歌う洞窟の宝物
「祖先の海賊が残した宝物を探してください……?」
今日も今日とて不思議な依頼を発見してしまいました。アルドです。
エルナさんも興味津々と言ったふうに覗き込んできます。
「海賊のお宝探し……いかにも海辺の町、って感じですね!やってみましょうよ、アルドさん!」
エルナさんも、ミアさんに影響されてか最近元気になったなあ。良いことだ。
「私の曽祖父の祖父が海賊だったらしくてですね……。ひとつのヒントだけ残して、宝物を隠した、って言ったらしいんですよ。」
誰も本気にせずに探さなかったんですけどね。
依頼人は、力なく笑った。
「でも……家業の失敗で、借金しちゃって……今は何にでも縋りたい気分なんです。」
冒険者さん達、おねがいします。
深々と頭を下げられて、私達は少し困った。
「先に誰かに取られていたり、大したことのない宝かもしれませんよ?」
「それでも……かけてみたいんです。この元祖、海の町の和菓子屋を潰さないためにも!」
海の町で和菓子屋ってミスマッチだなー……私はそう思った。
「歌う洞窟の、声に誘われ……星の下に集いし宝……これが、ご先祖様の残されたヒントなんですか?」
「ええ。ぜひお願いします。」
和菓子屋の店主さんはそう言って店に戻っていってしまった……
「依頼解決したら和菓子食べ放題だってな!頑張ろうぜ、アルド!!」
「ジオさんにやられたらどんなお宝を見つけても潰れますから止めといてあげましょうね。」
「ほーんと、ジオったら燃費が悪いんだから!」
「でも……和菓子がいただけるのは嬉しいです……!」
「ネロ……和菓子のレパートリーとか、増やせるか?」
「…………(こくこく)」
みんな食べ放題に夢中です。いえ私も甘いもの大好きとして興味はあるのですが……
まずは依頼のことを考えましょうよ!
まず私達は、歌う洞窟について、聞き込みを始めた。恐らくこの近くにあるのでしょう……
依頼人の方は、先祖代々、この土地に住んでいると言っていましたし!
全員で分かれて聞き込みます……
「夜に音の鳴る方向があるわ。」
「兄ちゃん新聞買うてってや。今なら洗剤も付けるで」
「夕方になると潮が引いて現れる洞窟なら知っている。」
……また変な情報が混じっていますが、大体みんなこんな感じでした。
どうやら、風のなる方角と洞窟は同じ方向のようです……
「ハズレかもしれませんが……まあ、行ってみましょうか……」
私達は気楽に夕方、洞窟の方向へ歩を進めました……
そうして、潮の引く時間。
何処かから、歌うような、すすり泣くような、そんな風の音が聞こえてきます。
「な、なかなか雰囲気ありますね……」
「ちょっと音、怖いです……」
「大丈夫エルナちゃん!私が幽霊なんかいたらぶっ飛ばすから!」
「ミア……幽霊に物理って効くのか?」
「何が出ても正義の心で対峙すれば!何も怖いことはない!」
「………………」
音は、潮が引いた後の洞窟から響いてきます……
これが……歌う洞窟。
時間は夕暮れ。
私達はその音のする方向へ、歩みを進めました。
洞窟は、狭い上に湿ってヌメって大変でした。
「なんか今、ぬるってしました!ピュリファイ!ピュリファイ!」
「落ち着けエルナ!その程度じゃ死なねえ!」
音の鳴る方へ……鳴る方へ……
………………
行き着いた先は、行き止まりでした。
「ここでは星も何も見えないぞ!」
「ハズレだったってこと!?そんなあ!」
ミアさんが腕を振り上げ……洞窟の壁にぶち当たり……
「「「「「「あっ」」」」」」
ガラガラと洞窟の壁は壊れました……
風の音も止んでいます。
どうやらこの壁が音を出していたみたいですけど……?
壊れた壁の向こうに、美しい砂浜がありました。
水平線がよく見える……夕暮れと、星が輝く時間……
この時間だけ見られる美しい景色……
「……これが、宝物?」
星の下に集いし宝……もしかしたら、和菓子屋さんのご先祖様も、仲間と共に星を見る時間が宝物だと思っていたのかもしれませんね……
海賊のロマンか……そんな事を考えていた時。
「アルド!星型の石の下を掘ったら、宝箱あったぜ!」
……声に出さなくてよかった。危ないところでした。
「さて……宝箱の中身は……」
私達はごくりと息を呑み、蓋に手をかけました……中には……
「古い海賊旗と……日記帳?」
どうやら、とても大切にしていたもののようです。
けれど、これでは結局和菓子屋さんは救えません……
そんなふうに、がっかりしたその時ーー
「この箱、売れるぞ。金で出来てる。」
エンツォさんがすごいことを言い出しました。
隣でネロさんもこくこくと頷いています。
「い、依頼人のもとへ届けましょう!」
私たちが欲望に負ける前に!
そうして、借金を何とか返し終わった和菓子屋さんでーー
ジオさんは大食いし、ミアさんとエルナさんは仲良く食べ、なぜかネロさんは作る側に回されていたのでした。
本当になぜ……?
柏餅を食べつつ、エンツォさんに話しかけます。
「今回は……エンツォさんのおかげで助かりました!」
「ああ、正義は勝つとも!」
海賊旗と日記も丁重に受け取られ、和菓子屋さんは大変感謝してくれました。
少しだけ、ロマンのある依頼でした……




