第87話 合格発表
続きです。
2018/02/03 間違いを見つけたので直しました。
〜〜 謁見の間 〜〜
「エーリよ、此度は見事だった」
「ありがとうございます。かなり危ないところではありましたが」
皇帝からお褒めの言葉をいただく。
皇帝と【地帝】以外の3人、そして白鎧達が居並ぶ中、俺は後ろに皆を背負う形で1人前に出て直答していた。
ミルクは皇帝の上に作られた特別席? に座っている。
「あの、ゴルドン様は……」
あれだけの魔法、決戦魔法と言ったか、を使った代償は大きいように思える。
己の存在全てを乗せた魔法、とでも言うのか。
それを長時間使えばどうなるのか、今の俺にはわからない。
「自分に卑怯な手を使った男を憂うか……。安心しろ。ゴルドンは帝国の特級治療師達が総力をあげて癒している。今日中には目を覚ますだろう」
「それを聞いて安心しました。決戦魔法、と仰っていたあの魔法、何か制約がありそうに感じていましたので」
「ああ、制約はある。だがそれを話すわけにはいかぬ」
そりゃそうだよな。情報漏洩もいいとこだ。
俺は頷いて肯定の意を示す。
「……エーリ、お前の目に、あの魔法はどう映った?」
「なんと言いますか。己の全てをかけた魔法と言う感じでしょうか。全身全霊、という言葉が当てはまると思います」
「その通りだ。ああ言うのを……ミルク様、何と言いましたか」
皇帝が下から覗き込むようにして聞く。
「えーっと、超必殺技?」
うわぁ、異世界の知識ダダ漏れじゃん。
「と言うそうだ。その超必殺技をかわし続け、かつあそこまで【地帝】を追い詰めたこと、賞賛に値する」
「ありがとうございます」
「卵の検分をこれから行い、その結果を以って合否を決定する。雷鳥の卵をこれへ!」
ガラガラと台車に乗った卵が運ばれてくる。
俺が、それこそ命がけで守り抜いた卵だ。
傷なんて付くはずがない!!
横目で卵を見る。
ヒビだらけだった……。
あれ?
「【炎帝】……大分ヒビが入っているように見えるのだが?」
皇帝も戸惑いを隠せない。
え? まさか不合格? え?
「回収時は傷一つなかったのですが」
【炎帝】のフォローが入る。
謁見の間に気まずい空気が流れた。
「あの……皇帝陛下」
「む」
振り向くとオードリーが恐る恐る手を挙げていた。
「宜しければ【鑑定】をさせていただきたいのですが。流石にヒビ入りすぎですし」
「オードリーか。許す。見てみよ」
「はい」
卵がオードリーの前に運ばれていく。
…………い
?
すれ違う時、何かが聞こえた気がした。
「では見てみます」
オードリーの鑑定が始まった。
ブツブツと小さい声で何か話しているようだが、俺のところまでは聞こえてこない。
さっきのは一体なんだったんだろうか。
一同固唾を飲んで見守る。
やがて魔力光が収まり、オードリーが目を開けた。
「どうだオードリー。何かわかったか?」
「はい。それが、その…………」
言い出しにくそうに皇帝と俺を交互に見やる。
「はっきり申せ。回りくどいのは良い」
「はい、では。『魔力もっとちょうだい』だそうです」
「魔力?」
「恐らく、エーリの雷属性魔力だと思います。とても美味しいそうです」
「何と!」
説明を求める!
「その卵、雷鳥でしょう? 雷鳥は卵に雷属性魔力を流して温めるから、試験中エーリが雷属性魔力を流し続けたのが同じ効果を与えたのね。その子、孵化を始めたんだわ」
だから『魔力もっとちょうだい』か。
「ジョージ、とりあえず試験結果はどうするの?」
「試験終了時は無傷だったことを【炎帝】が確認しておりますから、試験は合格です」
俺の後ろで喜びの声がしている。
良かった、うやむやにならなくて。
「そう。それで、あの卵は?」
「このままにするわけには参りませんね。エーリ、魔力も大丈夫か?」
「はい、問題なく」
「では卵に魔力を捧げよ」
「わかりました。オードリー、必要量がわからないから、鑑定しながら教えてくれ。アンジー、魔力をストックしてくれ」
「ええ、喜んで」「合点」
俺はオードリーと卵の元へ向かい、魔力を練り始める。
【魔封環】がないからめちゃくちゃ楽だ。
「濃さは?」「最大濃度で」
「量は?」「浴びるほど」
「流す速度は?」「一定で垂れ流すように」
指定にあった通りにしていく。
ありったけ濃縮して、量を確保、それをアンジーへ。
オードリーは卵とアンジーを鑑定し、必要量を見定めていく。
「エーリ、そろそろ大丈夫そうです」
「わかった。じゃあ2人とも、始めるぞ」
「「はい」」
イメージ的にドバドバと濃縮魔力を流していく。
それでも卵は底がないかのように吸い込む。
相当腹減り状態だったようだ。
まだまだあるからたんと食え。
用意していた濃縮魔力がなくなっていき、補充も行いながらおよそ5分、魔力を作って流し続けた。
「エーリ、そろそろです」
「わかった」
最後は慎重に、ゆっくりと満たしていく。
そして
ピシ
バリン!
