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第113話 オーク大戦 〜 激戦 〜

続きです。

 オークに向かって走る。


 土兵に追加で魔力を補充し、力や素早さを引き上げた。

 重装型はより力を増し、一般兵型は素早さを増して武器も引っ掛けるタイプの物に変える。

 奴らを引き倒してその間に倒してもらうのだ。


 強力な個体が現れた時は、動きを止めさせることに注力。


 元々土なのだ。

 形など何とでもなる。


 そう考えると、悔しいがよく出来た魔法だ。


「エーリ! 道空けてくれ。走るわ」

「え?」


 言われるがまま、少し土兵達の隙間を作った。

 そこから流れ出てくるオーク兵。

 俺達に向かって突撃し、後方から援護用の攻撃魔法も飛んできている。

 走る、とは一体?


「よーし、お前ら帯電! 俺に続けぇ!」


 バチっと大きな音を立てて、直属部隊の先頭にいる兵士が帯電。


「これは……【雷電】?」


 驚いていると、ニッと笑う【雷帝】。


「俺直属の精鋭部隊。通称【雷電隊】だ」


 そう言うが早いか、紫色の雷を纏った雷の塊は猛烈な速度で敵陣に突っ込む。

 突っ込んだら塊ごとに散開。

 他の塊とクロスするように何度も敵陣を蹂躙する。


 凡そ10秒。

 芸術的な1撃離脱戦法で戻って来る。


「よし! 落とせ!!」


 チ、チ、チ、チ、チチチチチチチチチチチ……。


 パリ


 ズガン!!


 雷電隊が通った場所に雷が落ちた。

 複数箇所同時に。


 落ちた場所をよく見ると、独特な形状の槍、と言うか避雷針が設置されていた。

 攻撃に使っているから、この場合誘雷針とでも呼ぶのか?


 そこに雷電隊以外の部隊が雷撃を落としたのか。


「西でもそれやったんですか?」

「いや? 俺やエーリみたいに常時展開できる奴がいないからな。燃費も悪いからここぞという時に使用している」


 必殺技か。

 常時展開出来ないだけで、タイミングとか使い方という意味では俺よりも上手いと思うから、舐めてかかった奴から死ぬんだろうな。


 流石に精鋭部隊と言うだけあって、雷電隊も他の兵士も練度が高い。

【雷帝】の指示も的確だ。

 高レベルの災厄を前にして、今のところ誰も死んでいないのが凄い。


「父さんそっち頼んだよ」

「数が多い。ちょっと練るから10秒頼む」

「えー……。早くしてよ」


 溶解液の球、酸弾をオークに振りまきながらライアンさんがアルベルトさんの援護に回る。


 10秒後、準備が出来たのかアルベルトさんは回り込んできたオークの部隊めがけて走っていく。

 避ける、避ける。

 統率と連携のとれたオーク部隊の攻撃全てを避け切り、1人どんどん奥に進んでいく。

 オークですらアルベルトさんを無視し始めたその時、


 パチン


 という指の音が聞こえたと思ったら、オークの身体から黒いナイフが無数に突き出てきた。

 針千本どころではない。

 体内からナイフが飛び出るとはどういうことなのか。


 ともあれ一度に100体以上を倒し、悠然と戻ってくるその姿は優雅だった。


『へべれけ』チームの方は気にする必要がない。

 なぜならべらぼうに強い人達が、店で培ったチームワークで戦っているのだ。


 先程からオークが遠距離攻撃に切り替えるほどに倒しまくっている。

 ほぼAランク以上の連携の取れた部隊というのはもう、この国の最精鋭なのではないだろうか。


 [阿吽]の2人は相変わらずだが、こちらは予備兵達の援護に徹しているようだ。

 縦横無尽に戦場を走り回り、かなりの数を倒している。


 予備兵達も元々ちゃんとした部隊だから、倒れたオーク達にトドメを刺して離脱するという指示を忠実に守っていた。


 エクレールやオードリーも上空から雷撃は魔法で攻撃をして援護してくれるし、情報は逐次やりとりしている。


「これならいけるか?」


 盛大に立ててしまったフラグは、秒で回収される。


『エーリ、何か変なのが投入されました。……オークの、子ども?』

 何?


