それぞれの日常
街は、ギルドは、今日も1日騒がしくなりそうだ……
「すみません、皆さん。パーティ結成しようと思ったのですが、どうやら名前が必要らしくて。」
今日もギルドの酒場でぐだぐだしていた俺たちに、困ったようにアルドが声をかけてきた。
エンツォがガバっと手を上げて「ザ・ジャスティス!」と叫ぶ。
……誰も反応しなかった。まあ……しょうがないな。
俺は少し離れた場所で、アルド、ジオ、ミア、エルナ……
4人のあれやこれやの話し合いを見つめていた。
……エンツォ。そこまで落ち込むことはないのに……。
ああでもないこうでもない。
4人が話し合っている。俺は我関せずで、エンツォの背中を撫でていた。
「漆黒の翼!とかどうだ!」
「翼なら白いふわふわ、とかのほうがいいなー。」
「それはパーティ名なんですか?……頑張る6人、とかどうでしょう。」
「アルドさんが一番適当じゃないですか?私的にはこの間貰ったということで、ドラゴンの鱗、なんていいんじゃないかなって……」
本当に寄せ集めだな。ため息をついた。
……なぜか5人ともこちらを見ている。うっかり喋ってしまったようだった。
「寄せ集めかー……まぁ正しいよな。」
「寄せ集めの6人組、とかいいんじゃないですか?」
わいわい、がやがや。
いつの間にかエンツォも話題のなかに戻って、楽しそうにしていた。
――エンツォが楽しそうなのは、いいことだ。
俺は頭を抱えていた。エンゲル係数が……高い……。
分かっている。オレの燃費が悪いってことは。街は物価が高いのだ。
けれどミアを、世間知らずのミアを一人で行かせることだけはだめだと思った。
ミアが昔から都会に憧れているのは知っていた。
けれど、畑を作り獣を狩り、時々やって来るゴブリンをなんとか村人たちで撃退して、ずっとこの村で、そのうち結婚するんだと思ってた。
でもミアは決めた。自分の進みたい道を。
なら、俺は全力でそのサポートをするしかないだろう。付き合ってるんだから。
……ぶっちゃけると、俺はあまり強くはない。ゴブリンとせいぜい切り合える程度。
それでもミアを守りたい。
だから冒険者になったんだ。高レベルになれれば実入りもいいと聞いた。
……まあ、まだまだ先の話だ。今はしがないレベル1。
エンゲル係数に悩む、ただの一人の冒険者。
でも、いつか、ミアを守れるくらいになったなら――
その時は、プロポーズするのだ。
あいつの好きな場所で、あいつが好きなように生きていくために、俺は強くなる。
そう考えながら、ギルドで分けられた報酬を見て、食費代の計算をする。
……正直、結婚後は料理は俺の仕事だしな!これも試練だ!がんばれ、俺!
私には、昔から夢があった。笑われるかもしれないけれど、おとぎ話の主人公。
主人公と言っても、お姫様や王女様だけではなくて、かっこいい王子様や竜と戦う英雄。
そういうのにも憧れた。似合わないって言われたけどね。
あと、昔から街に憧れがあった。
初めて街に出てきて、食べたクレープ……美味しかったなぁ。
あれからクレープは私の大好物だ。
つまり、私の目指すのは、可愛くてかっこいい、お姫様みたいな英雄だ。
その一歩として、冒険者への道を踏み出した。
正直、思ったのとイメージが違ったり、ものすごくきつい日もあったり、夢だけじゃやっていけないというのもわかる。
でも、私にはジオがついてきてくれたから。
弱いけど頼りになる、大好きなジオがついてきてくれたから、もうそれでいいんだ。
お芋の煮っころがしは苦手。毎日食べてたから。
でもジオがいるなら我慢しようかなって思える程度には好きなのよ?
あまり伝わってないかもしれないけど。
街に出てきてもう一つ良かったと思えたことは、とても仲のいい友達ができたことだった。
エルナ。
自分が地味なんじゃないかってよく悩んでる、私の友達。
私から見れば、みんなを助ける優しくてかっこいい女の子なんだけど、本人は気づいてないのよね。勿体ないなあ。
世界は優しくあるべきだ。世界は正しくあるといい。
みんなが皆、誰かに優しくできたなら、不幸なんてきっとなくなる!
昔、そう思ってた。でも無理だったから、街へ逃げてきた。
街はいいぞ!いろんな価値観、いろんな人、いろんな正義を語れるジャスティスの会もあるし、なにより雰囲気がゆるい。
そんな街でも、毎日問題は起こる。
みんなを助けたくて、俺は冒険者になった。
……ネロも冒険者になった。
本当は危ないからついてくるなって言ったのに押し切られた。
こういう時だけ頑固なんだよ。
そして、俺たちは寄せ集めの6人組になった。
ネロと2人きりの時も楽しかったけど、今も楽しい!
なによりできる依頼がふえて、誰かの役に立てることが増える!最高だな!
リーダーのアルドは最初、何か企んでそうな顔すぎて、正直悪人かと思ったが、お人好しで押しが弱いんだよな、
ネロの次にあいつも守ってやらなくては!
ネロは、ずっとそばにいる。本当は冒険に連れていきたくはない。
正直あいつは戦えるタイプじゃないから。
なにより……あいつが、雨の中でぼろぼろになって倒れていた姿を思い出すだけで……
今でも怒りに腹の底が震えるのに、同じ状況になったら冷静でいられるか分からないだろう?
だから俺は今日も真っ先に飛び込んでゆくのだ!正義と……ネロを守るために!
今日も街とギルドは騒がしい。
多分明日も、明後日も。




