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海へ(十)

 二人でシェアしたとはいえ結構な量があった。こんなに食べたのはいつ振りだろう。そんな事を考えながら伸びをすると、正面に座る紗千は紙ナプキンで口を拭いていた。こういう所を見ると、女の子なんだなと感心してしまう。

「どうしたの?」

 あまりにその仕草をじっくりと見過ぎていたのか、紗千に声を掛けられる。

 いや、綺麗に口を拭いてる姿を見て女の子なんだなって感心しちゃったよ!なんて言える訳が無いので、頭をフル回転させて、

「結構量あったけど大丈夫?この後、まだデザートも来るよ?」

「甘い物は別腹だからね?」

 Vサインで返す彼女。


 どうしても食べたいと最初から言っていた苺のムースケーキと自家製コーヒーゼリーが運ばれて来たのはそれから数分してからだった。紗千がどうしてもと言うので、数あるデザートの中からコーヒーゼリーを選んだのだが、

「なんで、それにしたの?」

 嬉しそうに尋ねられ、

「あ、えっとピザとかもそうだったけど、多分ケーキとかデザートもここで作ってると思うんだけどさ」

 そこまで言うと、「うんうん」と相槌が返って来る。

「このコーヒーゼリーにだけ自家製って付いてるんだよ?」

「言われてみればそうかも」

「ね?ちょっと気になって頼んだけど、普通に美味しそうだね」

 そう言って二人で笑い合った。


 お腹一杯食べて笑ってゆっくり休ませて貰ったにも関わらず、こちらが申し訳なくなってしまうくらい良心的な値段だった。僕たちがお店を出る頃には、結構な数のお客さんでお店の中は埋まっており、二人で良いタイミングだったかもね?なんて言いながら再び、幹線道路へと戻った。

 大きめの歩道を自転車を押して歩く僕とその隣を同じペースで歩く紗千。

 特にこの後の予定は決まっていなかったのだが、二人して自然に来た道を戻っていた。

「この後、どうしようか?」

 向こうに着くまでの時間を考えると、夕方前くらいにはここを出た方が良いと思うのだが、それにしても帰るにはしてはまだ早い気がする。それはきっと紗千も分かっているようで、

「せっかくだし、やっぱり海行ってみる?」

 そう呟いた。

「え、冷たくない?」

「さすがに海には入らないよ?」

 彼女は僕の発言に呆れたのか、半目でこちらを見下す様にして言った。

「砂浜に座ってさ、日向ぼっこしながらちょっとお話でもしようよ」

 紗千の提案でそうしようという事になった。

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