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幕間 ある村人の視点

気づけば投稿10回目でした。不定期の予定が、毎日更新になっているという不思議。

見てくださっている人がいると思うと、頑張れるものですね。

ありがとうございます。


※2017/12/10 読みにくい箇所を修正しました。

 〜 そこそこ未来の話 〜


 帝都の酒場、【へべれけ】。安い、旨い、もう一杯、を掲げる大衆居酒屋である。

 庶民から兵士、果ては貴族もお忍びで通う程の超人気店。

 元Sランク冒険者が店主を務め、従業員も軒並み高ランク冒険者という異色の酒場。


 そこに、ある若者が入っていった。


「いらっしゃい!」

「あ、一人なんですが」

「お一人様ですね!相席になってしまいますがよろしいでしょうか?」

「あ、はい。全然大丈夫です」


 若者は可愛い従業員に連れられ、席に案内される。

 この従業員、Aランクである。


「こちらです。今おしぼりお持ちしますね」

「はーい」


 若者は興奮していた。

 従業員にではない。

 初めて帝都にやってきたのだ。

 務めている商店の品を帝都に卸す仕事を初めて任された。

 村長宅とは比べ物にならない絢爛豪華な帝城。

 通りを歩く人の着ている服も、身につけている宝飾品や装備もまるで違う。

 若者は村との違いに興奮してしまい、完全にお上りさんと化していた。


 とは言え先輩の指導のもと無事に初仕事を終え、自由時間を与えられたため、

 帝都に行くならここに行け、と念押しされた【へべれけ】までやってきたのだ。


 この店、従業員が強すぎるため、喧嘩、食い逃げ、スリなどが起きない。

『楽しく酒が飲めぬ者、命を以って贖え』

 この看板が店の前に掲げられているからである。

 お上りさんでも安心のお店なのだ。


 おしぼりが届けられ、とりあえず麦酒を頼んだ。

 酒を待っている間、キョロキョロと店内を見回していると、先に飲んでいた男達に話しかけられた。


「お兄さん、帝都は初めてかい?」

「あ、はい。やっぱりわかります?」

「そんだけキョロキョロしてちゃねぇ!この店じゃなかったら悪い奴らのいいカモだよ!」

「まあこの店じゃありえないけどな!!」

「先輩にもこの店以外行くなって念押しされました」

「そうだろうそうだろう!」


 酔っているからか声が大きい。

 若者はバシバシと背中を叩かれ、少しむせながらも酒場の雰囲気を楽しんでいた。


「ところでお兄さん、どこから来たの?」

「あ、ミルク村です」

「「「ミルク村だって?!」」」

「じゃ、じゃあ伝説のあの日、その目で見てたのか?!」


 店内に衝撃が走る。

 若者はしまったと思った。

 先輩にも口を酸っぱくして言われていたのだ。不用意にミルク村から来たと言うな、と。

 言ったが最後、あの日の顛末を一晩中語ることになる、と。

 若者は青くなったが、通過儀礼だと思って割り切ることにした。

 どうせなら楽しまねば損である。


「あの日・・・」若者は語り始めた。



 〜〜 『あの日』若者視点 〜〜


 あの日、俺はスヤスヤ眠ってました。まだガキだったんで。

 そしたらなぜか目が覚めたんです。家の外が騒がしいような気がしました。

 バタン! と扉が開いて息を切らせた親父が言ったんです。


「魔物だ! 村の護衛も歯が立たない。一旦逃げるぞ!」


 って。

 村にいる護衛さんて、そこそこ強かったらしいんですが、その人が敵わないってどんな魔物なんだろうって、とても怖かったです。


 殆ど着の身着のまま家を飛び出すと、周りの家の奴らも同じようで、騒ぎながら逃げてました。

 漏れ聞こえてくる大人の会話から、人型で統率が取れていて逃げ場がない、なんて言われていて、ガタガタ震えながら親父の手を握って逃げました。


 ※店内が静まり返る。酒場なのに。


 皆追われて追い詰められて、ついには村の広場に集められちゃったんです。

 小さい子達は泣いてて、大人達も怪我してて。

 周りは見たことない魔物でいっぱいで、これからどうなるんだろう、と思いました。


 ※従業員も椅子に座り出す。


 そしたら魔物達の中からひときわデカくて強そうな奴が出て来たんですよ。

 その群れのボス、なんでしょうね。

 何か言っているように見えたんですが、すみません、遠くて聞こえてないです。


 ※ああ、と聴衆から溜息が漏れる。


 続けます。

 それで何か話している時、赤ちゃんの泣き声が聞こえて来たんです。

 その日、俺らが逃げる前に産まれたらしくて。夜だし、外は寒かったんですよ。赤ちゃんもそりゃ泣きますよね。

 でも、それが魔物達の不興を買ったのか、魔物達が殺気立ってきたんです。

 怖かったですよ。殺気なんて向けられたの、生まれて初めてですもん。

 皆ガタガタ震えてました。


 その間も赤ちゃんの泣き声は止まらなくて。

 それになぜかどんどん声が大きくなっていったんですよ。

 うるさいなってくらいから、耳を塞がないといけないくらいに。


 ※店主が従業員に「音魔法だ」と囁いている。店の前に『本日休業』の看板が出される。


 村の皆も魔物も耳を塞いでたんですが、暫くして、赤ちゃんの一番近くにいた魔物が泡を吹いて剣を振り上げたんです。ほとんど狂乱状態みたいで。


 その時ですよ・・・


 ※ゴクリ、と唾を飲み込む音が響く。


 虹の光が赤ちゃんから湧き出して、魔物を吹き飛ばしたのは!


