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遺跡の勇者

「未開の遺跡……?」

「ええ、罠があるそうだけれど、こういうときシーフのネロさんが役に立つんじゃないかしら?入り口周辺にはモンスターは居なかったみたい。でも奥に、結構気配を感じるらしいのよ。」

「アルドさん、どうしましょう?結構……難易度、高そうですよね……?」


エルナさんが不安げに見つめてきます。

皆を危険に晒さないようにするのがリーダー。

けれど、それだけで成長できるのか――?


「受けましょう。こういう依頼も、たまには経験、です。」


さて……魔物退治のついでにネロさんのお手並み拝見、です。



というわけで、やって来ました未開の遺跡。

あの巨大ゴーレムが出た地下なんだ……

空気はちゃんとあるらしいが……

私たちは狭い階段を降り、たいまつに火をつけます……

……狭い通路の真ん中に、変なポーズを決めてキリッとしてる人が居ました……

呆然とする私たちに対し、彼は、


「俺は……トレジャーハンター!名はラッツ!世界の宝を、手に入れる男!」


ビシッ、と私たちに指を突きつけます。


「この遺跡の宝は、渡さない!オレと勝負だ!宝を見つけたものが勝ち!」


それだけ言ってラッツさん?は奥の方へ走っていってしまいました……別に私たち、宝探しに来たわけじゃないんですが……


「俺たちの目的って……遺跡の魔物退治のはず……だよな?」


全員で頷きました。彼、何しに来たんだろう……



とりあえずまずは、細い通路を抜けて……


「あんたたち!助けてくれえええ!」


……次の部屋で速攻で網に捕まってぶら下げられたラッツさんを発見しました……

エンツォさんとネロさんが肩車をして、天井の何かをカチャカチャといじると……

……ラッツさんが落ちてきました。


「くそっ……こんなことで、俺は負けないんだ、世界一のトレジャーハンターに……」

「ねぇ、そのことなんだけどさ〜。」

「敵の懐柔は聞かない!この遺跡の宝を手に入れてみせる……!」


……またラッツさんは走り去りました。

すごい素早さなので、少なくともシーフには向いているのでは?

ポツリとこぼすと、ネロさんにすごい目で見られました。

あんなのと一緒にするな、って所でしょうか……?



次の部屋……小さなゴーレムが居ます!


「確か衝撃に弱いんだっけ?私の盾で叩き潰しちゃう!」

「それなら……俺は、この角材なんか良さそうだな、これ持ってくか。」

「正義のシャベル!正義のシャベル!」


……全員、割とウキウキしています。

最近バトルなんて全然していませんでしたからね……

ゆっくりと回廊型の部屋を回っている小さなゴーレム2体……


「速攻で勝負を付けますよ!間に合わなければもう1体来ます!」


私たちはゆっくりと動くゴーレムの前にバラバラと躍り出た!


「先制攻撃!潰しちゃう!うりゃあっ!」


ミアさんのシールドバッシュ!同時にジオさんの角材とエンツォさんのシャベルもゴーレムに突き刺さります。

が……硬い!ガアアアン!という音を響かせて、弾きます。

しかし、その身体には確かにうっすらヒビが……!

ゴーレムはジオさんの角材を掴んで……折ろうとしている!?


「いきなり折られて、たまるかよ……おりゃあっ!」


ジオさんゴーレムごと角材を振り上げて地面に叩きつけた……!

そこへ、ネロさんの矢とエンツォさんのシャベルの同時攻撃!さすがにヒビが広がり、そこへ……


「もう一度、すりつぶす!」


ミアさんの鉄の大盾に力任せに上から押しつぶされたゴーレムは、胴体が割れて動かなくなりました……そこへ2体目のゴーレム登場!

しかし、カウントはすでに完成している!


「水よ、わが力を持って、目の前の敵を、氷となって打ち砕かん!」


バキバキと氷像と化したゴーレムに、全員の袋叩き!

ゴーレムは、バラバラの氷塊になりました……


「俺たちも、だいぶ慣れてきたな!」

「うむ!正義のシャベルの勝利!」


……エンツォさん、シャベルは帰る時に元の位置に戻すんですよ?

