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それでも、並ぶために。

その日は、大規模小隊のような冒険者の集まりっぷりだった。

隣の街から、商人の集団がまとめてうちの街へやって来るというのだ。

最近は盗賊なんかも多い……守らねば、という意識と、人と戦わなきゃいけないのかな?という不安。両方を抱えて、私たちパーティは商人たちを守っていた。

そこへ……ふと、隣から声がかかる。


「よう、久しぶりだな、へなちょこ。」

「あなたは……ええと……」


覚えているのだが、やっぱり名前が出てこない。


「この間盗賊の根城で助けてくれた人ですよね!」

「名前覚えてないのかよ!?」

「私こそへなちょこなんて名前ではありません……」

「知ってるよ!へなちょこアルド!」


肩で息をしながら彼は叫んだ……魔術の塔一番の秀才が、私になんの用だろう……?


「レオンだレオン!まったく、ずっと同じクラスだっただろうが!」

「ねぇアルド〜?この人嫌な奴?」


ミアさんがシールドの素振りをしています!止めなくては!


「いえいえ!別に……昔同じ場所で学んだ関係ですよ……」


まだなにか言いたそうなジオさんとミアさんに背を向けて、私はレオンさんに向き合いました。


「それで?レオンさん、何の御用ですか?」

「この間は助かったって一応直に言っときたかったんだよ……クソっ、あと……弱っちいやつが無理すんなよ!今回こそな!」

「私とて、レベル3です。役立たずでいるわけには行かないんですよ。」

「へぇ……あの万年レベル1だったへなちょこがな……おっと、悪いな!」


言いたいことはそれだけだったのか、レオンさんは離れて自分のパーティに合流していきました……


「やっぱ何かムカつくな。乱戦になったらこっそり殴っとくか?」

「止めておいたほうがいい。彼は3カウントの秀才。おそらく、レベルも10を超えていますよ。」


ちらりとレオンさんの方を見る……パーティの仲はいいのか、笑い合っているのが見えた……



道のりは3日間。何台も引かれる馬車を囲むように冒険者たちが何人もぞろぞろと歩いている……。

1日目には特に何もなく終わった。ご飯の支度をし、途中で何度かやり合ったドット鳥や、メー牛の解体なんかをしつつ、冒険者たちに配り分けている……

うちも少しは活躍したので、メー牛の美味しいお肉のシチューを堪能できました!星空の下でシチュー!冒険の醍醐味ですよね!


「しかし、一体あのレオンとかいう奴は何だったんだ!嫌味をいうだけ言って!正義ではないぞ!?」

「……俺は、そう思わない……」


ネロさんがぽそりと呟きました。何か彼の言葉に感じ取るものがあったのでしょうか……


「い、一応謝りに来てくれた……んですし、気にするのやめましょう?ね?」

「そうですね……せっかくの美味しいシチューに集中しましょう!」


私たちはその後も何度か夜番には立ったものの、概ねゆっくり過ごすことができました……



事件は、二日目に起こりました……どちらの街からも、最も距離の離れたあたりのポイント……前方からふた方向、後方からも……!?盗賊の一団が、待ち構えていました!


「隊列を維持しろ!荷を守れ!とにかく突破するぞ!魔法使いたちは、前へ!」


私も行こうとして……ふと、後ろをみました。

……見て、しまいました……

取り残された、幾人かの商人が、盗賊に囲まれているのを……!


「アルド、後ろは俺たちに任せろ!お前は前へ!」


ジオさんたちは、そう言って後ろへ駆けていきます。私も行こうとして……その時、二の腕をつかまれました!


「何してんだへなちょこ!とっとと隊列の前へ向かうぞ!」

「ですが……!後ろに取り残された人が居ます!」

「俺たちの任務は荷を守ることだ!わかっているのか!!!」

「……っ、それでも……」


命を奪う気持ち悪さ、人間との戦い。それら全部、前衛にいけばきっとほとんど感じない。

それに、彼の言っていることはどうしようもなく正しいのだ……

一瞬だけ、迷う。


(……無理だ。間に合わない)

(でも……)


脳裏に、あの頃の声がよぎる。


――才能ないやつが来る場所じゃない


(違う)


「私は、誰かを見捨ててなんて行けない!」


レオンさんの腕を振り払い、後方へ駆け出します。


「おいバカ、待て……!」


パーティの司令塔もリーダーも私だ!責任は全部私が取る!



「クッソ……数が多いっつーの!」

「叩いても叩いても出てくるなんて、反則じゃない〜!?」

「正義は……ここで倒れない!」

「皆さん!ヒールを!」


やはり皆、大変苦戦しているよう。

商人や子どもたちを庇って戦っています!

……周りには、やはり見捨てることができなかったのか、数組のパーティの姿が!

私も姿を隠して、詠唱を始めます。


「水よ、わが力を持って、目の前の敵を、凍りつかせよ!」


バキバキと一気に数人の盗賊の足が凍ります!


「アルド!?来たのか!」


嬉しそうなジオさんの声。


「だから来るって言ったでしょ〜!」

「アルドは正義だからな!」

「アルドさん、早くこちらに……!」


その瞬間、盗賊の一人が私に斬りかかろうとし……!


「風よ!切り裂け!」


2カウント!?一体誰が!?

後ろを振り向くと、ゼエゼエと息を切らして私を追ってきたらしきレオンさんが居ました。


「レオンさん……?どうして……」

「弱っちいやつが無理すんなって言っただろうが!!!」


2カウント……努力し続けた、天才のみが到達する、レベル20以上の証……

そんな、誰からも認められるような人が、どうして……


「下がって見てろ!この魔術師の塔一番の天才レオン様が活躍するところをな!」

「……いいえ、それはできません。私が弱いのなんてわかっています。それでも……見ているなんて、無理だ。」


私たちは、一瞬目を合わせて、同時に詠唱を始めます。


「水よ、わが力を持って……」

「風よ、切り裂け!」


広範囲に血が舞う。盗賊が怯む!ジオさんやミアさんが、エンツォさんを先頭に突破する!


「目の前の敵を、凍りつかせよ!」

「嵐よ、舞い散れ!」


……氷の嵐が盗賊たちを襲います……!

こんなふうに戦ったのは、初めてかもしれない。

……どうして、来てくれたんだろう?

エルナさんとネロさんは、逃げ遅れた人たちを逃がす方へ回っています!



そうして、他のパーティの冒険者や私たちは、なんとか盗賊を引き離し、のこった人たちを助け、商人たちの最後列に追いつくことができました……

私たちのパーティと……なぜかレオンさんも一緒に。

私はこっそり聞きました。


「あの……なんで、戻ってきてくれたんですか……?」

「お前、自分が原因って自覚、無いのかよ。」


はー……と、ため息を吐いてレオンさんが言います。


「元クラスメイトに死なれたら寝覚めが悪いだろ。それだけだ。……ああいう無茶、次こそ止めとけよ。」


そう言って、レオンさんは隊列の前の方に走っていってしまいました……

あの頃のことは、思い出すと苦しくなる……

けど、今日、それが……少しだけ、溶けたような気がしました……

声は、まだ消えない。

けれど――さっきほど、重くはなかった。


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