ロープ一本、命綱。
「ジオさん、こんなところで書き物ですか?どうしたんです?」
「ん?ああ、アルド……今月の食費がなー……」
「実入りの良さそうな依頼、探してきましょうか?」
「頼めるか?うーん、豆苗は沢山育ててるんだがなぁ。」
月末はいつもジオさんは大変そうです。
笑いながら、私はエルナさんとギルドに行くことにしました。
「うーん、一番報酬が高くて、ギリギリ私たちでも受けられそうな依頼……」
「アルドさん!これなんかどうですか?賄い付きですって!」
「賄い付きは良いですね!……修理中の橋の、護衛依頼……?」
また変わった依頼です。
まあ、橋を修理してる途中って、動きにくいですからね……
急に魔物に襲いかかってこられてロープを切られる、なんて地獄です。
「ジオさんのエンゲル係数も少しは抑えられそうですし、いいですね、レベルも丁度いい!」
私とエルナさんはこの依頼に決めて、ギルドの受付に認可のハンコをもらいに行きました……
「賄い付き!?マジで!?出費が抑えられるぜ!」
「ネロの料理がしばらく食べられないのは残念だが、橋を直すのも正義!だものな………」
「期間は3日間、かあ。ジオは自分で食べる分は追加で持ってかなきゃ、駄目よ?」
「分かってるよ……こんなときは大食いなこの体が恨めしいぜ……」
「………他人の料理……学ぶことがあるな……」
良かった!皆この依頼に乗り気のようです!
「近くに……というか、真下に川がありますから、飲水の心配もしなくてよさそうですね。」
「いえ、飲む前には私がピュリファイかけます!かけさせてください!」
私はうっかり笑いました。こんなところでも出るんだなぁ……
エルナさんの潔癖気味……
「とりあえず、3日間の準備を皆すること!あと、ジオさんは追加食料も忘れない事!良いですね!」
そうして私たちは北の渓谷へ向かいます。てくてく……てくてく……。
ジオさんだけドスドス言いそうなのは、背負った荷物の大きさ故ですね……
本当に燃費が悪い……可哀想……
「おっ、兄ちゃんたちが護衛の冒険者さんたちかい?」
「3日間だけどよろしくな!」
「パパっと橋げた直しちまうからな。護衛は任せたぜ!」
良かった。作業員の方々も良い人そうです。
「とりあえずジオさんとミアさんで簡易的な護衛を。私たちはまず……拠点のテントを立てちゃいます。」
男女2人で分かれる、大きなテントと小さめなテント。
エルナさんとネロさんは小さなテントを、私とエンツォさんは大きなテントをしっかり張って、3日間の仮宿、完成です!
その後は、昼まで橋の周りを見張ります。
ミアさん、エルナさん、エンツォさんは向こう側。私、ジオさん、ネロさんはこちら側。
昼は一人だけ向こう側に代わる代わる残して、みんなでこちら側でお昼を食べます。
「兄ちゃんすげぇ食いっぷりだねぇ」
「いや、俺、燃費悪いんで……」
「なら賄い付きは丁度良かったな!」
わいわい……がやがや……
さて、私も食べ終わりましたし、ミアさんと橋の向こうの見張り、交代しなくては……
そして午後のことでした……
橋の向こう側にミアさん、エルナさん、ネロさん。
橋のこちら側に、私、ジオさん、エンツォさんで守っていた時でした……!
ゴブリン……しかも武器持ちで集団だって!?
真っ先にジオさんが気づいてホイッスルを吹きます!
エンツォさんは突撃し、私は魔法、カウント1……
ですが、ゴブリンの数に対して、前衛が足りない!
ミアさんたちは橋の向こうから駆けてきます!
しかしそこへ、ゴブリンアーチャーの弓が、橋を仮止めしていたロープに命中してしまいました!
橋が、落ちる!?
そう危惧した瞬間、真っ先にジオさんが武器を捨ててロープの両端を持ちました!
「うぐおおおぉ………ミア………早く、これ、代わって………」
ロープが軋む。橋が、わずかに沈む。
「まだ……駄目だ……落ちる……!」
「来たわよジオー!」
ミアさんが怪力でロープを繋ぎ止めます!それでも苦しそう……
いや、橋の仮止めのロープを持てるって何なんだ!?
ジオさんは慌てて捨てた武器を拾い、ゴブリンアーチャーを仕留めにいきます!私も!
「水よ、わが力を持って、目の前の敵を、凍らせん!」
バキバキと足元が凍ってゆくゴブリンたち!ですが長物を構えていてどうにも危険です、そこへ、
「よくもやったわねー!!!」
ミアさんの盾の突撃!後ろを振り返るとロープはしっかり結ばれて、固定され直していました!
そしてゴブリンアーチャーを倒したジオさんが、のこりのゴブリンたちにエンツォさんと連携攻撃を仕掛けます!
私も魔法を再び唱え始めました……
3カウント、後少し!
しかし、そこで腕をかすめる弓矢……高い所にもう一匹ゴブリンアーチャー!?
ネロさんの投げナイフも避けて、私の詠唱の邪魔をし続けます!
「お前……しつっ……こいんだよ!!!」
ジオさんの全力の石投擲!ガツンと頭に当たったゴブリンアーチャーはくらりとよろめいてーー
そのまま、私の呪文が完成し、ゴブリンアーチャーを、貫いた――!
そして、ミアさんの防御、エンツォさんとジオさんの連携攻撃、私の魔法……
どうにかこうにか、うまいことゴブリンを倒せました。
一匹に全員で苦労していたあの頃とはだいぶ違います、私たちも日々成長しているのです……
「アルドさん、腕の怪我、治しますね!」
見渡してみれば、どうやら橋の作業員の方たちは全員無事のようでした……
「兄ちゃんたちやるなぁ!」
「あの石も決め手だったな!」
「ロープが切れた時、もうダメかと思ったよ……」
……あの一投がなければ、私は魔法を完成できなかった。
ジオさんは、何でもない顔をしていますけど。
全員で手を取り合い、喜びます!
作業員の方々も、夜は橋のこちら側でテントを張るようで、私たちは夜も一人ずつ、交代で見張り番をしました……
そうして、残り2日は平和に終わり……
橋は、見事に修理されていました!
ロープも取り払われて、欄干も全部木で作ってあります。ピカピカですね!
「いやー、兄ちゃんたちのおかげで助かった!報奨金はギルドに預けてあるからな!受け取ってくれ!」
そうして私たちは街に帰ってきました。
ギルドで終了のハンコとお金をもらって、6人で分けます。
「これで今月も何とかなるぜ〜!」
喜ぶジオさん。
でもこれからも、真面目に依頼は受けていきましょうね……
来月も多分、同じ事言ってそうですから……
……そのためにも、ちゃんと働かないといけませんね。




