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ゴブリンの洞窟へ

「皆さん、ゴブリンの洞窟へいきませんか?」


私――アルドは、皆に提案した。


「ゴブリンの洞窟?急にどうしたってんだ?」

「覚えていますか?私たちが出会った、芋煮会の事……」


芋煮愛ってすごい。そんな事件だった。


「忘れるわけないよー。」

「あんなに街の人達が強いなんて思いませんでしたしね……」


警備員だった私たちのメンツはだいぶ潰れた。……アルバイト料は普通にもらえたが。


「それがゴブリンの洞窟とどう関係するんだ?そこに芋煮を連れ去った悪でもいるのか?」

「違います!……あの時、私たちは協力してゴブリン一匹が精一杯でした……」


残りは街の人が全部倒しました……

そう言うと、みんな俯いた。


「なので!力をつけるため!手っ取り早く言うならレベルを上げるために、ゴブリンと再戦したいのです!」


あの日の無力さは、今でも忘れてはいない。


「安いですけど、依頼料も出ますし、なにより近くの村の人は困ってるらしいですし……」


困っている人!?急にエンツォさんの目が輝き出した。

この人は本当に分かりやすくて、良くここまで無事だったな……と、ほっとする。


「ゴブリン退治再チャレンジ。行きませんか?ねっ?」


正直、私一人ではタコ殴りにされてしまって終わりでしょう。できれば皆で行きたい。

皆、少し考えたあと頷いてくれた。きっと皆、強くなりたい思いは一緒なのだ。



ゴブリンの洞窟はこの街から歩いて3時間程度の所にある村に、かなり近いらしい。

近くにゴブリンが住み着いて困っている。

私はその依頼書を、ギルドで認可してもらい、

エルナさんとミアさんは回復薬を買いに、

ジオさんとエンツォさんは装備の不具合を確かめ。

ネロさんは皆のお昼ご飯を作って。そうして私たちは出発した。


「帰ってきたら美味しそうなにおいしてたんだもん!お腹すいたよ!」

「そんなに焦るなって。どうせ昼になれば食べられるんだ。」

「ネロの料理は……俺の特権……うう」


皆様々に喋りながら足取りは軽い。

昼が近くなって、皆でぎゅうぎゅう詰まったお弁当箱から争うように食べて。

そうして何の問題もなく私たちはゴブリンの洞窟の近くにある村にたどり着いた。


「これでゴブリンがいなかったらどうする?ただ弁当食べて観光に来ただけみたいじゃねえか?」

「平和なら良いことだろう!平和なのは正義だ!」


本当に、これでゴブリンがいなければただのピクニックだ。

脳内で考えて笑ってしまい、ネロさんに不審な目で見られた……



村の人達は、畑を耕したり牛に水をやったりと、一見普通に見えた。

しかし、物音にびくりと振り向いたり、さっとクワや鎌を振り上げるので、どうやらゴブリン問題は相当根深いようだった。

私たちは村長さんの家に向かい、認可された依頼書と、冒険者カードを見せた。


「ほとんどがレベル1ではないですか……」


村長さんは、気落ちしたようにがっくり肩を落とした。


「強くなりたくて来たんです。ゴブリンを倒す気持ちだけなら、負けないつもりです!」


それでも村長さんの顔は晴れなかった。

ゴブリンの洞窟から帰ったら必ず一報入れてください、報告が無ければ救助を呼びますとまで言われ、私たちは落ち込んだ。


「やっぱりレベル1は信用がないですね……」

「正義はこれからだ!まだ……これから……」


みんななんとなくしょんぼりとしてしまった。



ゴブリンの洞窟は、静かだった。

だが、ネロさんにふと足止めされて、私たちは止まった。


「………見えづらいが、見張りがいる」

「えっ」


私たちは身を隠して、そっとゴブリンの洞窟を見やった。

……確かに、岩肌と色が同化しているが、一匹ゴブリンが見張っている……


「わざと少しだけ音を出してこちらに呼び込みましょう」


私の提案は、皆の頷きで可決された。

草むらを少しだけ揺らす。ゴブリンは不審そうな顔で近づいてくる……そこへ、


「水よ、わが力を用いて、わが敵に、沈黙をもたらせ!」


準備していた魔法を早々にぶちかます。

そこを前衛の3人が取り囲んだ!

卑怯とは言うまい。こちらも命がけだ――

ミアさんのシールドバッシュで脳震盪を起こしたゴブリンに、ジオさんとエンツォさんの連続攻撃が決まる。

……とりあえず、最初の山場は越えた。

倒れ伏したゴブリンの耳を削いで(ちょっと気分が悪かった……)

私たちは、ネロさんを先頭に恐る恐るゴブリンの洞窟へ入っていった……



ゴブリンの洞窟は、暗かった。

ネロさんは自分は戦えないと思っているようだったが、やはりこういう時にはネロさんがいなくては困ってしまう。

そんなネロさんが、ぴたりと止まった。


「………3匹。」


いつものように一言。けれど、その内容は私たちを緊張させるのに十分だった。

気づかれないうちに、魔法を1カウント、2カウント……!