 俺達が戦う横を、飛び跳ねたり鬼ごっこをしたりと無邪気に遊びまわるオークの子ども。


 こちらを攻撃するでもなく。

 倒しても何かあるわけではない。


 近づかせないようにだけ注意しながら、戦うこと数分。


 戦場に満遍なくオークの子どもが行き渡った頃、それ(・・)は始まった。


「お父さん助けてぇ!!」

「おがぁさああああん!!」

「あなた! いや! は、離しああああああああ!」

「痛いよぉ! あ……」

「足が、足がぁああ! やめ! ぎゃああああ!!」


 突如オークの子どもが人間の声で(・・・・・)叫び始める。

 見た目に似つかわしくない様々な声を、ニタニタと同じ顔で叫んでいる。


 ギョッとし、攻撃の手を止めてしまった者達がオークの部隊に殺され、その死体をオークの子どもが美味しそうに食べる。


「このぉ!」

「パパ怖い!」

「?! ぎゃあ!」


 オークの子どもに剣を振り上げた兵士が女の子の叫び声に手を止めてしまう。

 その一瞬をオークソルジャーに斬り殺された。

 そしてその死体も食べられる。


 別の場所では


「後ろだ!」

「むん! ……? 誰もいないガハッ」


 仲間と同じ声(・・・・・・)を出され、振り向いてしまった兵士が後ろから槍で一突きにされて殺され、死体を食われる。

 そして死体を食ったオークの子どもは、もこもこと大きくなってレベル1のオークになる。

 遊軍の様にバラバラに動かれ、さらに被害が拡がっていった。


 ここにいないはずの子どもや女性の叫び声は兵士達に攻撃を躊躇させ、ここにいる仲間の声は誤った判断を引き起こす。

 戸惑い、判断の遅れは死に直結し、うまくいっていたはずの戦いは一気に混乱を極めた。


『エーリ! このままではマズイです。オークの子どもの数は減らしていますが、その間に出る被害が!」

 わかってる!

『どうなさいますか? エーリ様』


 ……ふう。

 ある程度は土兵の防御が効いている。一気にやられるわけじゃない。


 こういう時にゲムは有効なはずだ。

 アンジー、ストックしている無属性魔力を使う。


『かしこまりました』


 これから起こすことを【以震伝心】で全員に知らせた。

 驚きの声や了解の声が返ってきた。


 よし。


 戦場にゲム魔法を薄く伸ばす。

 奴らには気づかれないくらい薄く薄く。

 大体の範囲に巡らせることに成功した。


 そこから情報収集。

 ぐ……土兵達を制御しながら更に戦場の情報も入ってくると脳内の処理がキツイな。


 ズキン、ズキンと頭痛がしてくるが、それを何とかやりきる。

『大丈夫ですか?!』

『エーリ様、あまりご無理は……』


 ありがとう。

 だけどこれは無理した方がいい状況だからな。

 それに、もう終わらせる。


 アンジー、合わせろ。


『いつでもどうぞ』


 俺は集めた情報を頼りに、伸ばしたゲムにアンジーから受け取った魔力を込める。

 掴んだ!


「どおりゃあ!」


 ゲムで掴んだのはオークの子ども。

 そのまま俺の元まで引っ張ってくる。

 この付近にいる全てが集まった。


「やってくれたなこの野郎」


 オークの子どもを睨みつける。


「お兄ちゃん助けて!」

「どうかこの子だけでも!」


 なおもニタニタ顔で喋り続けるオークの子ども達。

 どこまでも神経を逆撫でしてくれる。


 ゲム魔法でひと固まりにし、属性魔力も付与。


 それをパチンコよろしくオークジェネラルの近くまで飛ばす。


「返すぞ」


 近くまで行った塊は、火属性と聖属性の魔力着火で爆発。

 戦場に醜悪な花火が飛び散った。

 オークジェネラルは立ち上がり、何か叫んでいる様だった。


 あのレベルまで行くと感情があるのか?

『エーリ、あれ聖属性ですよね? 使って大丈夫だったんですか?』


 考え事をしていると、オードリーから指摘が入る。


 ……聖属性は、魔石から抽出したことにしよう。


 派手にやったため、後方の兵士達から歓声が上がり、戦闘中の兵士達も落ち着きを取り戻した。

 混乱していた戦場も以前の様になっていく。


 数での圧倒的な優位も、少しずつ緩和され、奴らの数が目に見えて減ってきた頃。


「見ろ! 引いていくぞ!!!」


 オーク達が急に転身し、離れていく。

 罠か?


 オードリー、何か山向こうにいるか?

『ちょっと見てきます』


 紫の光が山向こうに消え、そして戻ってきた。


『大丈夫です、何もいません』


 その事実を【雷帝】に伝える。


「これより見える範囲まで追撃する。それ以上は不要だ。予備兵や負傷兵はここに残れ!」


【雷帝】の指示の元、追撃隊が編成され山の頂上付近まで追撃し、ここでもかなりの数を減らすことに成功した。


 山向こうは少しいくと森が広がるため、これ以上は危険だ。


 追撃が終わり、


「東地区の戦は、我らが制した! 勝鬨を上げろ!」


【雷帝】の声に戦士達は大いに叫び、東地区の激戦は幕を閉じた。













 この時は。

すみません。遅くなりました。


いつも見て下さってありがとうございます。


お気に召しましたらブクマ、最新話下の評価をよろしくお願いいたします。

感想もお気軽にどうぞ。

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