南の大陸の、いつも通り
眩しい太陽、からっとした潮風!
北の大陸とはまるで別の世界みたいだ。
私、アルドは、うーんと自室で伸びをしました。
今日は初めて南の大陸のギルドへみんなで行く日。少し緊張します。
コンコン、というノックの音に、扉を開けるとそこにはすでに支度を終えたエルナさんが立っていました。
「お寝坊さんですね、アルドさんったら。もう皆さん、宿のラウンジに集まってますよ!」
……私は慌てて上着を着込んだ……
港町の宿は豪華だ。
一番安い宿を探しても、あの街の宿屋とはだいぶレベルが違う……
あの街のことをふと思い出す……
芋煮会……乙女コンテスト……そうめん大会……
ろくなものを思い出せませんでした。
とにかく、割と豪華なラウンジに、他のパーティの冒険者たちもいましたが……
みんなもそのなかに混じっています!
「おはようございます、遅くなりました!」
「リーダーが活動初日から遅刻かぁ〜?」
「遅刻は正義ではないぞ!?」
ワイワイと連れ立って宿から外に出ます。
照りつける太陽、賑やかで活気のある港町!
ここが、しばらく私たちの拠点となる新しい街です。
ギルドも大きくて立派でした……
入る時にカランカランと大きなベルの音が鳴って、ビクリとしてしまいます。
うーん、いろんなところが違うんだなぁ。
ギルドの受付に6人揃ってカードを提出します。
「ええと……北の大陸から来られたのね?レベル3が3人、レベル2が2人、レベル1が1人、と。向こうと依頼は同じ受け方ですから、壁に掲載してある依頼の中で、気になったものは持ってきて認可のハンコを受けてくださいね。」
簡単な説明も受け、ワイバーンの卵の依頼にも終了ハンコをもらい、私たちは思い思いに依頼を見て回りました……
この街の依頼は、海辺のトラブルが多いんだな……
「アルド!これなんか正義じゃないか!?」
エンツォさんが渚のゴミ拾いの依頼を取ってきました……
私たちより低レベルの人のために残しておきましょう、ね?
「アルドさん、アルドさん!これなんかどう?」
……魚釣りの依頼……?
マーマー魚一匹につき……300ゼム!
……ただし、たちの悪いマーマンが出た場合は自分で対処すること……?
「マーマン……ですか……。」
「腕試しにはもってこいじゃねぇか?」
「マーマー魚以外はもらってもいいって書いてあるぞ!ネロに料理してもらおう!」
「…………頑張る。」
というわけで、私たちは全員で釣り竿を手に、釣りをする羽目になりました……
「うおおおマーマー魚かかれ!おいしい魚でもいい!正義だ!」
「……エンツォ、魚はうるさいと寄ってこない……」
「……ごめんなさい……」
釣りを始めて1時間……最近人気のマーマー魚は、なかなか引っかかりません。
「あわわ、あわわわわ……」
エルナさんは小型の魚を大量に釣っています……運がいいのか悪いのか?
「むっ……この感じ、きたね……どっせええい!!!」
バシャアアン!見事、ミアさんが初めてのマーマー魚を一本釣り!さすが!
「お?この感覚……俺も来たみたいだ!おりゃあっ!」
マーマー魚2匹目!いい調子です!
……しかし、そこへ低い声が掛けられました……
「おんしら……ワシのナワバリで何しとるんじゃ……?」
振り返ると……マーマン!?これが依頼書に書かれてた厄介なマーマンか!
「ここを使いたければマーマー魚3匹は出してもらわんと割に合わんのう……?」
無茶な欲求だ!
「すみません……小魚ならいっぱいあげられるんですけど……!」
「こんな雑魚いるかい!マーマー魚出さんかオラァ!」
……戦闘は、避けられない、か!
「ミアさん!まずはみんなを庇って!ネロさんとエルナさんは後ろへ、ジオさんとエンツォさんは戦いの準備を!」
言った直後に、マーマンの爪攻撃がミアさんの鉄の大盾に突き刺さります!
ガアアアン!
それはそれはいい音をさせて、マーマンはそのままミアさんの盾に押し飛ばされました!
「やるやんけあんちゃんたち!」
「水よ――!」
カウント1、ジオさんとエンツォさんも剣を抜き、臨戦態勢に入りました!
「…………マーマンは鱗で直接攻撃がほぼ効かない……!やるならアルドの魔法か、ミアで叩き潰せ!」
ネロさんの指摘が飛びます!
「そんな簡単にやられるかい!そおらっ!」
マーマンの距離を取った水弾!
ミアさんの盾で庇われましたが、バチバチとすごい音がしました……
当たっていたら危なかった……
「わが力を持って――!」
カウントを刻む!
「つまり刃物じゃなくて鈍器で殴りゃ良いんだな!?うりゃあっ!」
……ジオさんがそこら辺に置いてあった角材で戦い始めました……強くなったなぁ……ジオさんも。
「ならば俺は……鱗の隙間を突く!正義ッ!!!」
謎の掛け声とともにエンツォさんの攻撃!血が飛び散り、マーマンは怒り狂った!
「何さらすんじゃゴラァ!!!」
水弾水弾水弾!全て私を狙っています……が!
バシバシィっ!
全て後ろから飛んでくるナイフと相殺している……
ネロさん、命中精度、凄い……!
「目の前の敵を――!」
もう一息!あと1カウントだ!
「おんどりゃ〇〇ぞ!!!」
ああっ、ついにマーマンがキレて汚い言葉を……!ともかく魔法の完成!
これで……終われッ!
「凍りつかせよ!」
バキバキバキッ!
マーマンはあっという間に氷像になって……
「……これどうしよ?釣りの邪魔だね?」
「ミアさん……他に言い方とか……」
「邪魔だから思いっきり遠くに投げちゃおう!そりゃああああ!!!」
全力のミアさんに投げ飛ばされたマーマンの氷像は、遠くの空に消えて、見えなくなりました……
まあ、この暖かさの海ですから、そのうち氷も溶けるでしょう……
私たちは釣りを再開しました……
そうして、結局計5匹のマーマー魚を釣った私たちは、1500ゼムを手に入れ宿に戻りました……
先払いとして、月ごとの部屋の貸し出しを頼み、とりあえずの仮宿を手に入れます。
それにしても……結構連携なんかも上手くなってきた私たちだけれど。
南の大陸でも、やる事は変わらないようです。
月を見上げて、そう思いました。




