第11話 鑑定士
本編の続きです。書いていたら長くなったので、二つに分けました。
2018/02/20 読みにくい箇所を修正しました。
あの事件から数ヶ月経った。
【雷帝】なんて規格外の存在が出て来て、そんな奴とミルクが知り合いだってこともわかった。
そのことでミルクへの信仰心が揺らぐかと思ったけど、どうやら逆で。
村人達は毎日神像に触れて祈るようになった。
俺も穏やかな日々を過ごせている。
暫くはミリアが【神域】の外に出るのを躊躇っていたが、ルーク主催でもう一度あの湖に行くことになった。
今度はミルク村のみんなと一緒に。
湖に着くと、俺が戦闘時に作った大穴に村長は興奮し、
「ミルク様のお力はなんと偉大か。赤子にここまでの力をお貸しいただけるとは……」
とか言って涙を流していた。
みんなで騒いで楽しんで、ミリアも
「また今度、家族で来ましょう」
って言っていたから、トラウマは克服できたようだ。
そんな中、鑑定士が来ることになった。
俺のステータスを確認し、戸籍への登録と、才能の判定を行うためだ。
良ければ囲い、帝国に都合が悪ければ排除する。
ステータス、か。
この世界にはステータスが存在する。
そのおかげで、自分の才能や努力の成果を目で見て確認することができる。
ただし、普通は自分のものでも見れない。
確認したい場合は鑑定士にお願いするか、各国の首都にある専用の魔道具で見ることになる。
だが料金が高いため、おいそれと見ることはできない。
大体は人生の節目で確認するものだそうだ。
『エーリの才能はちょっと土魔法、水魔法の才能があって、私の力を代行したお礼に雷魔法が使えるようになったって感じにしておいたわ。他はバレると即刻帝国行きよ』
うん、それは困る。
ただなあ。
あの事件の時に戦闘能力の無さを露呈しちゃったから、出来れば戦いの師匠的な人は見つけないといけない。
【雷帝】はダメだ。
なんかもう人として大事な何かを置いて来ちゃってる感じがする。
悪い例として心に留めておくだけにしよう。
うーん、まあ赤ちゃんだからゆっくり考えて行こう。
そんなことを考えていると、鑑定士が来たようだ。
ミリアとルークは一張羅を着て緊張している。
村長が【神域】の境目まで迎えに行った。
実は、鑑定士を呼ぶのはこれで3回目になる。
[1人目]
【神域】に弾かれる。
村人への尊大な態度が原因か?
私は鑑定士だぞ!とか何とか言ってたが、結果通れなかったのでチェンジ。
[2人目]
【神域】に弾かれる。小さい子への視線がヤバかったからだろう。
ハアハアしていたのは疲れていたからじゃないと思う。
チェンジ。
鑑定士と言う職業に疑問を持ってしまう結果になった。
マトモな奴いないんじゃなかろうか……。
今回の結果がマズければ、もう戸籍とかなくてもいいんじゃないかと思ってしまう。
だが、3人目はめでたく通過できたようだ。
村の入口から歓声が聞こえる。
「やった! マトモな人が来た!!」
「鑑定士様にも普通の方っているのねぇ」
どう考えても失礼なのだが、今までの結果を思い起こすと納得してしまう部分もある。
「ようこそミルク村へ。高名な鑑定士様にお越しいただき、誠に感謝いたしております。村民を代表して、村長の私が案内させていただきます」
「ミルク村? この村は別の名前ではなかったか?」
フードを被った鑑定士らしき人物が問う。
まあ勝手に改名しちゃってるもんな。
「はい。数ヶ月前に全能神ミルク様のご加護をいただきまして、勝手ながらミルク村と名乗らせていただいております。改名の申請はすでに行なっておりますが、まだ可否の連絡が来ていないのです。もし否だとしても、書類は以前のもので、愛称はミルク村、という形にしようと思っております」
「なるほど。全能神ミルク様のご加護と言うのは、これか?」
鑑定士は【神域】を指差す。
「はい。あれは数ヶ月前……」
村長の話が始まる。
……
……
……
……長いわ!! 鑑定士も止めろよ!!
