寄せ集めの六人、漕ぎ出す
「アルド!依頼を取ってきたぞ!」
「エンツォさん!またですか……」
貴方の取ってきた依頼、やたらと面倒事に巻き込まれるんですよね……
オーガの子供……そうめん大会……
今回は一体何なのだろう……
「カヌーの……ボートレース?」
「ああ!6人1組でな……つい取ってきてしまった!優勝賞金が凄いんだ!」
本当だ。これは結構……かなり、美味しい……
「けど、このもやしな私や、華奢なエルナさんを入れて勝てるかどうか……」
「そのための6人組だ!最終的にはミアに任せれば何とかなる!」
……なんでもかんでもミアさんに頼るの止めましょうよ……
とりあえず……ぶっつけ本番とか無茶にも程があるので、私たちはレースの本番会場、海の河口へ行ってみました。
ここから川へ上っていくんだ。へぇー……
「妨害ありの何でもレースだからな!きっとすごいことになるぞ!」
「待ってください私聞いてませんけど!?」
「チラシに書いてあったぞ!」
チラシを懐から取り出してよーく見る。
……武器や魔法での妨害もありです!?
やっぱりエンツォさんのとってきた依頼は変な依頼ばかりだ!!!
「わ、私……大丈夫でしょうか……?」
エルナさんは不安げだ。
「当日は全員でエルナさんを守ります。エルナさんは傷の回復に集中して下さい。」
全員が神妙に頷いた。……エンツォさん、あなたのせいですよ!?
とりあえず……全員でカヌーを借りて、基本的な動きを確認します。
左へ……右へ……回転……そしてゴールまで行ってみることにしました。
ゆっくりゆっくり……だんだん早く……そして……爆速に!?
「ミア漕ぎすぎだ!」
「えっ?もっといけるよ?レースでしょ?」
……大変、心強いです。
「まあ、アルドがいいっていうなら……俺も本気出すか!うりゃっ!」
「正義は負けない!」
……船のエンジンは、この3人に任せて良さそうですね。
と、その時ネロさんが叫びました。
「行く先岩だ!左に避けろ!」
慌てて全員で左に避けます。……そして、ゴールまで爆速で進むカヌー……
「割とスピード出たね!」
「もしかして行けるんじゃないか?」
「正義の勝利を飾ろう!」
3人は、盛り上がっています。……私は考えていました。
「エルナさんが回復、私が魔法、ネロさんが全体を見て……エンジンは3人に任せるのもありですね……」
「…………分かった。」
「せ、せいいっぱい頑張ります!」
そうして私たちは、その日いっぱいカヌーの練習をして、宿に戻りました……
そして、カヌー大会の当日……
港町はカラッと晴れ上がっていました。
この街、ほとんど晴れてるんですよね……
いえ、雨が降るときは一気に来るんですけど。
そしてカヌー大会の会場……うわっ、凄い……!これ全部カヌーか!
ずらりと並んでいて、河口のこちらからカヌーを伝って向こう岸まで行けそうだ。
私たちはカヌーを借りて、水に浮かべます……全員乗り込んで、準備万端!
「さあ、今年も始まりましたカヌーレース大会!今回も大勢の皆様にご参加いただいています!ありがとうございます!何でもありのこのレース!救護班は川べりに待機しているので、ケガをされた方は申し出てください!」
……本当に危険なレースなんだな……
けど、こちらにはエルナさんがいる!
「それでは……スタート!」
一斉に飛び出すカヌー。そして飛び交う矢やナイフや魔法。こちらにも飛んでくる、しかし……!
カァン!
飛んでくる矢を、ネロさんが矢ではじき返した……?
「……装備、買い換えた。」
見せられたのは、小型のボウガン!
いったい、いつの間に!?
……なんとなく得意げに見えるのは気の所為でしょうか?
そして私たちは爆速で漕ぎ始めました!ミアさん、ありがとうございます!
「前方にカヌー、右だ。そちらのほうが、数が少ない!」
ネロさんのナビに従ってカヌーはぐんぐん進みます。
私も……左隣のカヌーに攻撃を仕掛けます!
凍り付かせて、漕げなくしてしまいましょう!
そこへ後ろから炎が!ネロさん被弾!
「すぐ回復します!」
こういう時エルナさんがいてくれたから助かるんですよね。
今だって、居なければ川べりに寄らなくてはいけないところだった……
このまま押し切れるのでは?私たちが期待した、その時!
「……後ろから、来る!すごいスピードだ!」
櫂があまりに綺麗に揃っている、人と船が一体のようだ……!
「攻撃など野蛮!我ら、海竜の鱗!スピードで、勝負!」
「いいじゃん!アルドさん!たまには正々堂々!」
「負けないぜ!」
「その提案、正義的……お受けしよう!」
……みんなノリノリだあ……
でも、たまにはいいか、こういうのも!
寄せ集めの6人組vs海竜の鱗!
正々堂々、勝負!
ミアさん、エンツォさん、ジオさんは強く漕ぎ出します!
海竜の鱗も……スイスイと岩を避けていく!
「………左!………また左!次は右だ!」
こちらもネロさんの指示に従い、ぐんぐんと距離を伸ばす!
……その時、ふと、違和感を感じました。
………魔術の気配……?
気づいた時にはこちらに、土が飛んできて……
「水よ、わが力を持って、目の前の岩を、砕け!」
瞬間、用意していた魔法を発動させる!
カヌーの間で、岩は砕け散った。
そして……
ドスドスドスドスッ!
海竜の鱗のカヌーに、ネロさんのボウガンの矢が突き刺さる!
「…………何が正々堂々だ…………」
あっ、ネロさん怒ってる?
カヌーに穴を空けて、海竜の鱗が慌てているうちに、私たちはぐんぐんと距離を空ける!
そして……ゴール!
……残念ながら、私たちよりもずっと先にゴールしていたらしい毎年の優勝候補の方はいらっしゃったのですが、3位まで賞金は頂けるようで、2位の私たちにも賞金は出ました!やった!
エルナさんはカヌーの上で炎を受けたネロさんの本格的な治療をしています。
もちろんエンツォさんも一緒に。
ギルドで賞金を受け取り、宿に帰ります。
今日はみんなとの一体感を感じられた日だった……
みんなもそう思っているのか、帰り道は和やかです。
夕日が私たちを照らします。
今日も、少しだけ強くなれた気がする。