「ギギっ!」


気づかれた!バラバラと皆、私とエルナさん、そしてネロさんを庇うように前衛が展開する!

複数のゴブリンとの戦闘……!

ジオさんが一匹と切り結んでいる間に、その一匹にミアさんがシールドバッシュ……

しようとして、もう一匹のゴブリンに止められる。

そこをエンツォさんが突撃で、ミアさんとエンツォさんは2対2になった。

ジオさんはなんとかゴブリンと切り合っているものの、ゴブリンの棍棒であちこちにあざができている。


「か、回復します!」


エルナさんのヒールがジオさんにかかる……けれど、回復しきれていない。

エルナさんの弱点、ヒールの威力が弱い。こんな所で困ったことになるなんて。

ジオさんの援護にはネロさんが回ったようだった。目を狙ってナイフを投げる……ものの、威力が弱い。

はじき返されて、どうにも通らない。そこへ、


「水よ、わが力を用いて、目の前の敵を、刃となって討ち滅ぼさん!」


カウントが、完成した!

ジオさんと切り結んでいたゴブリンは大ダメージを負い……そこへジオさんの一撃で、ようやく倒れた。

私は慌てて2匹のゴブリンへ視線を戻す――2人は、どうやら防戦一方になっているようだった。

ゴブリンのチームワークとも言えない連続攻撃で、2人とも身動きが取れないのだ。

エンツォさんに、ゴブリンが棍棒を振り下ろそうとしたその時――

飛んできたナイフが、ゴブリンの目に突き刺さった!ゴブリンは忌々しそうにターゲットをネロさんに変える……!


「ネロ!」エンツォさんが叫んだ。「やらせる、ものか!!!」


横からの突撃!けれどゴブリンは傾いでも止まらず、ネロさんを狙っている!?

ジオさんが回復中に突撃した。まだボロボロだったけど、ここでネロさんに倒れてもらっては困る……!

魔法はまだ1カウント。先が長い!

ジオさんの頭に棍棒が入る…!ジオさんの身体が傾いて――そこへ、


「やめてください!」


エルナさんの、魔法が、発動した。

今までの弱々しく消え去りそうな光から、弱々しくもはっきりした光へ。

ジオさんの身体中の傷が、完全とはいかないまでも、今までとは比べ物にならないスピードで癒されていく…!


「まだ、戦える!ありがとな!エルナ!」


エルナさんは次の詠唱に入っている。私も負けてはいられない。

あと、1カウント!

ゴブリンの背中に、エンツォさんの突撃が深々と突き刺さる…!

ゴブリンは倒れた。残りはあと一匹……!


「だれかー!こっちも手伝ってよ!もうギリギリだよー!」


ミアさんが叫んだ。だが、もう残り一匹!


「水よ、わが力を用いて、目の前の敵を、刃となって討ち滅ぼさん!」


私の魔法に、ジオさんとエンツォさんの同時攻撃……

さすがに4対1ではなすすべもなく、ゴブリンは倒れた。


「ネロ、大丈夫か!」


エンツォさんは真っ先にネロさんに駆け寄っていく……あの二人、本当に仲がいいな。

ミアさんもジオさんに、心配かけないで!なんて怒っている。

そして、エルナさんは――


「わ、私の魔法……おかしく……なってませんでした?」

「おかしい、というより……威力が少し上がってましたね。もしかしたらレベルアップしてるのかもしれませんよ。」


帰ったら確認しましょう。

そう言うとエルナさんは、興奮したようにぴょんぴょんはねていた。



そのあとは、複雑に入り組んではいるものの、狭い洞窟に点在していたゴブリンたちを各個撃破して、耳を削ぎ取り(何度やっても気持ち悪い……)私たちは、村へ帰還した。


「冒険者さんたち!無事だったんですね!?」


慌てて迎える村長さんに、事のあらましを軽く説明して、しばらくはゴブリンは来ないのではないかと伝えました。

村長さんは、耳の多さに安心したように力を抜いて、無礼な態度を取って申し訳ないと謝ってくれた。

そして……私たちは街へ帰り、ギルドに報告して――


「やったぁ!やりました!レベル2です!」

「エルナちゃん凄い!私も負けてられない!」


それはそれは嬉しそうなエルナさんを見ることになったのだった。

少しは、私も強くなれただろうか?

そんなふうに考えながらも、だんだんとまとまっていくこの寄せ集めの6人組は、私にとってかけがえのない居場所になっていた――

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