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恋する鉄鋼

「困ったことになったぜ……」


ヘトヘトのジオさん。膨れているミアさん。

そして……ジオさんの腕にベッタリと絡みついている……全身鎧の方?


「あ、ジオさん、遅かったですね。お帰りなさい。」

「お帰りなさいじゃねぇよ……アルド、こいつどうにかしてくれ……」


ジオさんはベッタリと絡みついている全身鎧の人に声をかけました……


「いやーね、ダーリン!私のことはリーシャって呼んでって言ったでしょ?」

「ジオのバカ!もう知らない!」


……な〜んとなく、話が読めました。


「一目惚れでもされちゃったんですか?」

「そうなの!ダーリンったら倒れた私を助けてくれて……」


女性の声ですが、ゴッツイ全身鎧から聞こえてくるのが不自然ですね……


「助けたつもりは無かったっつーの!というかお前……!」


その時、リーシャと名乗った全身鎧の頭が、ポロリと取れました。

……頭が……無い!?

というか……彼女、おそらく……!


「お前、リビングアーマーだろうがー!!!」


……おかしいな?なんか胃が痛くなってきたぞ?

なんで防具屋さんに買い物に行ってリビングアーマーに一目惚れされて帰ってくるんです……?



「私、古い鎧だったの。前のダーリンは私のこと、とても大切にしてくれたわ……」


まあそうでしょうね……長い時を経た鎧ではないとリビングアーマーにまではなりません。おまけに思考までつくとは……


「でも今の彼ったら最悪!私を適当に扱うし、今日なんて投げて扱ってたの。そこへ、ダーリンよ……!」


あんたも防具屋なら、鎧を大事に扱うべきなんじゃねぇのか?


「こんな事言われたら、ときめいて意志だって産まれるに決まってるわ!!!」

「お前あの時生まれたのかよ!?」

「それはまぁ……リビングアーマー的にはハートを撃ち抜かれた感じでしょうねぇ……」

「でしょ?でしょ?」

「俺にはミアがいるんだよ……」

「じゃあミアさんが居なかったら?」

「嫌だよゴッツイ全身鎧と付き合うのは!!!」


ミアさんは黙ったままで、そっぽを向いて拗ねています……。

このカップルが破局してしまうのは、こちらも大変困るのですが……


「あの……今からでも返品されては……」

「意志が宿った瞬間防具屋のオヤジにタダで押し付けられたよ……結構な値打ちものだったってのにな……」

「ダーリン……私のこと、値打ち物って……!」

「やっべ」


ジオさん……実は無自覚タラシだったんですか?今まではミアさん一筋だから全然見えなかっただけで……

リーシャさんはその後もずっとジオさんに付きまとっていました……無理やりあーんをしたり、自分をまとって欲しいと頼み込んだり……


「好きな人と一体化するなんて、全リビングアーマーの夢よ!」

「着れそうではあるけどなぁ……喋るのがな……」

「あと何気にジオさんスピードタイプですもんね……全身鎧との相性は悪いかと……」

「そんな!私たちの愛は決して引き離されたりはしないわ!ねぇダーリン?」

「いや俺にはミアが……重い重い重い!物理的に重い!!!」


……その時、ミアさんが、無言で立ち上がりました……


「ジオのバカ……!」

「ミア?」

「ジオのバカ!別れてやる!!!」

「待て!ミア!」

「ダーリンどこにいくの!?」

「ちょっと待ってください!……ああもう!なんて日だ!」


ミアさんをジオさんが、ジオさんをリーシャさんが、リーシャさんを私が追いかけていきます!


「ッ!待てミア!その先は!」

「知らない!浮気者の言うことなんか!」


ミアさんが逃げに逃げ、危険!工事中!の札の立てられた建物のそばを走ります!

上から……瓦礫が!


「ッ……!ミア!」

「ダーリン!!!」

「ジオさん!!!」


ジオさんがミアさんを捕まえて……そのまま、身体でかばう!

ガアアアン!!!

……酷い音が、しました。

辺りには土煙が立ち、その先には……


「……お前……!」

「リーシャさん……!」


巨大な瓦礫からジオさんを庇って、ベッコリと胸の部分が凹んだリーシャさんの姿が……

そのままリーシャさんはガラガラと崩れます。私たち……ジオさんもミアさんも慌ててリーシャさんを拾い集め、工事中の範囲から脱出しました……


「だ……ダーリン、大丈夫……だった?」

「お前が庇ったんだ、当たり前だろう!」

「良かった……でも、一度くらい、着てほしかったな……こんなに凹んじゃった私じゃ、もう無理、だけど……」


声がプツンと途切れるように、それ以降リーシャさんは言葉を発することはありませんでした……



そうして、私たちは、リーシャさんの胴体を集めて、宿のオヤジさんに頼み、倉庫に置かせてもらいました……

ジオさんは、片腕のガントレットだけ、左手につけることにしたようです……


「やっぱり……わたしの、せい……だよね。」


ミアさんは後悔するように呟きます。


「ミアの気にすることじゃねぇよ。俺が、覚えとけばいいことだ。」


ジオさんが、ガントレットを撫でます……私たちは想いに沈んでいました。その時、


「……ダーリンったら!やっぱり恥ずかしがり屋なんだから!」

「うぉっ!?喋った!?というか、お前……!」

「リビングアーマーは元々生き物じゃないもの!死なないわ!ちょっとショックで気絶してたけど……。あっ、でも、あんまり胴体と離されたらしゃべれなくなっちゃう!」

「……あんまりって、どのくらいだよ……」

「三メートルくらい!」

「狭すぎだろ!つまりほぼ倉庫の周りだけじゃねーか!全く心配させやがって!!!」

「全身着てもらう夢は破れたわ……でも、一部分だけでもダーリンに着けてもらえるのって、幸せよ!」

「よし、ミア、アルド。速やかに去るぞ。」

「ダーリンの意地悪〜!!!」


……でも、その後、時々ですけど宿の物置の前に立ってるジオさんを見かけます。なんだかんだ言って、大事にガントレット、使ってるみたいですしね。


「ジオの浮気者!無機物タラシ!」


……ミアさんは、お怒りですけど。


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