 ※うおおおおおおおおお!っと店内を歓声が包む。店の前を通りかかった人間がビクっとする!


 その光が広場を覆い尽くした時、その場にいた村の皆も、余波って言うんですかね?それを喰らって気絶してしまったんです。


 暫くして目を覚ました時、魔物の姿はなく、残骸が残っているだけでした。

 呆然としていると、村長が叫びました。


「加護だ! 全能神ミルク様の加護が我らを守ったのだ!」


 って。

 その後はもう凄かったですよ!

 皆叫んで抱き合って喜んで。

 当たり前ですよね。村滅亡の危機から誰一人死なずに助かったんですから!

 しかも伝説の全能神ミルク様のご加護で!


 ※聴衆から「凄え」だの「本当だったんだ」だのが漏れ聞こえてくる。


 ひとしきり喜んだ後、皆色んなことが起こりすぎてドッと疲れが出ちゃって。

 村長とか上役? とか護衛さん達を残してその日は解散になりました。


 これだけでも相当凄いと思うんですけど・・・


 皆さんご存知の通り、本番はこれからだったんです。


 ※聴衆は今か今かと前のめりになり、店内は熱気で満ちていた。


 ちょっと暑いですね。一旦休憩にしましょう。

 皆さん食事なり、トイレなり行って来てください。

 後半は15分後からにします。

 すみません。麦酒お代わりをお願いします。


 ※店内がハッとして、店員はいそいそと酒の準備を始める。

  聴衆も興奮気味に今までの話を振り返ったり、新しい酒や食事を頼んだりする。

  店員が「これ、店からの奢りです」といって麦酒を出してきた。

  若者は商売人としてのレベルを上げた。


 〜 15分後 〜


 お待たせしました。では続きから。

 前日の興奮覚めやらぬ中、村長からミルク様感謝祭を執り行うことが告げられました。

 そうです。今では入場制限がかかるあの祭の記念すべき第1回ですよ!

 村長はすでに近隣の村に使いを出していたらしくて、かなり盛大に行うことがわかりました。

 それからはもう大人子供関係なくてんてこ舞い!

 舞台の設置、飾り付け、屋台の準備に料理の仕込み。

 今は定番となっているミルク焼きやミルク揚げなんかはこの日に初めて作られました。

 あ、僕が勤めているのはこのミルク焼きを扱う商店です。


 あの時は皆輝いてたなあ。

 誰もかれもが生きていることと、ミルク様への感謝の気持ちを持って行動していました。

 1つになるっていうのはああいうのを言うんですよ。

 それで、準備が万端整って、ついに祭が始まったんです!


 ※おお、とどよめきが起こる。ついに店主も座り始めた。


 それからはもう、飲めや歌えの大騒ぎです!

 屋台も盛況で、参加者も最終的に1000人は超えてましたね。

 あんなに楽しいお祭、生まれて初めてだって会う人会う人言ってましたから。

 祭が始まって数時間経って、会場の熱気が最高潮を迎えたその時、村長がアレと共に登場しました。


 そう、ミルク様の神像です。

 

 私達を救ってくれたミルク様への感謝を捧ぐため、なんと一晩で作ったその像は、とっても神々しくて。

 見た瞬間に涙を流すおばあちゃんまで居て!

 俺も小さいながらも感動してたんですよ。


 ・・・そしたらね。


 それは突如起こりました。


 ※もう何度目かわからないゴクリ、が聞こえる。


 雲ひとつない青空が黒雲に染まり、地は揺れ、凄まじい音と共に神の意思が降って来ました。


 かつてトアール山脈を消し飛ばし、草ひとつ生えない荒野に変えた神の一撃。






 ※若者は溜める。






 ※溜める!!





 ※聴衆が焦れる!!





 名を、【神雷(じんらい)】。



 ※うおおおおおおおおお! 凄え!、と聴衆の目が血走る!


 それは神像に落ちたんです。

 山脈を消し飛ばす一撃ですからね。

 普通村なんか跡形もないはずですよ、ええ。


 でも結果は違った。

 知ってるでしょう? そう、無傷だったんです。

 無傷どころか虹色の光を纏っていて、前よりも神々しさが増していました。

 いや、増したとかそう言うんじゃないな。

 あの場には、確かにミルク様がいたんです。


 もちろん動いたとか喋ったとかじゃありません。

 でも、ミルク様の意思がここにある、と実感したんですよ。


 とても、とても不思議な感覚でした。


 そんな時に村長が言ったんです。


「ミルク様が祝福してくださっている!」


 って・・・。


 そこから先はもうあんまり覚えてないんです。

 忘れたんじゃありません。

 気持ちが高揚し過ぎて、トランス状態になってたんでしょうね。

 気づいたら2日経ってました。

 寝たかどうかすら覚えてません。

 とても気持ちがよかった。それだけを覚えています。


 ※若者の目がヤバい感じになっている!


 ・・・これが、『あの日』に起きた全てです。


 〜 若者の視点、終 〜



 シン、と静まり返る店内。


 そして




 どわあああああああああああああああああ!!!




 店が揺れるほどの歓声が巻き起こった!


 事の顛末など皆知っている。何度も聞いたのだ。

 だが、話すのが実際にその場にいた人間といない人間とでは、信憑性に天と地ほどの差が生まれる。


 後に、その日店内に居たものは語る。

 まるで『あの日』、俺たちもその場に居たようだった、と。


 この若者はその後、伝説の語り部として確たる地位を築くのだが、

 それはまた、別のお話。


次回はミルク様回の予定です。

よろしければご覧ください。

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