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第106話 オークの生態

続きです。

 オーク。


 ファンタジー小説だか映画だか忘れたけど、名前は聞いたことがある。

 日本産の某有名RPGにも出てきたはずだ。

 あれだと確か、この世界と同様に豚の魔物だったはず。

 弱い部類だったような?


 後はおっきいお兄ちゃん達が大好きなゲームとかお話に出てきて、女騎士とモニョモニョするのが定番だったかな。


 そんなオークは、この世界では『最悪の災厄』だそうだ。




「オーク……」


 俺が口に出すと、何人かピクっと反応する。

 こりゃよっぽどだな。


「その他の情報については後だ。ここまで飛ばして来たのだろう? 暫し休むが良い」

「ありがとうございます」


 皇帝はそう言うと、側近達と謁見の間を出て行く。

 他の重臣達もゾロゾロと退室し、謁見の間には俺達2人だけとなった。


「エーリ……」

「お疲れ様。やっぱりオードリーに任せて正解だったみたいだな。俺じゃ周りを怒らせて終わりだったと思う」


 苦笑いをしてしまう。

 皇帝達とは随分と温度差があったからな。

 俺だったら話が進まなくて怒鳴られてたんじゃなかろうか。


「わかってて、任せてくれたんでしょう?」

「ああ。オードリーとエクレールを信じてた。あれ? そういえばエクレールは?」

「ふふ。東地区ギルドで預かってもらっていますよ」

「そ、そっか」


 すまん、エクレール……。

 後で魔力いっぱいあげるから。


「お二人ともこちらに。部屋を用意してあります」

「はい。さあ、行こうか」

「ええ」


 ここまで連れて来てくれた案内役の兵士が、休憩のための部屋に連れていってくれた。

 室内にはメイドさんがいて、お茶を用意してくれる。

 俺達はリンクでここまでのことを互いに話し合った。


 そして20分が過ぎた頃、迎えの兵士がやってきた。


「失礼します。そろそろ演説が始まりますので、謁見の間までお越しください」


 謁見の間に着くと、皇帝以下重臣、将軍達も揃っていた。

【風姫】も持ち直したのか、青い顔だが立っている。


「よし、揃ったな。では行こう」


 皇帝の言葉を合図に、謁見の間が下がっていく。

 今回は最初からかなりの速度だ。

 オードリーはちょっと震えていた。


 5分ほどで地下闘技場に着く。


「おお……」


 そこには観客席、闘技場内を埋め尽くす兵士の姿があった。

 何十万人いるのだろうか?

 整然と立つ姿は、群像美を感じさせる。


 下を見ると、軍団長と呼ばれていた男が先頭に立ち、跪く。

 そこから波のように兵士達も跪いていく。


「陛下、ミルク帝国全軍、揃いましてございます!」


 魔導具を使っている様子もないのに、よく響く声だ。

 あれなら戦場でも指示が聞こえるだろう。


「集結ご苦労。楽にせよ」

「「「「「はっ!!」」」」」


 一斉に立ち上がり、皇帝の方を向いた。

 その様子から、よく訓練されていることがわかる。


 残響がしなくなった頃、皇帝が口を開いた。


「皆も知っての通り、約5,000年ぶりに『あれ』、正式名『オーク』が出現した。そして、我が国の友好国であるレイディバロス王国は、先頃滅ぼされた」


【炎帝】が操作し、闘技場内に俺達が戦ったオークの姿が映し出される。

 そこかしこからざわめきと魔力光が上がる。

 各都市の在中軍にも中継されているそうなので、方々で同じことが起こっているだろうな。


「静まれ馬鹿者!」


 軍団長の一喝が響き、やがて先ほどまでの静寂が帰ってきた。

 手を伸ばし、軍団長を労う。


 ……重臣達も魔力光出してたそうだから、お咎めはないだろうと思いたい。


「これから、暫しオークについて復習といこう。オークについての情報は、成人した際に必ず教えられる知識としてそなたらも知っておろう。だが、受け取り方はそれぞれであったはずだ。これから戦う存在の認識を共有するとともに、ここにいるA級冒険者ながら未成年の者に、オークという存在がいかに恐ろしいものであるか、知ってもらおうと思う」


 ブン、とそれぞれの目の前に光の板が出現する。

 そこにはオークの姿。


「オーク。伝説によれば、豚、という動物に似たものとして伝えられている。長年かけて濃縮された瘴気から生まれ、命あるもの全てを食べ尽くす災厄だ」


 オークが色々なものを食べている絵がいくつも映し出される。

 中には、絵本の『あれ』の絵もあった。


「食べるという行為は生あるものが当たり前に行う行為だ。身体が大きければそれだけ食べるだろう。それはいい(・・・・・)。問題は、これだ」


「!」


 映し出された数々の絵には、人間族、獣人族と見られる女性を犯されている姿と、下半身が異常に膨らんで、そこからオークの子を産む姿が描かれていた。


 心が泡立つのを感じる。


「オークは人間族獣人族関係なく犯し、増える。母体となった女性はまず助からん。内部から変質させられ、最後には食われる。男の場合も数が増えないというだけで、オークの力を増大させる。ここまでは(・・・・・)そなたらも知っているだろう」


 ここまでは?