「クルルルゥ」
パリパリと雷を纏った雛が出てきた。
羽毛は綺麗な紫色。
尾羽が特徴的で、孔雀や鳳凰の尾羽を連想させる。首は長く、顔立ちもシャープだ。
バチ!
「うわ!」
静電気みたいな物が俺と雛鳥の間で起こる。
雛鳥は俺の方を向き
「クルル」
と鳴いた。
全てが初めてで、周りをキョロキョロと見回してしまう。
「親を探したのよ。自分と同じ魔力を持つ者が親だから。今のでエーリを親と認識したわ」
「え? それって、不味くないですか?」
皇帝を見る。
平然としているが、すぐに話さないところを見ると、必死になって考えてるだろ、あれは。
【雷帝】も同じことを考えたのか、皇帝の方をチラリと見て口元をニヤつかせていた。
「どうするの、ジョージ? ああなったらもう、エーリに面倒見てもらわないと死ぬわよ」
「エーリに魔力を注がせた段階で、そうするしかないのは明白でしたね。エーリよ、皇帝の名において命ずる。その雷鳥の雛の親として、立派に育て上げよ!」
えぇ……?
【雷帝】は笑いを堪えて震えているし、【風姫】は雛の可愛さにうっとりしていて、【炎帝】は相変わらず指をピッピか動かしている。
ミルクは……『しょうがないんじゃない?』って顔だな。
周りの皆。
どいつもこいつも『関係ないんで』って顔しやがって!!
雛を見る。
愛くるしい目でクルルウ、と鳴いては俺の身体に顔を擦り付けている。
「はぁ……。わかりました。お引き受けします」
「ほっ。ごほん! よくぞ申した。本来国鳥である雷鳥を育てるなど許されんが、事情が事情ゆえ特例として許可する。その昔、従魔として登録されていたこともあったな?」
「お待ちを……はい。初代様、2代様の頃に、【神鳥】豪雷という名で一度だけ」
うん、少なくとも初代は転生者or転移者決定!!
皇帝の髪が黒いのもその影響だろうな。
俺はそこら辺拘らなかったから、焦げ茶色の髪になっている。
「では従魔としてこちらで登録しておく。名を決めよ」
「え? 今、ですか?」
展開が早すぎてついていけん!!
「今の方が良かろう。さあ」
「えっと……」
雷とか、それに由来した名前の方がいいんだろうけど。
……ダメだ。
碌な名前が浮かばない。
名前って大事な物だからな。
何かないか?
うーん。
辺りを見渡してみる。
ミルク……神雷、とか?
いや、それだとミルクが困るし、もし今後使えるようになったら困るよな。
皇帝……豪雷MkⅡ。
カッコいいけど、ネタになってしまう。
皆の方も見る。
顔を背ける薄情者達め。
ん?
……!!
「エクレール……」
「む?」
「この子の名は『エクレール』にいたします!」
「クルルルァ!」
雛鳥改めエクレールは、気に入ったとばかりに羽を広げ、ぴょこぴょこと台車の上を歩き回っている。
なんでこの名前にしたかと言うと、見回した時に俺の目に移ったのがココアだったからだ。
名前の由来になったのは、エクレール・オ・ショコラ。
英語で言うところのエクレアだ。
エクレールはフランス語で「雷、稲妻」。
良かったぁ、いいのが見つかって。
「どうやら気に入ったようね」
「ええ。ではその雷鳥の名を『エクレール』とし、エーリの従魔として登録する。【炎帝】」
「はっ! ……登録が完了しました」
手元の光の板をピコピコすると、もう登録が完了したようだ。
それもうタブレットだよね?
科学の結晶だよね?
ねぇ?
そんなことはお構いなしに、皇帝は満足げに頷いている。
「うむ。……今日は予想外のことが起こり過ぎている気がするな。もっと別のことを話したかったのだが、流石に疲れた。皆もそうであろう?」
問われた俺達の方は、互いに目配せした後、全員で頷く。
イベントが多過ぎてお腹いっぱいです。
「では本日はここまでとする。エーリにはまた帝城に来てもらうが、良いな?」
「はい、もちろんです」
「呼ぶ前には使いを寄越す。それまでは休むが良い。皆も大儀であった」
全員で跪き、皇帝を見送る。
ようやく今日のイベント全てが終わった。
つ、疲れたぁ!!
ペット枠出てきました。
いつも見て下さってありがとうございます。
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