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畑と、ひとつの落としどころ

「もはや……これまでかのう……」

「このままじゃ村全員餓死だべ!」

「あの魔物さえ何とかすれば……」

「冒険者を呼ぶべ!」

「頼りになるのか?依頼料を持ち逃げされるのでは?」


わいわい……がやがや……



「今日の依頼は、村に迷惑をかける魔物の退治依頼です。」

「よっし!久しぶりに正当派だな!」


ジオさんが腕をまくります。


「エルナちゃん、一緒にレベルアップ目指そう!次は私も!だよ〜」

「わ、私……!?そんな大したこと、なくて……」


ミアさんもやる気満々。エルナさんは……もう少し自信を持ってくれたらいいのにな。


「正義の依頼!正義の依頼!!!」

「………………」


エンツォさんはいつもにもまして気合が入っています。


「油断は禁物ですよ……"寄せ集めの6人組"、行きましょう!」



そこは、ずいぶんと寂れた村でした。

子どもたちは走り回っているのに、大人は元気がなく、老人はため息をついています。


「どうしたそこのお爺さん!元気がないのは正義ではないぞ!」

「まさか……冒険者かい!?あんな報酬の少ない依頼を本当に受けてくれたのかい!?おかげでお山に行かなくて済みそうじゃ……!」


……本当に、追い詰められていますね。

私たちはお爺さんに連れられて、村の集会所へ向かいました。


「この村には魔物が出るべ……いつも夜中頃、野菜を食い荒らしていくんだべ……」

「おかげで私らの食べるものがなくなって……食べ方も美味しい所だけ食べてく無茶苦茶な食べ方でねぇ……」


廃棄した野菜がどれだけあったか。村人はため息をつく。


「出来ればボッコボコにしたうえに、ふん縛って連れてきてほしいだ!」

「今までの文句を言ってやるだよ!」


今回は、死なせずに捕獲……それを聞いた私は、少しだけホッとしていました。

生き物の命を奪うのは、いつだって心が重い……



村は静かに日が暮れてゆきます。

さわやかな風とともに、村を見渡すと、かなりの広さの畑……

おそらくはもともとはとてもよく野菜が取れる場所だったのでしょう。

それを追い詰めるモンスターが許せない気持ちと、それでも生き物の命を奪うのは怖い私……

カーシーのことを思い出します。命をこの手で奪う罪悪感と気持ち悪さ……

私は本当は冒険者に向いていないのではないのかな?

そんなことを思いつつ、時間は夜になりました。魔物は南から来る。その情報をもとに、私たちは南の方向を重点的に見回ります。その時……!


「なんだお前たち!私のご飯の邪魔をするのか!!容赦しないぞ!?」


獣人……!どうやら瞳孔のカタチと角と耳の形状から、ヤギの獣人のようだ!


「あなたが村の食料を奪っている獣人ですか!」


私の声に、獣人は不思議そうに首を傾げます。


「ムラ……何?群れのことか?」

「そうだよ!そこのご飯をあなたが勝手に食べちゃってるんだよ!」

「村の人達は死も覚悟しているのだぞ!正義ではない!」


ミアさんとエンツォさんの説得にも耳を貸さず、獣人は高く飛び跳ねました!


「知らないね!私だってご飯食べなきゃ死んじゃうんだ!」


さすがヤギの獣人……!高くジャンプを繰り返して、攻撃が全然定まらない!


「ともかく……俺らは雇われた!悪いけど!倒させてもらうぜ!」


ジオさん……剣が全然当たらない状態で言われても……

ネロさんのナイフで一瞬怯んだ獣人に、エンツォさんが突撃します。

しかし軽くジャンプで躱す獣人……


「おりゃあーーーっ!!!」


そこへミアさんのシールドバッシュ!さすがに敵は吹き飛ばされます、そこへ!


「水よ、わが力を持って、目の前の敵を、凍りつかせん!」


うまくいきました!ヤギの少女の足だけを凍らせることに成功!

私たちは魔法の縄で、万にひとつも彼女が逃げられないように縛り上げました……

……彼女はどうなるんだろう。

村人は怒り狂っていた。

酷いことをされなければいいのだが……いや、先に酷いことをされたのは村人だ……

私は複雑な気持ちで獣人を村に運びました……



「おめぇが毎晩うちの畑のキャベツと人参を食い荒らしてたやつけ!」

「うちの植えたばかりのホウレンソウもだ!」

「百叩きじゃ済まないだよ!」


暴走する村人、熱くなりすぎている!


「ま、待ってください、皆さん……彼女も生きるために……」

「うちの妊娠中の女房の分まで食われただぞ!?」

「うちのじいさんもお山に行くかと考えてたべ!」

「私だって……群れから追い出されて食べるものなんか無かったんだ!食べずにずっとずっと歩いて……目の前にあんなに美味しそうな餌場があったら食べるだろう!」

「やめてください!落ち着いて!彼女も、生きるためにやったんです……!」

「アルドさん……。そうです、やめましょうよ……」


村人と獣人の話し合いは平行線です……そこへ……


「それならよ……」


ざわつきが止まった。村人たちがジオさんの方を見る。

農家の息子、ジオさん……!?なにか妙案が!?


「こうすりゃいいんじゃねえの?」



ふう、ふう……息をつきながらヤギの少女は畑を耕しています。

けれどさすが獣人。力も強く、動きも速い。


「働かざる者食うべからず!働いたら!飯を分けてやるだよ!」

「今まで食べ散らかしたぶん、しっかりね!」


周りでは同じように畑を耕す村人たち……


「ニンゲンは……こんなに苦労して……ご飯を作っているのだな……」

「そうだべ!食い荒らす奴はおしおきだべよ!」

「3時まで頑張ったら、うちのじいさんが作ってくれた団子も食べさせてやるけ!」

「うう……頑張る……」


少女は今までの分働かされて、その分ご飯をもらうことになったようです。

私は心から安心しました。


「ジオさん……ありがとうございます」

「えっ?何が?」


ジオさんは本当に分かっていないようでした。でもいいのです。

私の心は勝手に救われたのですから。


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