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第89話 西区の新居決め

続きです。



「『虹の絆」の皆様。西地区ギルド特級(・・)受付、ドロシー・マテリアルと申します」

「は、はじめまして。今回はお世話になります」


 マチルダ母さんの計らいで、西地区に家を借りようということになった。

 今現在紹介された方と挨拶中である。


 西地区ギルドには、他の地区にはいない特級がいる。

 それがこのドロシー・マテリアルさんだ。


 普通なら中央ギルドへ行くのが普通なのだが、自分を受け入れてくれたからと地区ギルドに残った変わり種らしい。

 それにしても美人な方である。

 今まで会った人の中でも断トツの1番と言っていい程なのだ。


 女性陣もあまりの美しさに絶句している。

 そりゃショック受けるよなあ。

 俺も見るまで信じられなかったもん。

 こんな人本当にいるの?! ってさ。


 そんなドロシーさんが紹介してくれたのは全部で3軒。


 1軒目:超広い庭、超デカイ家、貴族の屋敷。


 庭、1ブロック。大きさにしてドーム1個分くらい?

 最近手放したそうなので手入れがされており、半年先までの給金が支払われている使用人達まで付いてくる。

 内装は言うまでもなく、一流の物が誂えられている。

 これは購入が前提で、お値段は白金貨5枚。


 2軒目:そこそこ広い庭、普通の家


 庭はバスケットコート反面分くらい。

 元々植木や花が沢山生えていたのだろうが、手入れがされていなかったので雑草だらけになっている。

 家も、見た目、中身共に日本の建て売り住宅って感じだ。

 中は壁の傷や床の凹みなど生活感が溢れていた。

 こちらは賃貸・購入両方OKで、賃貸なら月々金貨15枚。購入なら金貨3,450枚なり。


 3軒目:広い庭、大きめの屋敷。


 庭の広さはテニスコート3面分くらい?

 全面が土になっているが、これは芝生の張り替えをしやすくするためにこうしてくれたのだそうだ。

 別料金で全面芝生にすることも可能。

 家の内装はやや古めだが綺麗だ。

 大きめの風呂があり、来客用の部屋や風呂トイレ等も完備。

 購入が前提。お値段金貨8,900枚なり。



「どちらになさいますか?」

「「「「「3番目で」」」」」



 一番上、かなり下、売りたい物件。

 この条件で紹介していくと、高確率で売りたい物件が売れていく。

 うーん、よくある手法だけど、マチルダ母さんが紹介してくれた人を疑うのもなぁ。

 こちらの需要に合う物件だったので、文句もない。


 しかも割引が入って金貨6,000枚でいいことになった。


「良いんですか?」

「ええ、持ち主からも了承を得ていますからお気になさらず」


 聞くところによると、この家の主人はドロシーさんの叔父で、身体を悪くしたため療養目的で他国へ移住することになったのだが、その際、長年住んだこの家を姪っ子で特級受付のドロシーさんに託したそうである。

 値段はドロシーさんに任せるということで。


「そんな大切なものだったんですね。良いんですか? 私達で」

「ええ。マチルダ様からの紹介ですし、東、南地区のギルマスと上級受付の推薦もありましたから。そこまでされる方々ならこの家を大切に扱ってくださるでしょう? 私も今日一日ご一緒させていただいて判断したので、お気になさらず」


 そう笑うドロシーさんの笑顔はとても素敵で、ドキッとした。


「エーリ、ドロシーさんはダメですからね」

「いつもなら私も反対しないけどぉ、あの子が入ると負けた気がするからダメェ」


 とは年長者2人の弁だ。


「私は別に構わないです」

「もうお兄ちゃんなら何でもいけると思う」


 と残り2人が言っていたが、全員に告ぐ。

 俺は狙ってやったことは一度もない。

 気に入ってもらえるように動いたことは認めるが、それはチームのためだ。

 決してハーレム作りのためのものではない。


 最近まで、ジャンヌさんやココアまで結婚を意識してくれていることに気づいてなかったしな。


 と、話は逸れたが何とか家は月々金貨500枚の分割払いで購入した。

 エクレールの家、と言うか小屋? については、別業者に頼んで建ててもらうことになった。

 こちらは金貨1,000枚で即金払いした。


「ありがとうございました。お陰でいい家に住むことが出来そうです」

「いえ、私も叔父の家を任せることができる方々に出会えて嬉しく思っています」


 契約書を取り交わし、握手をする。


 触れたその手はとても細く綺麗で柔らかく、しかもいい匂いがしてグラっと来そうだった。

 この匂い、何か付けているわけでもなく体臭だそうである。


 危ない、本当にどうにかなりそうだった。

【賢者時間】発動しそうだったわ。



 ドロシーさんにお礼を言って西地区を離れる。

 今回は目的地の直行だったから、今度移り住む時は目一杯観光したいものだ。



 その後マチルダ母さんに報告した。


「エーリくん、どうだった? ドロシーは」

「あんなに綺麗な人がいるとは思いませんでした。何度グラっときたか」


 マチルダ母さんはイタズラっ子の顔である。

 最近遊ばれている気がする。


「あなた達はどう思ったのかしら?」

「自分の努力が足りないことを思い知らされました……」

「気の緩み、があったのかもしれませんわぁ。エーリくんの愛が永遠だと盲信していたのでしょう。お陰でいい薬になりましたわぁ」

「エーリ様なら誰でもウェルカムだと思っていましたが、そうではなかったのでつまんなさ半分、ホッとしたところ半分くらいでしょうか」

「もしそうなったら母に何て報告すればいいのか、と心配になりました。兄がそこまでじゃなくてかなり安心しています」


 4者4様の感想だが、どれだけ俺は節操なしだと思われていたのだろうか。

 小1時間問い詰めたいものだ。


 気持ちはわからんでもないけどな。

 だって、



「1番の目的は家探しだけど、副次効果があったようで何よりだわ。流石のエーリ君も男(・)に手を出すような子じゃなくて安心したわ」



 ドロシーさんは男なのだから。


 ぱっと見女性で、声、仕草、表情。

 全部女性にしか見えない。


 胸がないだけで、下手に着飾った人よりも魅力的なのだ。


 本人は心が女性のため、受け入れてくれた西地区に残ることを決めた。

 本来受付は女性の仕事だったのだが、その美貌もさることながら実務においても完璧だったため、満場一致で合格したそうだ。


 というか誰も男性だと気付いていなかった、と言うのが正しいらしい。

 お風呂でも、全員ドロシーさんを見るのが恥ずかしくて下は見ていなかったようで。



 と言うことがあったのだが、俺はそっちに踏み込みそうになるのをなんとか我慢し、女性陣は女性とは何か、と禅問答を繰り返すことになったが、こうして新居は手に入った。


「クル?」


 何も知らないエクレールの声が、部屋に響いた。


ドロシーさんに会いたい。


いつも見て下さってありがとうございます。

お気に召しましたらブクマ、最新話下の評価をよろしくお願いいたします。

感想もお気軽にどうぞ。

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