踏み込みすぎた一歩
それは、昼食中の一言から始まりました。
「ねえ!エンツォとネロってどこでどうやって出会ったの!?」
ーー空気が、一瞬凍りました。
「別に……正義には!かんけいないからな!」
笑うエンツォさん。
でも私、エルナにはどうにもその笑顔が引きつっているようにしか見えません。
「ミア、人には事情があるだろ……」
ジオさんはいつも頼りになりますね!
でもミアさんの好奇心は止まりませんでした。
「えー?だって気にならない?すごく仲がいいもの。いつだってーー」
「……………やめろ。」
ネロさんの鋭い言葉が飛びました。
そこへ、こほんとアルドさんの軽い咳が聞こえます。
パンパン、と手を叩いて、アルドさんは自分に目線を集めました。
「ほらほら、皆さん。早く食べないとお昼が冷めてしまいます。せっかくネロさんが作ってくださったのですから、美味しくいただきましょう?」
その場は、それで収まりましたーー
でも、その後もなんとなく空気は重いまま。
ジオさんとミアさんは、
「だからもっと考えろって……」
「だってー」
と端っこで反省会をしてるみたいです。
私は不安で、アルドさんを見上げました。
「大丈夫ですよ。ちょっとしたケンカ。どこにでもあるようなものです。心配しなくても、そのうち元に戻りますよ。」
けれど私は心配でした。
もしもこのパーティが無くなってしまったら?
そこまで考えて、随分このパーティが好きになっていたこと、今更気づきます。
ネロさんやエンツォさんは……
どう思っているんでしょう?このまま抜けたりなんてことはーーー
やっぱり不安で、でも何もできないことに、私は胸の中がくしゃくしゃになった気分でした。
でも、今はアルドさんの言葉を信じて待とう。
それが私にできることだと思うから……
3時のおやつは、いつもより静かでした。
それでもネロさんが作ってくれたことに、ちょっとホッとします。
今日はミアさんの大好きなクレープ!
もしかして、ネロさんなりのお詫びの気持ち……?
「………悪かった。」
ネロさんはミアさんとジオさんにそれだけ言うとどこかへ行ってしまいました。
ミアさんが、
「待って、私も……」
といいかけたものの、すっと逃げるように去っていきました。私は少し安心。
けど、おやつの時間にもエンツォさんは現れなくて………どうしたのかしら………
……エンツォさんは、テラスで空を見あげていました。
どこかぼんやりして、いつもとは別人のよう。
私が声をかけると、ビクリとして椅子から落っこちました……
大丈夫かな?一応ヒールをかけておきます。
「心配かけて、ごめんな………でも、ああいう……過去のこと、聞かれるの苦手なんだ。」
やっぱり。笑顔が少し引きつってましたもんね。
「俺は……故郷では正義じゃなかった。だから逃げ出した。でもいいんだ。ネロがいれば。」
皆が皆に優しくあればいいのにな。
つぶやくエンツォさん。意外な一面を見たな……そう思った時。
「エンツォ!」
ミアさんが現れました。
「理由は分からない……けど、ごめんね!私って、すぐに気になったら首突っ込んじゃうし、すぐ人を怒らせちゃうし、すぐ………」
「気にすることないさ!」
エンツォさんは笑いました。
「俺が過剰反応しただけ!ミアはむしろ、そういう所がいいんだと思うぞ!俺にはできない、正義を成せる!」
そこへ、静かな声がかかりました。
「…………クレープ、食べないのか?」
ネロさんでした。
ミアさんは、あっと声を上げて、まだ残ってる!?と叫びながら宿へ戻っていきました。
「ミアはああでなくちゃな!調子が狂う!」
「……………それはエンツォも。」
「そうだった!皆に謝らないとな!」
「……………俺もついてく。」
2人はいつも通り。まるで寄り添うように歩いていきます。
二人に何があったのか………少しだけ覗いてしまった気がしました。
でも。昔は昔。今は今。
2人は私達のパーティメンバーに欠かせない2人です。
ずっと一緒にいれたらいいな。
そう思いながら私は二人の後ろを歩いていきました。




