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第125話 オーク大戦 〜 決戦3 〜

続きです。

 帝国軍全軍、冒険者全員が突っ込んでいく。


 1人の敵に対して行うべきものではないが、気持ちはわかる。

 疲弊していた兵士達は、懐からポーションを取り出し、グイッと飲み干す。


 徐々に回復していく彼らが次に起こした行動は、止まる事だった。

 正確には一列になっていくのだ。

 依然走っている兵士もいる。


 俺がその行動に疑問を持つ中、仕掛けたのは高ランク冒険者達だった。

 中でも獣人族の男達が一斉に仕掛ける。


 獣人族の技は獣になって攻撃するものが多い。

 ゾラの【極赤狼】のように圧縮された魔力を瞬発力、パワー、魔力を帯びた毛並みに変換して攻撃に使用する。

【雷獣】も同じコンセプトで作られた決戦魔法だろう。

 最強と思えるほどにこの状態の獣人は強いのだ。


 獅子、狼、豹、ゴリラ、象、蛇、蜥蜴、蛙、カメレオン、鯰、雨降、蟹、カジキ、蜘蛛、蟻、甲虫etc……。


 様々なタイプの獣人達が多種多様な攻撃を仕掛けていた。

 近距離、中距離、遠距離。

 種族が違い、戦い方も違うはず。

 発動までのタイミング、間の取り方、攻撃範囲。

 それら全てわかっているかのように流れるような連携だ。


 オークキングにあらゆる属性、特性の攻撃が叩き込まれていく。


「流石は獣人族、超反応からの連携、見事だ」


 皇帝が魔力を溜めながらポツリと呟く。

 国の全てを注ぎ込んだ【皇剣】ミルキスタの攻撃が、たった2本の指で止められた時は心が折れかけた。

 一撃必殺、国すら滅ぼせると伝えられ、過去の記憶の中にもそれに匹敵する威力が見て取れた。


 そこから更に、想いも、歴史も、血肉や魂も積み重なってきたのだ。

 時代が進むほど強くなるという特性を持たせた剣。

 その攻撃が通じないなら、何なら効くというのか。


 だが、最高の一撃が効かないから逃げます、ということはありえない。

 初代皇帝正次は、もっと危機的状況を覆してきたのだ。


 自分の中にいる初代様、いつもこう言ってくる。


『喧嘩やる時、最後はここ(・・)が強ぇ奴が勝つんだ』


 胸をトントン、と叩いてニカッと笑うのだ。


 気持ち。


 次の瞬間には変わってしまうような物であり、不可能を可能にする第一歩となりうる物でもある。


「気持ちで負けたら勝てねぇぞ、譲治」


 自分に発破をかけ、魔力を練り続ける。

 元々一撃で仕留めるような攻撃を得意としていないのだ。

 何度でも、何度でも攻撃すれば良い。

 それに仕留めるのが自分でなくてもいい。

 自分は1人ではないのだから。


 気持ちが入った、たったそれだけ。

 それだけで、皇帝はあることに気づいた。


「……え?」


 ある事に気付き、皇帝は言葉を失う。


「そういう……物、だったのか?」


 そこに気づいた時、皇帝の気持ちは揺るぎない物となったのだった。



「エーリ、そろそろ限界だ。離れて良い」


【風姫】が魔力供給をしているエーリ達に話しかける。

 魔法行使には精神力が必要で、威力、範囲、複雑さが増すとより繊細になってくる。

 エーリが大魔法を連発出来ているのは、ステータスの精神が高いからで、常人にはどだい無理な話だ。


 人間離れした将軍ですら、決戦魔法連発とその維持はかなりの精神力を使っていた。

 これ以上は魔法の暴発を引き起こしかねないとの判断からだった。


「わかりました。ちょっと休んでいてください」

「承知した。……?!」


 突然だがアンジーに収納してもらった。


「どうだ?」

『……驚いてはいますが、落ち着いていますね。暴れることがないので時を止める必要もないです』

「よし。この調子で瀕死の人とかヤバくなった場所を収納していこう」

『仰せのままに』


 考えていた。

 最初はこの戦い、自分やチームメンバーがフータと戦うだけでいいのではないか、と。

 だが、すぐに間違いに気づいた。


 もし自分達だけで終わらせてしまったら、この戦いが他人事になってしまう。

 友や家族を失った人達が、消化不良で終わってしまう。

 それではこの戦いの真の終わりは見えてこない。


 だからこそ、今人族の持つ力に任せ、エーリ達は援護に回っている。

 ルイーズやオードリーは、空間に存在するありとあらゆる存在を鑑定出来る【真艦】を使えるため、他の冒険者や兵士達の邪魔をせずに攻撃を続行できるし、ルイーズには人並みならぬ想いがある。


