こんなダンジョンは嫌だ。
「ダンジョンを作りました……?被験者、募集中……?」
また変な依頼を見つけてしまった。
やたら実入りはいいが、何か怪しい匂いがする。
やめておこう。
私、アルドはそう思って依頼を元の場所に戻しかけてーー
「なーにそれ!面白そう!」
トラブルメーカー、ミアさんに見つかってしまいました………
「というわけで、ここがそのダンジョンです……嫌な予感しかしなくないですか?」
「実入りはいいんだろ?さっさと入ってさっさと帰ろうぜ!」
「なんか面白い罠とかあるといいなー!」
「民間人の役に立つのもまた正義!」
「…………」
「ま、まあ……受けちゃったんですよね?頑張りましょうよ!」
嫌な予感がするのは私だけなのだろうか……うっ、胃が痛い……
「お、お邪魔します………」
そっと石のドアを開けて覗き込む。特に違和感はないようだが………
うわっ!?急に扉が閉まって、床がーー!?
«クックックッ……私の淫靡なダンジョンへようこそ……第1階はローション地獄!ヌルヌルのベトベトになるがいい……って、あれ?»
………私達は、扉が閉まった衝撃でローションに滑り、一気に向かい側の階段までたどり着いていました……
というか何ですかこのダンジョン!?
「ふ、不潔です〜!!!」
エルナさんが真っ赤になっています。
意味知ってるのかな……というか淫靡なダンジョンって何だ……?
なんとなくベタつくローションを、もったいないので体に擦り込みながら2階へ向かいます……
一体なんだったんだ……
転んだだけでなんの得もなかったのですが……
«ふ、ふはは、2階はスライム地獄だ!酸性の弱いスライムに……ベチョベチョにされるがいい!……って、あれ……?»
「………さすがに弱すぎる………」
ネロさんが腕に絡まってきたスライムを素手で千切っていました。
それを見たスライムたちは恐れおののいてみんな部屋の端っこに逃げ出しています……
ネロさんでも千切れるって……私やエルナさんでも千切れるのでは……?
«あっ!こら!逃げるな!!ベチョベチョにするんだ!こらー!!!»
私達は、男の声と、混乱するスライムたちの鳴き声を後ろに、3階へ向かいました……
なんか精神的疲労が激しいんですが、このダンジョン……
3階は……天井に大量の触手!?私達は咄嗟に武器を構えました………しかし……
しな……しな……
ヒョロ……ヒョロ……
ペチ……ペチ……
………なんか、全体的に元気がありませんね……というか、死にそう……?
「動物虐待など正義ではない!皆!この水を飲め!」
エンツォさんが差し出した水桶にみんな殺到しています……
触手……可哀想……
«ぜぇ……ぜぇ……3階は……触手地獄……っておい!まだ説明が終わっていないのだが!?»
私達は触手を哀れに思いながら4階へ進みました……
動物は飼ったら世話をする。当たり前のことですよね……
そうして4階。なぜか部屋の真ん中に大きなダブルベッド……?
このダンジョン……?とも言い難い何かの意図が完全に読めずに、私達は戸惑いました。
エルナさんだけ真っ赤になっています。なぜ?
そこへひらりと1枚の紙が落ちてきました……
えっ?………しないと、出られない、部屋!?
«はぁ、はぁ………。ハッハッハ!さすがにここは避けては通れないだろう!〇〇しないと出られない部屋!さあ?誰が犠牲になる?出来れば女の子がいいなぁ?»
………ようやくこのダンジョンの主の意図が掴めました。
さすがに……これは……
「どっせえええええい!!!」
轟音、衝撃。
振り返るとミアさんが、まるでいい汗かいたとでもいうように額をぬぐっていました。
次の階へ向かう扉は、粉々になっていました……
「さ、行こ?ダンジョン作った人、ボッコボコにしなきゃ?ね?」
あっ……これは、当たり前だけど怒っている………
「よくもまあ、こんな依頼を恥も外聞もなく出せたもんだぜ………」
「正義じゃない!あと動物虐待は辞めろ!!!」
「……………」
「不潔!不潔です!!!」
あっ……全員しっかりと全ギレしていらっしゃる……。
それじゃあ、私も……全力で怒って良いですよね?
私達は、5階への階段を登りました……
ようやく5階に登った私たちの前に、一人の男が居ました。
汗をダラダラかいて、まるで逃げ場を探すよう、目はキョロキョロと動いています……
「よ、よくぞダンジョンをクリアした!あ、あとこれ依頼金だから……もう帰っていいよ」
「誰が帰るか!」
「乙女の敵ー!!!」
「動物は飼うなら責任持て!」
「………スライムもだ」
「こんな不潔な施設作ろうなんて……最低ですっ!」
そうして最後に、私がー………
「覚悟は、良いですよね?」
「わ、私の理想のダンジョンがあああ!!!!」
全員で殴り倒し(普段は参加しないエルナさんやネロさんまで参加していました。もちろん私も。)
男を警察まで連れていき、そしてギルドで詳細を話し、今回の事件は終わりました………
「本当に、なんだったんですかね……この依頼……」
全員、深々と頷きました。