 居並ぶ兵士達も疑問に思ったのだろう。

 そこかしこでひそひそ声が聞こえてくる。


 重臣達は動じていない。

 つまり、秘匿事項だったということだ。


「これだけなら、レイディバロス王国が滅ぶことはなかった。オークが最悪の災厄と呼ばれる理由は別にあるのだ。犯すことで生まれたオークは、母体となった女性の能力を引き継ぐ」


 これは……恐ろしいな。

 なるほど。

 レイディバロス王が自爆した理由はこれか。

 王族は何かしら特別な能力を引き継いでいることが多いらしい。

 もし、王妃、姫などが母体となれば、それだけ強力な個体が生まれ落ちてくるということか。


「さらに力を増したオークが、高ランク冒険者、または特別な力や血筋の女性を犯した場合、生まれたオークにある変化が起きる。それはレベルアップ(・・・・・・)だ」


 レベルという聞きなれない言葉。

 兵士達も困惑している。


「言葉自体はそこまで気にしなくても良い。簡単に言えば進化だ。そして、その進化の度合いは10まであり、1つ上がるごとに被害が二乗となる、と言われている」


 皇帝が【炎帝】に目配せすると、俺達の目の前にある光る板に、レベル1から10までの記載が現れた。




【レベル1:オーク】

 力が強く、強靭な身体を持つ。繁殖力が旺盛で、人の女を犯し、増える。

 1度に5から10個体生まれ、1母体から最低20は生まれる。


【レベル2:ハイオーク】

 オークの上位種。身体が大きくなり、能力も同様に増大する。


【レベル3:オークソルジャー】

 剣、槍、弓など、武器を手にしたオーク。

 身体の大きさも種類により違う。

 達人級の腕を持つ。


【レベル4:オークメイジ】

 魔法が使えるようになったオーク。

 それまで取り込んだ魔法適正が全て現れる。

 理論上全属性の魔法を使いこなすことも可能。


【レベル5:ギガントオーク】

 体高が5m以上、文献によれば20m級の個体も確認されている、巨大なオーク。

 破壊力が桁違いに高く、砦、城の破壊に多用される。


【レベル6:オークスタッフ】

 戦術参謀。知能が高く、戦術の立案が可能となったオーク。

 レベル7のオークジェネラルと共に生まれる。


【レベル7:オークジェネラル】

 オーク軍を束ねる将軍。

 この個体がいることで、オーク達は統制の取れた軍となる。


【レベル8:オークワイズ】

 オークの賢者。戦闘能力は皆無だが、魔術知識が段違いに高い。オークワイズが行う儀式により、レベル9と10が生まれる。


【レベル9:オークプリンス】

 オークの王子。膂力、魔力、体力全てが桁違いの力を持った個体。

 文献によればオークプリンス1匹に対し、ある国の将軍10人、S級冒険者5人がかりで相打ちだったという。


【レベル10:オークキング】

 絶望が具現化した個体。

 指を鳴らすだけで万人が死に、腕を振るだけで大地が割れ、最終魔法ですら息1つでかき消すと言われている。

 これが成体となった時点で、世界が終わる。




 文字を読む兵士は、誰もが動かない。

 いや、小刻みに震えている。


 俺達が戦った個体は、恐らくレベル1のオーク。

 最弱のはずだが、かなりの強さを感じた。

 冒険者ランクで言えば、C以上だろう。


 普通の兵士1人ではまず太刀打ち出来ない。

 いくら装備が充実し、連携攻撃に慣れていると言っても、大規模戦闘はここ数代起きていないと言っていたから、殆どの兵士は実戦を知らない。

 ヤバイかもな。



 ……最悪の災厄、か。

 鼠算式に増え、強くなる。

 それが確か……



「そこに書かれているオークが、確認しただけでおよそ200万匹いるそうだ」


 悲鳴にも似た声が聞こえてくる。

 強くて大きくて、自分の大切な人達を喰い物にする化け物。

 恐らくここにいる兵士の何倍かの数がいる。

 それがもし、ここに来たら。


 レイディバロス王国にも強力な結界があったはずだ。

 にもかかわらず、自爆するしか選択肢がない状況になった。

 ということは、生半可な結界では太刀打ち出来ないという事実が突きつけられる。


 まともに殺し合いをしたことがなく、相手の戦闘力は高い。

 最後の砦の【神域】も、どれほど持つかわからない。

 兵士達の心には今、不安しかないだろう。


 こんな時、皇帝ならどんなハッパをかけるのか、と思っていたら、



「さらに、諜報部によればレベル7、つまりオークジェネラルまで確認できたそうだ。恐らく奴らは大軍となってレイディバロス王国の周辺諸国、どれかに向かっていくだろう。またいくつか国が食い荒らされるだろうな。それはこの、ミルク帝国かもしれん」



 さらに追い討ちをかけてきた。

 ……この皇帝、何を考えている?



オークについてはかなり前から出したいと思っていたので、漸く出せてホッとしています。


いつも見て下さってありがとうございます。


お気に召しましたらブクマ、最新話下の評価をよろしくお願いいたします。

感想もお気軽にどうぞ。

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