浄化とひとつの成長
「えー、今日の依頼は、このゴミ屋敷のお片付けです。」
私、アルドが説明すると、皆あからさまに嫌そうになりました。
「依頼人はこの家のおじいさんと近所の方全員……つまり、実入りがいい!」
最近まともな依頼をしていなかったので、懐は寒めです。
「お爺さんも最近身体が動かなくなってきて、満足に掃除ができず、困っているそうです……頑張りましょうね?これも人助けです。」
「人助け!!!」
おっ、エンツォさんが食いついた。
「皆さん、困ってるんですよね……うう、でも、不潔です……」
「エルナちゃん、頑張ろ!」
「まあ今日の飯のためだ、しゃーないな!」
「………………」
とりあえず、全員やる気になってくれたみたいだ……良かった………
私たちはひたすら表面のゴミを分けて詰め、分けて詰め、そしてゴミ捨て場に運びました。
……結構な重作業……これはお爺さんには難しいですね……
エルナさんは徹底的にエプロンとマスクと三角巾と眼鏡を装備しています……
潔癖気味だからなぁ……
「むっ!?これはタンス貯金!?正義の名のもとに、おじいさんに返すぞ!」
「いやーっ!虫が湧いてる!!!」
「熊の掘り物……何に使うんだ?」
「この缶詰パンパンだよー!このまま捨てちゃお!」
皆思い思いに片付けを頑張ってくれている………そしてだいぶ床が見えてきました。
ようやく第一段階クリア、ってところですが……ふう、疲れた……
そうして通れるようになった台所……
……なにか、異臭がしました。
何かが視界の端でじわりと動く……
……なんか、ゴミの塊が、動いている……?
「も、モンスター!!!」
つい大声をあげてしまいました。
なんだなんだと集まってくるみんな……
「なんだこのゴミの塊!」
「ふ、不潔ですーーっ!!!」
エルナさんの殺る気がすごいのですが……
というか、モンスターの正体が、わからない?
見たこともない……
「とりあえず戦えるスペースを確保するぞ!」
ジオさんが邪魔になりそうなゴミを端に寄せ集め、いつも腰につけている剣を抜きました。
「えっ、なになに?」
慌ててやってきたミアさんも大きな盾を構えます……
ゴミ掃除中、邪魔じゃなかったのかな?
そしてエルナさん……
「いやーーーーっ!!!」
混乱し始めました!ヒーラーに混乱されると大変なのですが!?
エンツォさんとネロさんも遠くから走ってくる音がします……
「皆、ネロさんとエルナさんは私の後ろに!前衛は正体を見極めるまで防御して様子を見てください!」
ゴミモンスターは触手を伸ばして私の腕をかする……
まさか、スライムなのか?これ……!?
表面が全然ゴミで見えないぞ!?
「みなさん!ごみを引っ剥がして下さい!」
その間に私は呪文を唱えます!
「水よ、わが力を持って――」
ポイポイとスライム?からフライパンやら靴やら引き出すみんな。
「目の前の敵を――!?」
スライムのコアが、見えない!貫けない!
カウントが3で止まったまま、私は皆にさらに指示を飛ばします!
「とりあえず表面のゴミ、全部引っ剥がしちゃってください!コアが見えなくて……貫けません!」
ジオさんとミアさんは、時々飲み込まれかけながら、きり払いながら、なんとかかんとかゴミを引きずり出しています……
金庫!?何が入っているんだ?
ようやく駆けつけたネロさんとエンツォさん……!
エンツォさんはギョッとしたように、ネロさんは訝しげにこちらを見ています。
「エンツォさん!このスライムのゴミはがし、手伝ってください!!!」
「心得た!」
エンツォさんも突っ込んでいき、スライムから新聞紙を引っ張り出していました……
それでも、スライムは曇っていてよく見えない……
「水をぶっかけろ!」
ネロさんが叫びます!それなら!
「清らかな水で濯げ!」
4カウント。魔法の完成です。
スライムは水で洗われて、うっすらとコアが見えます……!
「エンツォさん!」
エンツォさんは一歩踏み込み、無駄のない動きで剣を構える。
「正義は……迷わない!」
細い刃が、一直線にコアを貫いた。
スライムは無惨にべしゃりと崩れました。
「ごみを食べて育ったスライム……」
ネロさんが呟きます。
「昔いた所に、少し居た……こんなに、大きなのは見たことないけど。」
ネロさんの故郷……どんなところだったのでしょう……
そのあと、私たちはスライムの残骸を片付けて、再び掃除を開始しました……
そして、夕暮れ時――
ようやくゴミ捨ても終わり、私たちは雑巾で床を拭き、換気をして、家は古いながらもきれいな姿を取り戻しました!
そこでエルナさんが気づきます。
「アルドさん……!腕が……!」
ふと腕を見ると、腕が赤紫に腫れ上がっています!
「………ゴミスライムは、少しだけ毒を持つ」
早く病院に。そういうネロさんの言葉に従おうとした時……
「不潔です……汚いのはダメです……痛いのもダメなんです……!ピュリファイ!」
その呪文とともに、私の腕はすうっと赤紫が引いて、普通の腕に戻りました。
「今のは……ピュリファイ?」
「は、初めてできた……出来ました……」
エルナさんは震えていました。
そうして依頼完了報告にギルドへ行くと、やっぱり――
「エルナさん、あなた、レベル3に上がっています!」
喜ぶ私たち。喜ぶエルナさん。
たくさん入った依頼金で、その日は豪華な晩ごはん。
やたら食べるジオさん、今日はエルナちゃんのお祝いだと怒るミアさん。
笑顔のエルナさん――
明日はケーキを焼く、とネロさんも大張り切りです。
こうやって、みんな少しずつ成長していく――
私は、まるで自分のことのように嬉しくなりました。




