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筋肉に惚れるってなんだよ

「皆さん!助けてください!なんかすごい人に惚れられてしまいました!」


アルドさんが急に外から宿に飛び込んできました。


「アルド……寝言は寝て言うもんだぜ!」


ジオさんがアルドさんの肩を叩きました……何気に凄いこと言ってませんか!?

私エルナは、心のなかでツッコみました。

アルドさんだって冷酷冷笑参謀系顔だけど、イケメンだし中身は優しい人です!

ぎゃっぷもえ?って言うんだってミアさんに聞きました!

モテたっておかしくないはずです!

そこへ……宿に……凄い人が現れました……


「君には可能性を感じる……僕と一緒にボディビルダーを目指さないか!」


上半身裸。黒い肌につやつやとした質感。


「アルドさんがやったら事故ですよ!!!」


私は思いっきり叫びました。


「む?君は女の子……?女子部か……隣のキャサリンが女子部を担当していたな……」

「勝手に話を進めないでください!というか……あなた誰なんですか!」


アルドさんはジオさんの後ろに隠れて怯えています……

というか、私も巻き込まれかけてませんか?


「僕はボディビルダーのロナウド!ひょろ長い人を、ムキムキマッチョに鍛え上げるのが趣味なんだ!」

「迷惑!!!」


アルドさんが声を上げました。


「君は鍛え上げればきっと今とは違う……素晴らしい筋肉に育つだろう!君の筋肉に惚れた!僕とトレーニングをしてほしい!!!」


……筋肉にプロポーズを始めました……思った以上に変な人だ……


「ほら!このジオさんなんかいい筋肉してますよ!」


アルドさんは必死にジオさんを押し出してアピールしていますが……


「……僕は完成している筋肉には興味を惹かれないんだ……」

「なんで俺が振られたみたいになってるんだよ?」


ジオさんは何気にショックを受けているようです……

その時でした……外から呑気に、


「ただいま〜」


と帰ってきたエンツォさんとネロさん……

宿の中を見て、硬直したネロさん、そしてネロさんを抱えてエンツォさんは扉をバン!と閉めました。

……エンツォさん、もしかして……逃げたんですか?

正義はどうなったんですか?


「ふうむ……今の彼も鍛えればよい筋肉に育ちそうだったが……」

「や、止めてください!アルドさんとネロさんがムキムキマッチョになるなんて……乙女として許せません!」


顔と体の違和感がものすごいことになってしまいます!


「エルナさん……」


アルドさんがキラキラした目で私を見ています……

……あんまり、期待しないでくださいね……?

このロナウドさん?異様にキャラが濃いんですもん……

今だってポージングを繰り返しているし……

そこへミアさんが部屋からやって来ました。


「今日のおやつはシュークリーム〜……あれ?ネロとエンツォは?」

「むっ……!?君は、パッと見は筋肉がないように見えて、かなりの力があると見た……!」

「……エルナちゃん……この人だあれ?」


……私は、今までのことを話しました……


「ロナウドさん、だっけ?アルドさん嫌がってるみたいだよ?」


アルドさんはジオさんの後ろでブンブン首を縦に振っています。

今度はミアさんに希望を見出したのでしょうか……


「むう!確かに筋肉的に紳士ではなかったな……それでは、まずは筋肉的にジョギングから……」

「それ、お友達から、的な言い回しなんですか……?」


もちろん!と答えて筋肉をピクピクさせているロナウドさん……

お使いに行ってただけなのに、今日はアルドさんの厄日なのでしょうか?


「じゃあ……こういうの、どう?私が腕相撲で勝ったら、アルドさんに手を出さない!」


ミアさんがビシッとロナウドさんに指を突きつけました!


「ふむ……良いだろう。一対一の勝負というわけだな!勝てば、僕はモヤシな彼の筋肉を育てさせてもらうぞ!」


また謎のポージング……

そうして私たちは、全員で机を囲み、ミアさんとロナウドさんの腕相撲対決を見守ることになったのです……


「で、では……いきますよ!」


二人の腕にぐっと力が入ったのがわかりました。

私はそっと二人の組んだ手の上に手のひらを置き、


「レディー……ファイト!」


手をぱっと外しました!その途端、ものすごい圧が机にかかります!

唸る筋肉!けれどミアさんも負けてはいない!

2人は押しつ押されつしつつも、均衡を保ち……

バキィッ!!!

……先に机が音を上げました。

思いっきり割れてしまった机……


「……机の敗北、ですね……」


私は力ない声でそう言いました。弁償……いくらになるんだろう?


「ふむ……よい勝負だった……僕の未熟さを教えられた……。他人を鍛える前に、まずは自分をもっと鍛えるところから、ということだな……」


ロナウドさんは、何か勝手に納得を始めました……


「うむ!今戦った、君の名は!?」

「ミアだよ!ロナウドさん!」

「ミア嬢……覚えておこう。僕の筋肉がさらに仕上がったら、また君と戦いたいものだ……!」


そう言ってロナウドさんは帰っていきました……

結局なんだったのかしら?


「ミアさん……本当に、ありがとうございました……」


アルドさんの体がマッチョにならなくて良かったです!私はしみじみそう思いました。



そうしてその後、帰ってきたネロさんとエンツォさんに机の修理を任せて、私たちはお茶を楽しみました。


「安心しました、ロナウドさんが紳士で……」

「外で追いかけ回されたときは本当に怖かったんですよ……」


アルドさんが体を震わせます。


「なんか俺は……振られたみたいになったのがショックだったぜ……」


ジオさんはずっと呆然としてましたもんね……


「ジオったら……私がいるだけじゃ駄目?」

「何も駄目じゃない。」


……また二人の世界に入ってしまいました。

でも今回、この二人は迷惑かけられた側だからいいです。

問題は……


「俺は……正義を捨ててしまった……!」

「………………」


逃げたあの二人です。机、綺麗に直してくださいね!


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