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第9話 【神域】

予告していた続編です。宜しければご覧ください。


※2017/12/10 読みにくい箇所を修正しました。

 国軍(糞野郎ども)との戦闘から戦略的撤退を成功させた俺たちは、

 無事ミルク村にたどり着いた。


 そのまま村長宅へ向かう。


「村長!」

「馬鹿者! 村の中を馬でかけるやつがあるか! ?!ルーク!どうしたのだその有様は?!」


 ルークの見た目は酷い。

 顔は腫れており、服は吐瀉物で汚れ、体のあちこちに傷を作っている。

 ミリアも泣き腫らした顔をしており、ただならぬことが起きている、と村長は理解した。


「まずは何が起こったのか説明せい」

「ああ、国軍が……」


 ルークとミリアが説明を行なっている間、俺はミルクとこれからについて相談していた。


 なあ、ミルクは村まで行けば何とかなるって言ってたけど、具体的にどうするんだ?


『超広域・高密度結界を張るわ。普通は無理なんだけどね。この村にはあの像があるでしょう?あれに満ちている私の魔力とエーリを媒介にすれば、全能神の結界を張ることが出来るの』


 じゃあ、早速やるか?


『ちょっと待って。この結界は対象者を選別するから、村のみんなには了承を取る必要があるの。エーリの【以震伝心(いしんでんしん)】で、あの像に触れてもらえるように伝えてちょうだい。後は私が説明するから』


 わかった。


 ミルクと相談が終わった頃、

 ちょうど村長への説明も終わり、どうするかを話し合おうとしていた。


「それで、どうする?」

「正直戦っても勝ち目などない。ないが、このままやられるつもりもない。私が時間を稼ごう。その間に誰かを早馬で隣町に向かわせる。隣町には国軍本隊への直通通信魔導具があるはずだ。それを使って奴らの非道を訴えよう。お前たちは他の村人とともに逃げよ。奴らの非道を伝える者として、絶対に生きねばならん」


 村長……。らしくない格好良さだな。


『何気に村長が一番信仰心あるのよねぇ……』


 ミルクは遠い目で呟く。マジか。


 まあ、そんな村長の覚悟を無にするようで悪いが……


以震伝心(いしんでんしん)】!


 ミルクと相談したことを伝えた。


「なんと?! ミルク様、分かりました。急ぐぞ!皆を広場へ集めるのだ!」

「はい!!」


 そこからはとても早かった。

 ミルク様の神託、と言う言葉一つで、村人が広場へ集まったのだ。


 村長を筆頭に、触れられるものはミルク像(神像だそうだ)に触れ、それ以外は触れている人の肩などに手を置いた。

 こうして、300人越えの村人と、ミルクとの直接対話が実現したのである。


『ミルク村の子達、聞こえている?』


「おお、全能神、ミルク様でいらっしゃいますか?き、聞こえております」


 他の村人からも同様の声が漏れる。


『時間がないの。まずはこの映像を見てちょうだい』


 ブン、と村人の脳内に国軍(糞野郎ども)との顛末が映し出された。


「なんて奴らだ!!」

「酷い……ううぅ」

「怖いよぉ〜! うわああん!!」


 怒りの声、嘆く声、泣き声と、様々な声が聞こえる。


『見ての通り、非道な者たちがこの村に向かっているわ。このままだとミルク村にも被害が及ぶの。でも、私を信じてくれたみんなを、私は守りたい。力を、貸してくれる?』


 ミルクは優しく微笑みかける。


「もちろんでございます。ミルク様と一緒ならば、喜んで。それで、我らは何をすればよろしいのでしょう?」


『祈ってちょうだい。村に生きる全てのものに、私の祝福が届くように。それさえあれば、あとは私がやるわ』


「祈り……。聞いたな皆の者。この村において、自分が大切に思う存在全て思い浮かべよ! その全てにミルク様の祝福が届くよう祈るのだ!!」

「おお!」


 そうして、村人達は各々が大切に思う存在を思い浮かべ始めた。

 家族、友達、恋人、家、畑、家畜、虫……。

 本当に色々な存在が思い浮かべられている。

 それを見て、ミルクは微笑む。


『ありがとう。みんなの思い、祈り、確かに受け取ったわ。目を開けて。あなた達が信じた神の力、その目で見ていなさい』


 村人が目を開け、神像を見上げる。


『全能神ミルクが命じる。我が魔力よ、我を信じ、他者を憂い、愛するものを守りたいと願う、このもの達の盾となれ。全てを満たし、全てを癒し、害するものから守り抜く壁となれ。目覚めよ!【神域(しんいき)】!!』


 ミルクが唱え終わると、神像から虹色の魔力が溢れ出てきた。無重力下の水のように、ふよふよとしているが、驚くべき速度で広場から村の外まで満たしていく。


 そうして、超広域・高密度結界【神域(しんいき)】は完成した。




 その中はほんのり暖かく、優しさに包まれている感覚があった。

 癒しの効果もあるようで、ルークの怪我が少しずつ治っていくのが見える。


 ホッとしていると、国軍(糞野郎ども)がやって来た。

 ……結構ギリギリだったな。


「隊長!あの親子です!」

「クズどもの分際でぇ! よくも私の鎧に泥を被せてくれたなぁ!! この罪万死に値する!! 総員、放てぇ!!」


 目が血走った奴らから全力の魔法攻撃が飛んでくる。

 今の俺では防げないだろうな。


 しかし、結界に触れた途端。

 シュン! と言う音とともに、魔法が消える。


「な?!」

「虹色の魔法色。ここ、これ程とは……。

「ええい! 魔法がダメなら剣で攻撃せよ!」

「は!」

「うおおおおおおおおお!」


 剣を構えたフルプレートの集団がこちらに向かってくる。

 結界がなければ、相当な恐怖が村人を襲っていただろう。

 だが。


 ガキィン!


