第124話 オーク大戦 〜 決戦2 〜
続きです。
絶望は上機嫌だった。
歴史上初の成体。
ミルクへの、恵まれた者達への復讐を十全に行える肉体、魔力、技術が手に入ったのだ。
「ああ、そこにいたのかい? 無能な全能神様。ご機嫌麗しゅう」
「フータ……」
オークキング、フータが恭しく礼をする。
そこに、虹色の槍が降ってきた。
俺が上空に用意していたものだ。
フータの結界に阻まれ、ジリジリという音が響く。
「全く……人が久しぶりの完全体に気分良い所を邪魔するなんて。やめてほしいものだね、エーリ君?」
目を細め、チラリとこちらを見る。
「挨拶代わりですよ」
「それはご丁寧にどうも。じゃあ、こちらもご挨拶を」
フータが人差し指を上から下にちょいっと下ろす。
真っ黒な槍が無数に降ってきた。
あれは、ヤバイ!
「アンジー!!」
『はい!』
あの時飲み込んだ帝国精鋭部隊の詠唱結界。
それをドーナツ状に展開。
さらに俺のゲム魔法をその下に展開する。
この範囲、結界が砕ける前に全部覆えるか?!
真っ黒な槍が結界に降り注いだ。
結界はすぐに砕けることなく、バチバチと抵抗を続けている。
あと、少し……。
「ん? いきなり作ったにしてはしっかりしてるね。……ああ、そういえば魔法鞄が仲間にいたんだっけか。何でもかんでも持っちゃってまあ。じゃあ追加」
フータがパチン、と指を鳴らすと、先程の倍の槍が降ってきた。
結界に次々とヒビが入っていく。
もう、持たない。
だが間に合った。
結界が砕け散る。
黒い槍はそのまま展開を終えたゲムに突き刺さる。
瘴気の槍は吸収が出来ないようだ。
だが、圧縮は出来る!
瘴気の槍を無理やり圧縮し、更にフータに返す。
全方位から迫る速度を増した、瘴気の槍。
正直魔法越しにも触っていたくないものだった。
「おお〜」
感心している所に直撃した。
手応えは、ない。
「面白い魔法を使うね。それ、何だい?」
「企業秘密ですよ」
「ははは。企業ときたもんだ。……で、君達は仕掛けてこないのかな?」
グルリと見渡し、固まってしまっている帝国軍、冒険者達に問いかける。
皆一様に硬い表情だ。
将軍、皇帝の攻撃をいとも簡単に防ぎ、指を振り下ろすだけでこの戦いが終わりかねない一撃を繰り出してくる存在。
人語を話し、気さくな印象すら感じるオークキング、フータ。
これが地球で虐められていた人間だったとは信じがたい。
だが、その強さは本物だ。
これからどう攻めるか、迷ってしまう。
硬くなる男達をよそに、動き出したのは女達だった。
「……相棒、いきますよ」
「ふぅ……了解、相棒」
2人は練り上げた魔力を魔法に変換。
変換された魔力は身体を包み、オードリーは氷のドレス、ルイーズは女王の姿になった。
女王と言ってもSとMが付く方だったが。
「ルイーズ、何ですか? その格好……」
「気合い、入れただけよぅ? こっちの方が、クルの」
「……気負いじゃないならいいです。手を」
「はぁい」
互いの右手と左手を合わせ、まっすぐにオークキングを見る。
「「【真鑑】」」
オードリーとルイーズの魔力が互いに交わり、循環していく。
魔力だけじゃなく、精神、知覚、更には魂も。
循環が終わった後、異体同心の2人の女が立っていた。
2人は俺の方を向いて微笑むと、
「「行ってきます」」
そう言った。
どこかフータに気後れしていた自分が恥ずかしくなる。
いい女達だな。
「すぐに加勢する。それまで頼んだ。行ってらっしゃい」
『行ってらっしゃい』
俺達の声に頷くと、前を向き前傾姿勢になる。
「よーい……」
「ドォン!」
2人を知らない者達からすれば、無謀とも言える突貫が始まる。
「おやおや、女性なのに勇敢だね。君達はエーリ君の大切な女性か。全く……妬ましいことこの上ない。良い機会だ。彼の目の前ですり潰してあげよう」
オークキングが手を捻ると、空間に歪みが現れる。
捻るのと同時であるため、普通は避けることなど出来ない。
