海へ(八)
デジタルカメラで撮った写真と手書きで書かれたメニューには丁寧に料理の説明が入っており、どこか温かさを感じる。オシャレな外観と内装とは良い意味でギャップがあって、僕はすぐに心を奪われてしまった。
「すごいよ、見てこれ」
紗千が指差した所にはピザメニューと書かれており、そこには青いペンで「店内で全て手作りし、自家製のピザ釜で焼いてます」と、可愛らしい字が載っていた。
「ここ、喫茶店じゃないの?」
ピザ窯のある喫茶店なんて聞いた事が無かったので、ついそんな言葉が出てしまった。しかし、そこに載っているピザの写真は全て美味しそうに写されており、そんな小さな疑問などすぐにどうでも良くなってしまう。すると、ちょうどそこに先程案内をしてくれた店員さんがおしぼりとお冷を持って再び現れた。
彼女は静かにコップを置くと、
「もう少し掛かりそうですかね?」
と、笑みを作って言い、
「もしお決まりになりましたら、お声掛け下さい」
頭を下げてその場から去って行った。
「僕らがメニューで迷ってるの、筒抜けだったのかもね」
そう言って僕が笑うと、
「こんなに美味しそうな写真が載ってたら、迷うのも当然でしょ?」
口調自体はキツイが、表情には笑顔が溢れんばかりに零れている。
結局メニューを決めかねた僕たちは、人気No1と書かれていたポモドーロというオーソドックスなピザと小エビとホタテのクリームソースというパスタを頼み、二人でシェアする事にした。ドリンクやデザートも頼もうと思ったのだが、店員さんに、
「パスタかピザを一つ頼んで頂くとプラス二百円でランチメニューに出来まして、ドリンク飲み放題とデザートが一つ付きます。あ、あと小さいんですけどサラダも付きますが、もし宜しかったらどうでしょう?」
僕と紗千は、
『お願いします』
と、同時に口を開き、クスッと笑った店員さんは、
「では、デザートを二つお選び頂けますか?」
と、尋ねた。
店員さんが去った後、
「紗千が二つとも選んで良かったのに」
そう、店員さんに尋ねられたデザート二つを選ぶ時、彼女は頑なに僕に片方を選ばせた。
「一人一つずつなんだから、これで良いの」
言った彼女は嬉しそうに笑っている。
僕は少し考えてみた。自分の好きな物を一つだけ選ぶのと二つ選んで良いと言われるのでは、後者の方が圧倒的にお得感があると思うのだけれど、彼女はどうやらそうではないみたいだった。
とりあえず、サラダがやって来る前に飲み物を取りに行こう。