 剣は結界に阻まれ、1ミリたりとも傷を付けることが出来なかった。


「隊長! 剣も魔法も通用しません!」

「く! 色々試してみよ!」

「は!」


 奴らはそのまま通ろうとしてみたり、石を投げたり水をかけてみたり、本当に色々してきた。

 水は通した。石は通さなかった。あろうことか小便をかけてきたやつがいたが、それは通さなかった。

 成る程。本当に悪意ある存在を通さないらしい。

 この結界、結界と言いながら厳密には壁じゃない。

 これは……そう、ゼリーだ。

 俺たちは硬めのゼリーの中に居るのだと思う。

 だから超広域・「高密度」結界なんだ。


 俺は国軍(糞野郎ども)のことを忘れて、【神域(しんいき)】に夢中だった。

 忘れていたのだ、奴らが糞野郎どもだったことを。


 暫くして


「クズどもこれを見ろぉ! こいつらがどうなってもいいのか?! こいつらが大事ならば一人ずつ結界を出てこい! 出て来なければじっくり時間をかけてこのクソガキどもを殺す!!!」


 糞野郎ががなり立てる。


「ああ!」

「なんて事!」


 奴の足下には、子どもらしき数人の姿があった。

 中には殴られている子もいる。

 ガタガタ震えてこちらを見ていた。


 奴らは【神域(しんいき)】の外にいた子ども達を見つけ、

 俺達に絶望を与えるための道具にしたのだ。


 ミリアにしようとしたこと、子ども達にしていること。

 奴らはそれを


 ()りなれている。


 ()りなれている。


 ()りなれている。



 ……カチ


 俺の中の何かのスイッチが入った。

 うん、良し。



 殺そう。



 自分の中の魔力が暴発寸前であるのを感じる。



 もう良い。俺の全てに代えても奴らは殺す。

 絶対に殺す。


 そう思った瞬間。




『見ててね、エーリ』


 そうミルクが囁いた。




 ヒュッ !


 パッ!




 奴の足下から子ども達が消え、次の瞬間には広場の真ん中に現れた。


「は?」


 奴の顔が呆気に取られる。

 何が起きたかわからないんだろう。

 それは村人も、捕まっていた子ども達も同じだった。

 暫く沈黙がその場を支配する。


「おかあ、さん」


 ひとりの子どもがポツリと呟く。

 ハッとして、見つめ合い、それから


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああ!!」


 言葉にならない声で叫びながら、抱きしめ合った。


 子どもは必死にしがみ付く。

 親は時々、本当に存在しているのかを確かめるようにぺたぺたと顔や身体を触る。

 確認しては抱きしめ、抱きしめては確認する。


 絶望の淵から救ったのは、三度奇跡を起こした、全能神だった。


 ミルク、何をしたんだ?

 涙を流しながら、そう聞いた。


 先ほど俺を満たしていた殺意は消え失せ、

 ポカポカと暖かな気持ちがじんわりと入ってくる。


『【神域(しんいき)】を作る時に、大切な存在を思い浮かべてって言ったでしょ? あの子達も当然入ってた。結界が完成する時に外にいたから守ることが出来ていなかったけど、これだけそばに来てくれたら、【転移】なんて簡単よ。それにしても……』


 ミルクの顔は笑顔だった。

 でも、これまでの人生の中で一番怖い笑顔だった。


『私が手を下すと色々面倒だし、あいつら国軍よね。うん、あの子にお願いしましょう。そうしましょう』


 そう言ってミルクはすうっと消えていった。


 数分が経った。

 糞野郎は苛立ちながら、どうすれば俺達を殺せるだろうか、なんてことを考えてそうな顔でこちらを見ながらブツブツ言っている。


 すると


『お待たせ!』


 とても良い笑顔のミルクが帰って来た。

 どこに行ってたんだ?


『んー、帝都!』


 帝都? なんで?


『クレームつけて来た! 帝国魔術師長でしょ? 軍団長でしょ? それから皇帝! それで、あの子を寄越してって言ってきた!』


 こ、皇帝? それに、あの子って誰だ?


『えーと、私の教え子の一人だから、エーリの兄弟子かな?……あ、来た』


 へ?



 ドン!



 晴天に霹靂が落ちた。


 霹靂は人の形をしていた。



『紹介するわ。エーリの兄弟子、【雷帝(らいてい)】ジェフリー・アーヴァンスレインよ』



 ミルクがあの子、と言ったその人は、


雷帝(らいてい)


 の二つ名を持っていた。


次回で国軍(糞野郎ども)戦もラストになります。


フラッと見てくださった皆様、いつも見てくださっている皆様、ブックマークしてくださっている皆様、ありがとうございます。

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