 エーリとアンジーは多人数との即興連携の経験もなく、攻撃が高威力広範囲が多いため、味方に被害をもたらす可能性があった。

 ならばと支援に回る事にしたのである。



「あぁクソ。結構やられてる。この時代の冒険者は強いのが多いなぁ。研鑽の賜物だろうね。目標があっていいことだ。羨ましい限りだよ!」


 それまで【風絶】で鈍っていた動きが元に戻る。

 ようやく十全に動けるようになり、冒険者達の攻撃を捌いていく。


 炎熱の爪を指で弾いて砕き、鋼鉄の牙は息を吹きかけて折る。

 足をトン、と叩けば下から瘴気の槍が飛び出し、指を振り上げれば大爆発が起こる。

 ギロリと睨むだけで兵士達は血を吐き、音魔法で怨嗟の声を届ければ精神に異常をきたして仲間を攻撃するも者が続発していた。


 流石は災厄の王、オークキング。


 と言いたいところだったが……。



「ふぅうううううううざぁああけぇええええええるぅぅぅうううううううなぁぁああああ!」



 オークキングの怒りは頂点めがけてまっしぐらに上っていた。

 なぜなら


「リア充殺しゲームの邪魔をしないでもらえるかなぁ?! エーリ君!!」


 エーリが全属性魔力を使用した【雷電改】で、負傷した、もしくは死にそうな兵士や冒険者達を回収していたのだから。


 災厄の王、オークキング。

 世界が終わると称された存在がこれまでに殺した人数……ゼロ。


 完全体となり、この世界から生命を根絶やしにし、無能な全能神にその惨状を見せつけてやろうとしていたフータからすれば、それは堪え難い屈辱であった。


「これは互いの存在をかけた戦いだろう? だったら、相手の邪魔をするのなんか当たり前だろうに。何を言ってるんだ?」

「お前らは黙って、僕に殺されていr 「ふん!」ガハッ!!」


 話の途中に割り込んで来たのはバルバルさんこと、【金獅子】バルディエル・バルザック。

 黄金に輝く毛並みと、激しく主張するその筋肉。

 現在獅子の顔をしているのに、ポーズを取る時だけ人型に戻るという謎仕様。

 彼が打撃を叩き込み、ポーズを取る度に、攻撃された箇所が爆発していく。

 白い歯が眩しい。


「ぐっ! これは……貴様菌魔法の使い手か!!」

「ははは! 違うよ、これは筋肉の魅力。言わば筋肉魔法さ!」


 菌魔法?

 聞いたことがない。

 ミルク、なんなんだ? 菌魔法って。


『エーリなら分かると思うけど、菌、この場合ウイルスとかそういう物に近いそれを自在に操る魔法よ。多分だけど、殴ったりする時、菌を付着させた体毛を相手に突き刺して感染させ、「爆発しろ」と命じているんだと思うわ』


 あの様子だと、バルバルさんはそう思ってないんだろうな。

 絶対に筋肉の魅力が爆発しているんだと思っているはずだ。


「この!」

「グボァ!」


 マズい!

 何だかんだ呆気に取られていると、バルバルさんがいいのをもらって吹っ飛んでいった。

 飛んでいく最中もポーズとるとかどんだけなんだ……。

 急いで追いついて収納する。


 収納した人達は、アンジーの中に作った空間で癒している。

 内包した聖、精属性魔力を中で使用してもらい、傷を癒す。

 重症者はこのまま戦いが終わるまでそこにいてもらう予定だ。


「またか!」


 イライラが募るフータ。

 そこに迫るは最強の親子(・・)。


「気づかないとでも、思っているのか?!」


 ぶん、と振った腕が引き起こしたのは、無数の竜巻。

 触れる者すべて切り刻み、血肉を雨にして降らすはずのもの。


 だが、ゆったりと歩く紳士には当たらない。

 ダンスをするように近づいていく。

 そして、


 トントントン


 ノックをすること3回。


「!! これは!」


 オークキングの身体から黒いナイフが飛び出してくる。


 S級冒険者アルベルト・メイガード。

 得意属性は水。


 生物なら必ずといっていいほど持ち得る水分。

 そこに振動を与え、その全てを刃に変換して対組織を切り刻む。

 今は即時だが、一度触れておけば任意のタイミングで発動可能。

 知らぬ間に仕込まれ、そして殺される。


 その特性と、相手が全て死に絶えたことから付いた2つ名が【確殺】。


 その名に恥じぬ戦いぶり。


 だが、オークキングは止まらない。

 叫びながら飛び出た瘴気のナイフを飛ばし、相手に同じことをしようとするが、


 ジュウ……


 そのナイフが届くことはなかった。


「はい、あーん」

「グボッ! オゴ!」


 大きく開いた口から入るのは、濃縮に濃縮を重ねた溶解液。

 こちらも【確殺】。

 ライアン・メイガード。


 その魔法特性は溶解。

 相手の口、鼻、耳。

 そこから溶解液を流し込み、内部から溶かして殺す。

 オークキングに流し込んだのは、自身最高濃度の溶解液。


 この世に存在するどんな物でも溶かしきれると自負するその液体が、オークキングの体内で暴れる。


「父さん、多分長くは効かないから、とっとと離れるよ」


 もがき苦しむオークキングを前にして、どこまでも自分のペースを崩さない男であった。



 その後も、帝国軍、冒険者問わずいいようにやられ続けるオークキング。

 途中からサンドバッグ状態となり、うずくまったその身体に容赦ない攻撃が続けられた。


 その様子はまるで、虐められているかつてのフータのようでもあった。


 この状態が続くこと、凡そ10分。


 やがて、オークキングに変化が訪れる。

 魔力が、滲み出てきたのだ。


 その色は、本来希望の色。

 だが、オークキングの身体から出るその色は、どこか禍々しい印象を与えていた。


「もういい……終わりにする」


 そう呟き、立ち上がったオークキング。

 その身に纏ったのは、無能と蔑んだ全能神の魔力。



 虹色の、魔力であった。



何とか間に合った……。


いつも見て下さってありがとうございます。


お気に召しましたらブクマ、最新話下の評価をよろしくお願いいたします。

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