよミルク。【以震伝心】!
まずは俺のオムツだ。そこは譲れない。
その後みんなで神像に触れてもらえるように頼んだ。
「あっエーリ。ごめんなさい、気づかなくて……」
ミリアがオムツを替えてくれる。
手に肉切包丁を持った状態で。
ミリア、大事なところに当たりそうなんだ!
ヒィ!
すれすれ!
「エーリ、何もされてない? もし何かあれば言うのよ? ちょっと動くだけでもそう捉えるわ。お母さんがちゃぁあんと始末をつけてあげるから……」
影を落とした笑顔で言われても、微動だにできないよママン……。
……
5分間動けなかった。
渋々納得したのか、
「ちっ!」
舌打ちをして戻っていくミリア。
手には肉切包丁を握りしめたままであった。
村の広場に移動する。
神像には何人かの村人が触れて祈っている。いつもの光景である。
ようやく神像に触れる保護者達。
『あ、あー。聞こえる? 悪いけど、村長、ルーク、ミリア、オードリー以外は離れてちょうだい』
ビクっとして離れていく村人達。
その顔は笑顔であった。
今から話すのがどんな内容かも知らずに。
『……いいようね。一人ずつ話をします。じゃあまず、ミリアから。他の人は離れて』
「「「は、はい」」」
ミリア以外が手を離す。
『ミリア、鑑定中のオードリーは下着姿でエーリに抱きついて、キスしたり頬ずりしたりしたけど、性的なアレはしてないわ』
「そうですか。殺せばいいんですね?」
ママン……。
「違います。彼女を殺すことは私が許しません。彼女にはエーリのために働いてもらうつもりなの。いい?彼女は世間的に無感情で、冷徹で、公平公正というイメージがあります。でもね、それは嘘なの。本当は感情豊かだし、冒険者になりたいという夢を持っているのよ』
「あの【鑑定士】が……。でもそれと今回の話と何か関係が?」
「それはね。私達が彼女の弱みを握ったことが重要なの。彼女は特級鑑定士よ。帝国の中枢との関係も深いわ。実力もある。そんな彼女の力を、今回の件をバラさないことを条件に使わせてもらうの。考えてみなさい。あんなに可愛いエーリよ?今回のような事件がまた起こらないとも限らないわ。というか確実に起こるでしょうね。そんな時に彼女の存在が役に立つの。もう彼女には手を出させません。全能神の名において誓うわ。だから、今回は許してあげてちょうだい』
全能神が頼むって、よっぽど怒りが凄いんだろうな。
俺もミリアには逆らわないようにしよう。
「………………はぁ。村とエーリを救ってくださったミルク様の願いとあらば、今回だけは許します。でも、次はありませんので」
『ええ、それでいいわ。じゃあ村長とルークを呼んでちょうだい。まとめて話すから』
話が終わったのに、ミリアは手を離さない。
「はい。あの、ミルク様」
『何?』
「エーリのこと、よろしくお願いいたします」
それは母としての純粋な願いだった。
『任せなさい。私を誰だと思ってるの?全ての神の頂点、全能神ミルク様よ』
ミルクは茶目っ気たっぷりに言った。
ミリアには見えていないが、ウインクもしている。可愛い。
「ふふ。そうですね。では呼んできます」
すっかり以前の可憐な姿に戻ったミリア。
いい笑顔のままオードリーとすれ違う。
「次はないわよ」
「ヒッ!!」
無言でコクコク頷くオードリー。
ミリアには絶対に逆らわないようにしようと心に誓った。
だが、
「(正攻法で恋人になるのはいいよね)」
と、思いを新たにするオードリーであった。
この女、タダでは起きない。
村長とルークにも同じような話がなされ、ミルク村への改名や、今後村に対して起こりうる事態に関して、オードリーの助力が得られることを対価に、今回のことは胸に秘めるようにとミルクが話していた。
そして
『オードリー、わかってると思うけど、今後はエーリと、この村のために全てを捧げなさい。もしそれが出来ないのであれば、鑑定中に起きたことを、帝国の全ての人間族に見せます。神託として。あなたの夢は潰えるでしょうね。赤ちゃんを襲った犯罪者ですもの。もしもそれが嫌なら、今ここで、私に誓いなさい。エーリとこの村を守る、と」
オードリーは目を瞑り、何かを決意したのか、凛とした声で言った。
「私、オードリー・アールは、エーリきゅんとこのミルク村へ、私の持つ全てを注ぐことを全能神ミルク様に誓います」
『よろしい。神との契約よ。わかっているわね?』
「はい」
こうして、一悶着もふた悶着もあった俺の鑑定は終わった。
【トラブルホイホイ】なんて言うとんでもない才能があることがわかったけど、それも今気づけたと思えば良かったのかもしれない。
身体は汚されたけど、オードリーとの縁も出来たしな。
身体は汚されたけど。
いつの間にか2000PVを超えていました。
こういう感動が、私の原動力となります。
これからもこの作品を、どうぞよろしくお願いいたします。




