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雪女の子守り

「雪女!?私たちのパーティでは戦いの相性が悪すぎます!」

「それに……レベルもすごく高いんでしょう?」


今日も今日とて依頼を受けに来た、私、アルドとエルナさん。

ギルドの人に話しかけられたものの……

その内容に硬直します。


「あっ、違うのよ。戦ってほしいってわけじゃなくてね。1日子守りを頼みたいんですって!」


子守り……フェルくんのことが思い出されます。懐かしい。


「でも私、顔でよく子供には泣かれていて……」

「大丈夫ですよ!その子、まだ1歳の可愛い女の子だそうですから!」

「1歳ならアルドさんの顔でも泣かないかもしれませんね!」


……顔のことは、もういいです。


「それより雪女の里ですか……」


コート、新調しないとな……



雪女の里は、高い山の上にありました……

他の皆は元気いっぱい、私はふらふらしながら登ります……

ひええ寒さが身にこたえる!

そうしてたどり着いた依頼人の家で……


「貴方たちが娘の面倒を見てくれる冒険者ね?この子は雪乃。基本的には泣かない子だから、大丈夫だとは思うのですけれど……」


うわあ美人だ。

雪女って美人が多いって本当だったんだなぁ。

赤ちゃんも不思議そうにこちらを見あげている。

この子も大きくなったら美少女になるんだろうな……

私達は、そんな事を氷で出来た家の中で思った……

氷室の中ですか!?寒い!



そうしてお母さんは出かけていきました……

なんでも、父親の雪男さんに届け物があるんだとか……


「ふゆぅ……」


雪乃ちゃんがベビーサークルの中からこちらに手を伸ばします。

そっと指を差し出すと、きゅっと握られました。

冷たい肌だな。雪女ですからね。

その時。

バキッ!

私の指先が、凍りました…………

慌てて水で溶かす私。キャッキャと笑う雪乃ちゃん。

他の仲間達は、これからの苦労を悟ってドン引きです。


「さ、触っただけで凍っちゃうの〜!」

「さすが雪女だな……氷の威力が凄え。」

「これは……抱っこするだけでも大変なのではないか!?」

「………………」

「だ、大丈夫ですよ皆さん、雪乃ちゃんだってまだ赤ちゃん――」


……雪乃ちゃんを抱き上げたエルナさんが氷漬けになりました……


「水よ、わが力を持って、目の前の者に、癒しの水流を!」


慌てて魔法で溶かします。

……これ、どうしたらいいんですかね?



「きゃわ、きゃー!」


……雪乃ちゃんは、大変楽しそうです……

部屋は吹雪いていますが……

雪乃ちゃんに触れたら凍ってしまう!

近づきすぎないようにしながら私たちはおしくらまんじゅうをしています。

機嫌のいい高速ハイハイの赤ちゃんと、その側でおしくらまんじゅうしてる大人たち……

変な図だな……

その時、雪乃ちゃんがピタリと止まりました。


「まんま……」


そういえば!時間を確認するともう昼時!

雪乃ちゃんにご飯をあげなくてはなりません!

保存箱を開けると……

中には、ひんやりと冷え切ったおにぎりとバナナがありました……

これ、食べさせてもいいのかな……?

ネロさんがカットしたバナナを、そっと雪乃ちゃんに与えています。

続いておにぎりも……ネロさん、平気なのかな?

満腹になってプープー眠そうにうつらうつらし始めた雪乃ちゃんを抱いて、ネロさんはベビーサークルに雪乃ちゃんを戻します。そして……


「……エルナ、頼む……」


すっかり霜焼けになった両手をエルナさんに癒してもらっていました……

眠ってしまった雪乃ちゃんは、ただのとても可愛い赤ちゃんに見えました。

私たちも、何とか一息つきます。

……寒いので、全員で固まって毛布をかぶっていますが……


「うう……寒いのって辛えな……普段寒いときは、思いっきり体を動かせるのに……」

「ここで激しく動いたら!赤ちゃんが起きてしまうぞ!」

「エンツォさん、静かに、静かにお願いしますよ……」


私たちもお昼ゴハンを食べます……

すっかり冷えてしまっていましたけど……

ネロさんが"魔法瓶?"とか言う水筒からみんなに温かいお茶を配ってくれました……

ホッとする……

その時、雪乃ちゃんがカッと目を覚まします!

いきなり泣き始めました!よく眠っていたのに、何故!?


「う〜ん、これは……おしめと見た!」


ミアさんが言います。


「昔、村で赤ちゃんのお世話してたこともあるからね。ちゃっちゃとおしめ、変えちゃお!」

「そうですね……私も孤児院で、皆の世話をしてましたから……」


エルナさんとミアさんのおしめ変えを私たちは全員目をそらしました。

雪乃ちゃんだって女の子。失礼ですもんね。



おしめを替えた雪乃ちゃんはニコニコ。元気です。

……元気すぎて、私たちを追いかけ回し始めたんですけど!?

慌てて全員ベビーサークルから出ます。……

そうすると大泣き、大吹雪……

仕方がない。体も温まるし、雪乃ちゃんのご機嫌のためだ!

全員で雪乃ちゃん主催追いかけっこ、はじまります!

雪乃ちゃんの高速ハイハイ!

どうやらエンツォさんがまず狙われているようで、バタバタと逃げ回ります!

ですが狭いベビーサークル内、あっという間に捕まって……氷漬け!


「水よ、わが力を持って、目の前の者に、癒しの水流を!」


なんとか水で溶かします。その間にも雪乃ちゃんはミアさんとエルナさんを氷漬けにしていました!


「水よ、わが力を持って、目の前の者に――」


そこで、雪乃ちゃんが私にタッチ。

氷像と化した私は、意識が遠くなり……

視界の端にネロさんが映ります。

凄まじい勢いで雪乃ちゃんを避け続けるネロさん……さすがシーフ……

そして、私の意識は落ちました。



「本当にすみません。雪乃がご迷惑をかけて……」

帰ってきた雪乃ちゃんのお母さんに氷像化を解いてもらいました。

雪乃ちゃんのお母さんが言うには、最後までネロさんが粘って雪乃ちゃんの相手をし続けていたらしいです。

あちこちの霜焼けをエルナさんに直してもらう私たち……



雪乃ちゃんとお母さんに見送られ、雪女の里をあとにする私たち。


「赤ん坊の世話って、大変なんだな……」


俺、できるかな。未来の不安を心配するジオさん。


「やだージオったら!まだ先の話でしょ!!」


背中をミアさんに叩かれて3メートル吹っ飛びました。


「ネロ……守れなくて済まない……」

「エンツォは守ってくれた……だから俺は最後まで残れた…………」


この二人はいつも通りですね。


「それにしても……赤ちゃんの世話って、本当に大変なんですね……1日でこれとは……毎日となると……」

「そうですよ?アルドさんもお母さんに感謝しないと!」


母親か……

もうずいぶん見ていないその顔を思い出しながら、私たちは夕暮れの山道を下っていきました……


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