ミリアとルークも既に各々家事を行ってしまっている。
夕飯何にする? なんて、これから鑑定士が来る家には見えない。
トントン。
ついに鑑定士が来た。
「ど、どうぞ」
慌ててルークがドアを開け、村長、鑑定士を家に入れる。
席を勧め、お茶を出し、自己紹介が始まった。
「ミルク村のルークとその妻ミリア。そして今回鑑定いただくエーリです」
鑑定士がフードを取る。
「私はオードリー・アール。帝国特級鑑定士だ。早速だが初めても宜しいか」
鑑定士は女性だった。
茶髪で髪型は、ボブ? だっけか。
切れ長の目に鼻筋が通っていて、パッと見ただけでは冷たい印象を受ける。
だが、美人だ。
身長はミリアと同じくらいだから、160cmあるかないか。
胸はミルク以上ミリア未満。
D、だな。
……ごめんなさい、そんな目で見ないで。
「はい。お願いいたします」
どうやら始まるようだ。
鑑定士がテーブルの上に色々と道具を出し始める。
『エーリ!』
ミルクがイタズラを思いついた子どものような顔をしている。
どうした?
『前に打ち合わせた通り、鑑定の時は赤ちゃんの振りをするのよ?』
ああ、わかってるけど……その顔だと他に何か企んでるだろ?
『ふふふふ。だってアール家の【竜鱗】、オードリーの弱みを握るチャンスだもの!!』
【竜鱗】?
『欠けず、変わらず、良く弾く。そんな古竜の鱗のように高性能。転じて頑固、無情、鉄面皮という意味の二つ名よ。この子、能力は高いけど、まあ〜融通が効かないことで有名なの。そんな子の弱みを握れば、不意に才能が溢れた時に、誤魔化しが効くようになるわ!』
……黒い。
黒いミルクがいる。
ミルクが黒いものと混じるって、カフェラテみたいだな。
『私あれ好きー!』
わかったわかった……て、この世界にあるの?!
『うん、名前は違うけどあるよ』
あー、早く大人になりたい。
……で? どうしろと?
『鑑定する時ってね。鑑定士が対象者の精神に入るの。その時、防壁を張らないと鑑定士のステータスや記憶なんかが相手に見えちゃうのよ』
じゃあ防壁貼ってるだろ。
『ふふーん。そ、れ、が! 子どもを鑑定する時は、防壁張っちゃいけないのよ! 魔力干渉に弱い子どもを守るために、法律でそう決まってるの。赤ちゃんが見たって意味わかんないんだから、鑑定士も気にしたりしないし! は〜楽しみだなぁ!』
うーわ。
性格悪いぞ?
『ひどーい。私はエーリのためを思って言ってるんだよ? 特級鑑定士なんて、帝国に5人しかいないんだから。普通は国賓相手に派遣されるのが普通よ。そんな人間の弱みを握れる機会があったら、握っておいた方がいいに決まっているじゃない!』
はぁ……わかったよ。
なんか盗人猛々しい感じになっているが、繋がりを持つ、ということで。
それにしてもそんな凄い人がなんでミルク村なんかに?
『【神域】で弾きまくったからじゃない? 1人目は多分中級? 2人目が上級で、次はってとこかしら』
なるほど。
【神域】の報告も行ってるだろうな。
まあいいや。
「では始める。鑑定中は何があっても私とこの子には触れないように。どんな影響が出るかわからないので」
「は、はい」
村長、ミリア、ルークが不安な様子で椅子に座る。
「我、オードリー・アールの名において、ミルク村、エーリの鑑定を行う。我が問いに答え、汝が全てを我に見せよ。我は神が汝に与えし進物の名を汝に与える。我は汝を害さぬことをここに誓う。汝が我を受け入れるのなら、魂の扉を開き給え。【鑑定】」
ど、どうぞ!
その瞬間、俺の中に何かが入ってくるのを感じた。




