手を離さない理由
ただーーただ、大事な人を守りたくて。
正義も故郷も捨てて、逃げ出したーー
今日も宿は賑やか。お昼ゴハンの後で、皆思い思いに過ごしています。
エンツォさんとネロさんは今日も一緒。本当に仲がいいですね。
そこへアルドさんがギルドから帰ってきました。
「今日は面白い依頼を見つけてきたんですよ。」
愛を試す神殿……?
「恋愛でも、信頼でも、家族愛でもいいらしいです。行ってみませんか?あと……縁結びのお守りとか……買いたいですし……」
アルドさんの本音が見える……彼女、欲しいんですね……
愛を試す神殿は、意外と本格的だったーー。
愛の女神の総本山らしい……それは立派なはずですね。
「よくぞ来た……若者たちよ……。二人一組、あの扉に入るがいい」
「いえ……私たちはお守りを買いに来たんですが……依頼的にも、個人的にも……」
「愛を試されたものにしか買えぬ。」
神官様は重々しく言いました。きっと大事なことなんだろうなぁ。
「恋愛でも、信頼でも。家族愛でもいい。さあ、あの扉のうちどれかを選び、入るのだ。」
どうやら避けては通れないようです……
「俺たちはもちろん一緒だよな!」
「ジオと一緒じゃないといかないもん!」
ジオさん&ミアさんペア。
「…………エンツォがいい。」
「ということで俺たちは一緒だな!」
エンツォさん&ネロさんペア。
残ったのは……私と、アルドさん!?
「とりあえず行きましょう。お守りを買えないと依頼達成できませんからね。」
多分自分の分も欲しいんでしょうね……丸わかりです、アルドさん。
ジオたちは、不思議な鏡だらけの場所に来ていた。
「なんだコレ、どうなってんだミア……うわっ!?」
振り返るとそこには、5人のミアがいた。
私が本物よ!ねえジオ、わかんない?私だってば……
ジオは小さくため息をついた。
「お前が分からないわけないだろう。」
各々騒ぐミア達をジオはじっくり見定めて……
「ほらミア、行くぞ。」
「もー、いきなり引っ張るのやめてよね!……って、あれ……?」
たくさんのミア達は消え去っていた。
鏡張りの部屋は、いつの間にか洞窟になり、出口の扉が出現していた……
私とアルドさんは、不思議な空間に迷い込んでいました。
「足元が雲のようですね……」
「ふわふわしてますね……」
私たちは向こうに見える扉へ向かって歩く……その時!
「うわっ!」
アルドさんが落ちてしまった!?
縄……ロープ……かわりになりそうなものは何もない!
もしも打ち所が悪ければ、アルドさんは……!
えーい!女の子は度胸だってミアさんが言ってました!
私は穴の空いた雲から飛び降り……そこは、狭い洞窟のなかでした。
「エルナさん、よかった……」
ホッとした顔のアルドさん。私たちは洞窟にあった扉を開けましたーー
エンツォは、崖の目の前にいた。
目の前には、落ちそうになっている人と、同じく落ちそうになっているネローー
エンツォは、何も言わずにネロの方に走り寄った。
もう片方は、悲鳴を上げて落ちていくーー………
悲鳴が、耳に残って、離れない。
ネロはぎゅっと目を閉じて、声を振り切る。
「エンツォ!」
ネロが叫んだ。
「お前………どうして……?」
「故郷を捨てたあの日から、俺の一番は決まってる。そんなの、ネロだって分かっているだろう。」
ネロは、それでも……と迷っている様子だったが、エンツォに引かれ、現れた扉へ向かう。
「おかしいなんて、百も承知さ。正義なんて、本当は俺が語る資格なんて無いことも………でも、それが俺なんだ。知ってて傍に居るんだろう?」
ネロは一度だけ目を伏せて、エンツォの手を握り返した……
離れ離れにならないように。あの日、引き離されないよう走った日のことを思い出しながら。
「それぞれの愛は肯定された……まあ、信頼もいるが、OKじゃろう……」
扉を出た先は、にぎやかな土産物売り場でした……
さっきまでと全然雰囲気違いませんか!?
アルドさんは早速依頼されたお守りと、自分の縁結びのお守りを選んでいるようです。
……ジオさんとミアさんはカップル用のキーホルダーを買うらしいです。
重ねると絵が完成するそうで。かわいいなぁ。いつか私も欲しい。
エンツォさんとネロさんは……
なぜか、お土産物は見ずに端っこにいました。どうしたんでしょう?声をかけます。
「……たとえ認められたとしても、俺たちは、正しくないってきっと何処かで思ってるからかな。」
「…………エンツォ………」
普段正義正義と言っているエンツォさんの言葉、私にはよくわかりませんでした……
そしてお守りを買えてホクホクのアルドさん、楽しそうなジオさんとミアさん。
そうして少し離れた所を歩いているエンツォさんとネロさん。
………けれど、二人の手はしっかりと握られていて。
私にはきっと分からない絆があるんだな……そう思いました。