その歪みが、無数に現れる。
だがその2人はただの女達ではない。
魔に通じ、武を磨き、魂まで通わせた女達。
いとも簡単に歪みを避け、攻撃に移行する。
「【女王の緊縛】」
「【氷姫の大鎌】」
手に持った鞭をパシンと鳴らすと、オークキングの足下から樹が生え、結界ごと締め付けていく。
「この魔力、どこかで……」
フータが考えていると、そこにオードリーの大鎌が迫った。
避けようともしないところを見ると、特に脅威と思っていないらしい。
甘い。
ザクッ
「何?!」
真っ二つになった結界とオークキング。
「そうか、鑑定士だったね。魔力を読んだか。お見事」
「それはどう、も!!」
縦横斜め、息つく間もなく切り刻む。
切ったそばからくっついていくが。
「さぁて、反撃d「させなぁい」
オークキングを水魔法で包む。
すかさず雷魔法で感電。
「【氷絶】」
残った水をオードリーが凍らせ、その氷がズズッと様々な方向にずれていく。
相手を凍らせ、細胞ごとずらして殺す。
細胞などという知識がなくとも、この魔法ならばという思いがあった。
ずれた氷の中、オークキングは恨んだ。
『顔良し、身体良し、頭も良し、か。これでエーリ君にゾッコンなんだろ? 僕の夢想したチート持ちの異世界転生……反吐がでる。まずはお前からだ』
オークキングが睨み、何かしようとした時だった。
『?! これは』
動きが急に鈍くなる。凍ったはずの体液が沸騰していく。
すぐ再生していくとはいえ、面倒だ。
この感覚には覚えがある。
「【風姫】! よせ!!」
皇帝が叫ぶその先には、油汗を吹き出しながら必死に手を伸ばす【風姫】カミラ・ジェイルの姿があった。
決戦魔法の魔力使用量は桁違いだ。
将軍級の魔力量を以ってして、1度使えるかどうか。
今回は兵士達の魔力も使ったため、なんとか連発出来ている。
しかし、相手は最悪の敵。
抑え込むにはより魔力を注ぎ込む必要があった。
既に生命力まで手を出しそうな勢いだ。
それに手を貸したのは、エーリとアンジーだった。
「アンジー、風属性の魔力を!」
『了解!』
グンッっと押し込むように流し込む。
フラフラだった【風姫】に力が戻る。
「エーリ、すまぬ」
「今はオークキングを!」
「承知!」
これまでにない圧力を魔法にかける。
オークキングの動きが更に遅くなる。
遠くではオードリーとルイーズが攻撃を続けていた。
その光景に、怒りを覚える女が1人。
バシン!
帝国軍、冒険者の男達の前に、虹色の雷が落ちた。
「良い加減にしなさいよボンクラども!! 女と子どもがたった5人で戦ってるのよ?! あんたら百戦錬磨の軍人と冒険者なんでしょ!! 何を呆けているのよ! その練り上げた魔力は何のためなの! 磨いた技術はいつのためよ! 大切な物を守るためでしょうが!! 大事な決戦にボーッとするような、そんな子に育てた覚えはないわ! この私に! 成長した姿を見せてみなさい! ……それでも尻込みするようなら、【神雷】落として全てを終わらせるわよ?!」
皇帝以下兵士全員、冒険者全員、攻撃していた5人全員、更にはオークキングまでもが唖然とする。
ふんっと鼻息荒い全能神様は、上から目線で仁王立ちしていた。
「ははは、さっすがミルク様」
『らしいです』
「じゃあ俺達もやろう』
『仰せのままに、ご主人様』
ドン! と全属性魔力を立ち上らせる。
それが合図のように、周囲から魔力光が立ち上り始める。
全能神の発破は、人族の目を覚まさせた。
それは、オークキングも同じこと。
「はははは! いいね、希望に満ちたその目。絶望で塗りつぶしてやるよ。さぁ、来いリア充ども!!」
帝国軍全軍、冒険者全員が突っ込んでくる中、オークキング、フータは楽しそうに笑った。
遅くなって申し訳ありません。
どうもノロわれたようで……。
上と下からマーライオンです。
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