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夢魔の受難

「サキュバスとインキュバスの群れがとある病院に夜な夜な現れる!?」

「そうなんですよ……その病院に監査を入れても、患者の事は極秘事項だ、で何も答えてくれないんです……近隣住民の方から、怖いから解決してくれって言われちゃいまして……」

「あの……インキュバスもサキュバスも、私たちのレベルでは到底かなわないと言うか……」


おどおどと、声を上げました。

まさか……ギルドの職員さん、私たちが邪魔になって!?


「大丈夫ですよぉ、彼らも夢魔ですけど亜人として暮らす一種!……ちょっと失敗しても、命までは取られませんから。ただ……ぱくっと食べられるだけです。性的な意味で。」

「余計悪いんですけど!?!?」


アルドさん……!そうです!もっと言ってやってください!


「でも近隣住民の方は夜中困ってますし……ほかの冒険者の方々は受けてくれないし……アルドさん達にしか頼れないんですよ!」


うっ……。私とアルドさん、同時に効く殺し文句が出た!


「も、持ち帰って……検討させていただきます……」


アルドさんは本当に検討しちゃうから駄目ですって!!!



「サキュバスだぁ?ホントにいるのか?」

「インキュバスって基本はイケメン多いんでしょ?そういう進化したって聞いたよ〜!」

「ミア、俺じゃダメなのかミア……!」


あそこのカップルはいつも通りですね。

ジオさんは反対派、ミアさんは賛成派、と……


「無理やり他人に迫るのは……ううむ、正義ではないのだが……ううむ。」

「……勝てる相手にしておけ。」


珍しい。今回エンツォさんが言い淀んでいます……

でも、私は……


「危険かもしれないけど、行きたいです。何かあってからじゃ、遅いと思うから……。それに、周辺住民の方が不安なんでしょう?」

「……私も、そう思います。夢魔といえど、話の通じる人の一種。なら対話で何とかなるかもしれないじゃないですか……。」


そうです、彼らも珍しいとはいえ、魔物ではなく人の一種なのです。


「とりあえず……今夜、こっそり遠くから覗いてみましょう。こっそりと。」



そうして夜にその病院に来た私たちですが……

居ます居ます!ビックリするくらい、美人と美男が大量に!

……でもなんか、皆さん疲れたOLやブラックの社会人みたいな雰囲気です……

あんなに扇情的な服を着ていらっしゃるのに……?


「どうしたんだい、君たち。」


いきなり後ろから声をかけられました!ぴゃっと跳んで、アルドさんの後ろに隠れます。


「そんなに怯えなくても……」


そこに立っていたのは……すごいイケメンなのに、なぜだか冴えない新人サラリーマンみたいな雰囲気のインキュバスさんでした。


「もしかして……討伐依頼?」

「ま、まさか!」

「私たち、話を聞きに来たんです!」


インキュバスさんは、周りを見回して、なるほどね、と、頷きます。


「こんなに大量に集まっちゃってごめんね……けど、ちょっとこっちにも訳があって……」


インキュバスさんはため息をつきます。


「ほら……最近のピンナップやマンガって、過激じゃないか……。ご飯を貰おうと夢に入ったら、ひどい目に遭っちゃってね……」


インキュバスさんは、遠い目をしました。


「怪我をした子や、トラウマになった奴もいるんだ……」


うわあ。

そんな夢を見てる人がこの街にそんなにいっぱい居るんですか!?不潔です!


「夢魔専門医って、実は少なくて。この大陸では、この街以外にはないのさ。」


なるほど……それで、こんなに大量の夢魔さんが……


「最近の夢魔活動はブラック企業。早いところ、エッチな本やら何やらの規制をしてほしいよ……」


……もしかして、最近、北の大陸でのエッチな本の規制が厳しくなってきたのって、まさか……


「僕らやサキュバスが過激化に反対してるからだね……」


うわあ……本当にうわあ……


「エロい夢を見せるはずの夢魔がそれじゃあ本末転倒じゃねーか……」

「おにーさんもひどい目に遭っちゃった感じ?アッー?」

「はは……まあ、それはともかく……」


話をそらした……どうしよう……この雰囲気……


「つまり……夢が過激になりすぎて、僕たちが耐えきれなくなってるんだ。」

「せ、正義はどこに……!?」

「エンツォさん落ち着いてくださいエンツォさん。」


アルドさんも混乱している!


「と、ともかく……この大きさの病院に対して、集まる人が多すぎるんですよ!どうにかしなきゃ……」


私の言葉に、パーティのみんなが次々と言葉を発します。


「普通の病院でも診てもらえる範囲はそっちへ行くとか?」

「俺たちも規制の強化に賛成しよう!」

「規制は強くなりすぎてもダメなんですけどね……この病院から、何人か独立して別のところで独り立ちしてもらうとか……」

「………………」


ああだこうだと言い合っても結論は出ません。

社会問題に対して……私たちは……無力……!!!


「おっと……僕の番みたいだ。まあ、この状況は僕らも悪いとは思っているんだ……ごめんね……」


そう言ってインキュバスのお兄さんは去ってしまいました……


「夢魔も苦労しているんだな……」

「エロい目で見すぎて悪かったぜ……」

「むっ、ジオ!浮気!?」

「まあまあ、落ち着きましょうよ、皆さん……」



そうして私たちはギルドに報告をし、唖然とされたのでした……

その後、話が広がり病院周りで夢魔を守る会が発足したと聞きましたが……

同時に、「夢の健全化を求める会」もできたそうです。

何も解決してない気もしますが、あのインキュバスさんやサキュバスさんたちも頑張っているんだなぁ……

もうすこし、落ち着けると良いですね……

そう願わずには、居られませんでした。

……たぶん、無理なんでしょうけど……


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