海へ(九)
専用の容器に入ったオレンジジュースや烏龍茶、コーヒー、牛乳などが砕かれた氷の上に乗って冷やされている。中には野菜ジュースやジャスミン茶なんて物もあり、種類の豊富さに驚いてしまうが、
「ねえねえ、真吾」
僕の後ろをついてきていた紗千に呼ばれ、振り返ると彼女は指を差して立ち止まっていた。きっとそちらを僕に見るように促しているのだろうが、はっきりと何があるのか言ってくれれば良いものを。
僕は仕方なく視線をそちらに向けると、底の深い大きな鍋にどうやらスープが入っているようだった。
「このスープがどうかしたの?」
「これも飲み放題なんだって」
「いや、メインが来る前にお腹一杯になるんじゃ?」
「そうだね。気を付けよう。とりあえず、オレンジジュースとスープを持ってく!」
「結局飲むのね」
苦笑いで言うと、彼女は屈託の無い笑顔を僕に向けたまま、人差し指を一本立てて口に当てる。皆まで言うな!って事なのだろうか?でも、楽しそうな彼女を見ていると僕の方まで楽しくなってくる。
少し大変だったけれど、今日は本当にここに来て良かった。本気でそう思った。
二人揃ってスープとドリンクを持ってテーブルに戻ると、既にサラダが置かれていた。
そして、その後パスタがやって来た。美味しそうな湯気を立てながらテーブルに乗ったそれは、真っ白なクリームスープにパスタの黄色とホタテの白、そしてエビの赤が綺麗に映えた素晴らしい一皿だった。
僕はテーブルの隅に置いてあった小皿を紗千に渡すと、彼女は笑顔を僕に向けながら、
「私が取り分けてあげよう」
と、フォークとスプーンで器用に二人分を取り分けてくれた。
スプーンを受け皿にしてパスタをクルクルと回す紗千は、一口サイズにしたそれを口へと運び、
「おいひぃ」
と、言葉を漏らす。上手く言葉に出来ていないが、言っていることは分かった。何故なら僕も同じ感想を言いかけていたからだ。エビにホタテにクリームなんて美味しいに決まっている。
これはピザにも期待出来るな、なんて待っていると先程の店員さんが再びやって来て、楽しみにしていたピザをテーブルへと置いてくれた。
生地の上にトマトソースが塗られ、チーズとオリーブとプチトマトが綺麗に並んだオーソドックスなピザだ。
「これも美味しそう」
ピザを目の前にして紗千が言う。彼女の右手にはしっかりとパスタを巻いたフォークが握られている。




