蜂蜜色の朝と秘密
それは、ちょっとだけ早く目覚めてしまった朝のことでした……
もう一度寝直す、という選択はあったものの、なんとなく目の覚めてしまった私は、きちんと服装を整えてガチャリと扉を開けます。
ふわりと甘くて、いい匂い……
なんの匂いかしら?
匂いに誘われてキッチンへ向かうと……
なんと、ホットケーキをはちみつたっぷりで頬張っているエンツォさんと、それを見ているネロさんを発見しました!
「え、エルナ!?こんな朝早く……」
「……サンドイッチはまだできていない。済まない……」
「い、いえいえいえ、すみません、なんかお邪魔しちゃったみたいで……」
2人はなんとなく親密そうな雰囲気でご飯を食べていました……
……なんだか、いつもより距離が近いような気がします。
「……パンケーキでよければ、作る。」
「えっ!?いいんですか!?」
パンケーキ!いつもの朝ごはんはサンドイッチが置いてありますが……それも美味しいのですが、出来たてパンケーキ!これに勝る美味はありませ……いえ、プリンには負けるかしら……?
「……すぐに用意する。」
そう言ってネロさんは席を立ってキッチンへ行ってしまいました……
「お二人は……いつもこんなに朝早く?」
「ああ。俺よりネロのほうが早いけどな!アルドとエルナがギルドで仕事を探している間、ダラダラしているのもなんだろう?正義のジョギングついでに人助けもするのさ!そのためには早起きしないとな!」
エンツォさん……!立派です!私も神殿を離れてからすっかり遅起きになってしまいましたが、心を新たにしないと!
「それに……朝早くに起きるとこういう役得があるしな。」
エンツォさんはネロさんのほうを指差します。パンケーキ!
そこへネロさんがひょいとキッチンから顔を出しました。
「エルナ。普通のとスフレパンケーキ、どっちがいい……?」
いきなり究極の二択を突きつけられました!どうしましょう!選べません!
「次早起きした時に別のを頼めばいいのさ!そう難しく考えることもない!」
……結局欲に負けてスフレパンケーキを選びました……ふっくらパンケーキもかなり魅力的だったのですが……
そして……しばらく待って出てきたのは、お店よりは多少形が歪なものの……大変美味しそうなスフレパンケーキ!
「……バターとはちみつ、どっちを」
「両方!お願いします!!!」
「……わ、分かった……」
隣でエンツォさんが声を殺して笑っているのが伝わります。でも、美味しいものは美味しく食べなくちゃ!
金色の蜂蜜に、とろりとバターが絡んで……うーん、美味しい!
なんで美味しいもの食べてる時ってこんなに幸せなんでしょうね?
「ごちそうさま、ネロ。俺は行ってくるよ!」
「……ああ、行ってこい。」
そうしてエンツォさんはジョギングに行ってしまいました……
ネロさんは静かにサンドイッチを作り始めます……私は、パンケーキを頬張りながらそれを見ていました……
ネロさん、夜早いけど、毎日こんな時間から忙しかったんだなあ……
迷惑かけないようにしなきゃ。
そう思いつつも口はパンケーキを求めて止まってくれません。
だって、美味しいんですー!!!
そうしてパンケーキを食べ終える頃、ジオさんとミアさんが起きてきました……2人とも、眠そうです……
「今日もありがとな!」
そう言ってサンドイッチを食べ始めますが……私、もう甘いものの魅力に取り憑かれちゃったかもしれません。
そこへ、後ろにネロさんがそっと立ちました。耳元に、ぼそっと。
「朝のパンケーキは、秘密だぞ。」
……早起きは三文の徳ってことですね!
ゆっくりアルドさんも降りてきて賑やかになり始めたラウンジに、私は駆けていきました。
「皆さん!遅いですよ!」
……この朝は、内緒ですけどね。




