寄せ集めの6人、南へ
「エンツォ様ではありませんか……!?」
背後から、聞き覚えのない声が聞こえた。
急にかけられた声。知った名前の響きに、私たちは振り返ります。
「ああ、やっぱりエンツォ様ではないですか!覚えておいでですか!?乳母のマーヤです!」
……エンツォさんは、苦々しい顔をしました……
「済まない皆!正義的ではないと分かっているものの、パーティを抜けさせてほしい……ネロと一緒に!」
エンツォさんが急に言いだしました。
どうしたんですか一体!?
「もしかして……今日会ったマーヤさんという方が原因ですか……?」
エンツォさんは、苦い顔で頷きました。
「乳母がいる、って……もしかして……エンツォさん、偉い人だったり?」
エルナさんが興奮して聞きます。
しかしエンツォさんは、首を振って何も答えませんでした。
「勝手だとは分かっている!だが、俺は故郷を捨てた身。追っ手が来る前に、逃げなくては……」
「…………俺も、一緒だ。」
二人はそう言えば芋煮会の前からずっと組んでいるのでしたっけ……
「そんな!エンツォ、急すぎるよ!」
「何も言わずに行くってのか!?」
「済まない……済まない……」
皆、エンツォさんとの別れを惜しむよう。
私はふと思いつきました。
「それならこういうのはどうでしょう?ほとぼりが冷めるまで、別の街へ、このパーティ全員で逃げちゃうんですよ!」
私、アルドはとある提案をしました。
「ジャーン!迷ってたんですけど、一応と思ってこの依頼、取っておいたんです!」
「「「南の大陸までワイバーンの卵を運ぶ依頼……?」」」
「そうです!さすがに南の大陸に半年もいればほとぼりも冷めるでしょう!いい考えだと思いませんか?」
「私は賛成!南の大陸!すごい商業都市だって聞いたことあるもん!行ってみたい!」
「俺も賛成だぜ!ミアが賛成なら何も文句はない!それに……なんだ、お前らと離れるのも、居心地悪いからな!」
ジオさんとミアさんは乗り気なよう。あとは……
「わ、私も……ついて行っていいんですか?」
「勿論ですよ、頼りにしてます、副リーダー!」
がやがやと宿のラウンジで話していると、宿のオヤジさんがやってきて、小声で言いました……
「おい、エンツォ……お前、何かやったのか?探されてるぞ?知らないって言っといたが……」
……私たちは、急いで行動に移ることにしました。
……のんびりしてる時間はなさそうです。
私たちはすぐに動きます。
私はギルドで認可のハンコを、ジオさんは南の港町までの定期便の切符を、それぞれ用意します。
……そして……
「今度こそ、いやがらないよね〜?」
「頑張ります!任せてください!」
女性陣2人はエンツォさんとネロさんを変装……
というかまた女装させるようです。
逃げるときに、バレては敵わない……
宿の娘さんはしばらくの分の料理を作ってくれるそうです。
何ともありがたい……
「そのかわり、こっちに戻ってきたらまたこの宿を使えよ?こちとら立地が悪いんだ。閑古鳥が鳴いてるぜ。」
オヤジさんはそう言って笑います。
私たちは行動を始めました……
宿の外に出て、ギルドで認可のハンコを貰います。
そしてギルドを出て暫くして――
「本当にエンツォ様がこんな街のギルドにいるのか?」
「目撃証言があるそうだからな……行ってみないと分からない……」
良かったー!ギルドですれ違わなくて!!!
そうして慌てて宿へと帰り、美女となったネロさんと、……ちょっとごつめの村娘になったエンツォさんを囲むようにして、私たちは定期便乗り場へ急ぎます……
もちろんワイバーンの卵も箱に入れて。
なんとか怪しまれずに定期便乗り場まで来ることができました……
この街とも、しばらくお別れです……
「……済まない、アルド……俺のせいで……」
「………………」
「良いんですよ、エン……エリィさん……ネリネさん……」
呼び間違えそうになった偽名を呼びます。
危ない……今ので終わっていたかもしれない……。
「私たちは冒険者です。……たまには広い世界でも見にいきましょうよ!」
まずは南の港町まで、出発です!
そうして、私たちは何事もなく港町までつき、南の大陸への船に乗りました……
エンツォさんもネロさんも、もう女装は解いて、スッキリした顔をしています。
南の大陸はどんなところなんでしょう?どんな敵や依頼があるのかな?
たしかギルドカードは全国共通だったはず……
そんな事を考えながら、海風に髪をなびかせます。
……行く先は、潮の香りがしました。




