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朝市と、もう一つの道

「わあ……凄い!ミアさん、このフルーツ星みたいな形をしていますよ!」

「エルナちゃん!あっちにあったフルーツの試食、すごーい甘かった!」


フルーツ!!!

そう聞いては、私――アルドの目が光らないわけがありません。


「ミアさん。そのフルーツの試食、どっちにありました?」

「ここからずっと正面に……っていうか、アルドさんフルーツ好きだったんだね!」

「アルドさんは意外と甘いもの好きですよ?ね?」

「似合わないのはわかっていますが……フルーツには目がなくて。」


私たちは3人連れ立ってフルーツの試食へ向かいました……



今日はここ、商業都市の朝市に来ています!

所狭しと並べられた、フルーツたち……

エンツォさんとネロさんとジオさんは輸入品の方を見に行ったようです。

魚の卸売場なんかもありましたが……

私たちは毎日エンツォさんとジオさんが海で泳ぐついでに持ってきてくれるので、あまり関係ないですね。


「見てくださいよ!このトゲトゲのフルーツ!食べられるのかな……」

「アルドさんたらテンション高ーい!」

「好きなもののことに関しては、うちのパーティみんなテンション高くなりがちですよね……」


だってこんなに種類があるんですよ!?

たくさん試食して、買って帰らないと勿体ない!



そして……フルーツ試食会を回った私たちは……


「あのトゲトゲのフルーツ、匂いすごかったねー!」

「でも味は意外といけましたよ?」

「アルドさん迷いなく食べるんですもん……びっくりしちゃいました。」


フルーツ好きの名を持つ私が!そこで躊躇ってどうするんですか!?


「でも、安くたくさん買えましたし、帰ったらネロさんにこの桃でピーチパイでも……」


そこへ、エルナさんにぶつかる失礼な男が!


「悪いなねーちゃん!」

「大丈夫ですか?エルナさん。」

「失礼なやつ!あのシマシマシャツ、覚えたからねー!」


ぺたんと座り込むエルナさん、しかし……


「あれ……?あれ?あれ?」


何か、様子がおかしい?


「わ、私のおサイフ、なくなっちゃいました!」

中にギルドカード、入ってるんですよ!


……なんてこった!?まさか……


「待てーッ!!!……あんたたち、シマシマシャツの男を見なかったか!?俺の財布がスられちまって……」


私たちは、呆然としました。

もしかしなくても……あの男!


「おいかけよう!エルナちゃんの冒険者カード、取り戻さなきゃ!」

「あと帰りに買って帰るプリン代も入ってるんですー!」


……なんとなく空気が締まらないのは、気のせいじゃないですよね?



慌ててエンツォさんとネロさんとジオさんを探し出して、事情を説明します……!

……ジオさん?その両手に持った謎のポーズのサボテン、何ですか?


「俺、植物育てるの好きだから……珍しくて……」


のんびりしてる場合ですか!

しかし、そこへネロさんが私たちに、待ったをかけます。


「……いったん買い物の荷物を宿に置きに行こう。……手はある。心配するな。」

へほがひふはら(ネロが言うなら)まひがいなひな(間違いないな)!」


……その言葉には、割と同意なんですけど、謎の串焼きを食べながら言わないでくださいよ……


「クジラらしいぞ!意外とイケる!」


聞いてませんけど!?



そして、宿に帰ってきた私たちは、とりあえず荷物を置いてラウンジへ集まりました。


「それで、ネロさん……手というのは。」

「………俺以外の5人は、ギルドでカード紛失手続きをしてくれ。魔法でどのあたりにあるか追跡できるはずだ。」


えっ……カードにそんな機能が!?


「ネロは?どこへ行くんだ?」


ネロさんはついて行きたそうなエンツォさんをそっと手で制しました。


「蛇の道は蛇。虎穴に入らずんば虎子を得ず。……シーフギルドへ、行ってくる。」


そんなものこの街にあったんですか!

そうして、私たちは二手に分かれてギルドへ向かいました……

カードの紛失手続き……本当に地図の上で光が動いている!

そして……ゴチャついた住宅街の、ひとつの民家の上で止まりました……ここが、スリ犯の家……?

その時、ガランガランと音を立てて、ネロさんと……

知らない男がギルドに入ってきました。


「…………場所の特定は?」

「今できたところです……あの、その方……」

「…………聞かなくていい。」


そうして男は、地図の場所を確認し、影のように静かに去っていきました……

足音もしなかった……


「宿のラウンジで待っていてくれ。……すぐに行く。」


ネロさんは男の後を追っていったようでした……

置いていかれた私たちは、宿のラウンジで待つしかありません……



そして……宿のラウンジで待っている間、私たちは他愛もない話をしていました。


「エンツォは、ああいうネロを見ても正義じゃねぇって騒がないのか?」

「ああ。ネロのことは……俺が一番よく知っている。それに、ネロの分も俺が正義をなせばいい!」


エンツォさんは今日も元気です。


「せっかくだから、ネロが帰ってくるまで果物でも切って待ってようか?」

「み、ミアさんは休んでてください。わ、私がやりますし……」


……女性陣2人は何か怖い話をしている。

というか、今日はネロさんのピーチパイの予定なんですけど!?

そうして……しばらく待った後、宿にネロさんが帰ってきました。

……キズのついた財布。

エルナさんに差し出します。


「中身……確認しておけ。」

「ありがとうございます!ネロさん!中身無事です!」


エルナさんはそう言って微笑みました。


「買い物も途中になっちゃったし……エルナちゃん!今度は輸入品の方を見に行こうよ!新しいおサイフ探しに行こう!」

「いいですね!ミアさん!」


女性陣はすっかり来週の朝市の話で夢中。


「ネロ……お疲れ様だったな!ネロのおかげで助かった!」

「…………大したことじゃない。けど、少し疲れた……」


……何があったのかは、聞かないことにしました。

……今日のピーチパイは、自分で焼くことにしましょう。

たまにはネロさんにもお休みが必要ですよね。


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