ずいぶん気に入ってるみたいですけど、持って帰っちゃ駄目ですからね?



しばらく歩いていると、ネロさんが静かに制止をしました。


「……待て。」


床に座り込み、何かをカチャカチャといじっています。

これは……罠解除?


「……よし、通れる。」


さっきまで見えなかった細い糸が、切れて床に落ちていました。

ネロさんって本当にシーフなんだなぁ……

観察眼は、何度か見たことはありましたが……


「次の部屋……おそらく、大きいのがいる。……たぶん、ラッツとかいうのも。」


……それはなんとなくわかります……

先の方から、ひょえー、だの、助けてくれ!だの、声が聞こえますから……

もしかして……戦闘、始まっちゃってるんでしょうか?


「……敵がラッツに一番気を引かれてる時に、一気に仕掛ける……デカいのは、まず……脚を狙う。」


ラッツさん完全に囮扱い!



そうして私たちは、次の部屋で、息をひそめ……

敵がラッツさんを追って後ろを向いた瞬間!

大きいゴーレムに襲いかかりました!

狙うは膝裏の関節一点!

真っ先にネロさんの矢と私の魔法が飛びます。

エルナさんは後ろでハラハラと見守っている……

ゴーレムの右足がビシリと凍り、そこへ矢が突き刺さる!

さらに全員の一点攻撃!さすがに足は砕けました。

しかし、これからが勝負!

その場から動けなくなったゴーレムは、私たちに狙いを定めました……

あっ、ラッツさんが奥の部屋へ逃げていく!

あの人、ほんとに役に立たないな!

ぶうんと振り回される手!伏せて躱すネロさん!


「……コアを探せ!」

「前の時みたいにコア狙いだな!」

「今度こそ私が決めちゃうんだから!」


ゴーレムの動きは強くとも遅いです!なんとか避けながら、あちこちでコアを探す私たち……あった!

首の後ろに魔宝石!


「ミアさん!守ってください!詠唱します!ネロさんはコアに攻撃を!他は……当たらないでくださいね!」


ブンブンと暴れまわる土塊の両手……

動き回るエンツォさんとジオさんが囮になってくれています!

何度も魔宝石に矢を撃ち込むネロさん、そして……


「水よ、わが力を持って、目の前の敵を、貫け!」


ゴーレムの核は、砕かれました………



そして、一応最後の部屋に入った私たち……敵はもういないと思いますが……

そこへ、


「ははは!遅かったな、この剣は、このトレジャーハンター!ラッツのものだ!」


なんか仰々しい台座から仰々しい剣を引き抜きます……そして……

天から、美しい声が降ってきました……


(この伝説の剣を抜いた貴方こそ、我が勇者……さあ、旅立ち、魔王を倒すのです……)

「「「「「「ゆ、勇者の剣!?」」」」」」


私たちは全員びっくり。ラッツさんもびっくり。


「よかったな、新しい勇者様よ。」

「えっ、いや、俺はトレジャーハンター……」

「伝説の剣、抜いちゃったんだもの。これは……言い逃れできないねぇ〜」

「いや、勇者とか……」

「羨ましいな!正義だ!頑張るんだぞ!」

「……トレジャーハンターより、多分向いてる。」


ラッツさん、撃沈。


「で、でも今の時代魔王とかいませんし……大丈夫ですよ……!」

「魔王のいない勇者って何すればいいんだ……?」


……皆の目が私に集まりました。


「とりあえず、正義……じゃないですか?」

「俺のトレジャーハンターとしての第一歩が……!」


ラッツさんはすっかり元気をなくしてしまいました……



そして……しばらく後……


「アルドさん!これ見てくださいよ!」


エルナさんが新聞を持ってきました……なになに?


(北の大陸にて、勇者目覚める!)

(伝説の剣を持ちて魔物を倒し、人を救う!)

(その名はラッツ!)


…………なんというか、トレジャーハンターよりは、やっぱり向いてますよ。

……本人がどう思ってるのかは、分かりませんけれど。


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