癒す手は見えにくい
「え、えーーーっ!いつの間にかレベル3!?」
「たぶんスライム地獄だろ。お前だいぶスライム倒しまくってたし」
アルドさんがあんなに喜んでる所初めて見ました……
「おめでとー!アルド!今夜はパーティだね!」
「…………腕を振るう。」
皆大喜び。私も大喜び。
……、なのに、ちょっとだけ置いていかれて寂しいなって思ってしまうのは、私のワガママなんでしょうね……
アルドさんは、リーダーとしても魔術師としても頑張っているのに…。
私と来たら!
影も薄いうえに仲間の成長を喜びきれないなんて、なんて駄目なヒーラー!
その夜はご馳走でした……
なんて言ったって、ついに最初はへなちょこだった私たちのパーティからレベル3が出たのです!
レベル3……他のパーティにも声をかけられ始めるレベル……
「行きませんよ、ほかのパーティには。」
アルドさんは笑います。
「私はリーダーですし……なにより、この6人が……その、好きですから。」
笑顔が(怪しいけど)まぶしい!
「あ、あの、私……料理、取り分けましょうか?」
「エルナ?どうしたんだ?」
「いつもみたいに適当に自分で取ればいいんじゃねぇ?」
不思議そうな目で見られました……
お役に立ちたいのに、やっぱりあんまり、役に立ててないのでは……私。
悩み始めて2日、たちました。
最初は不思議そうだった皆も、最近は「悩みでもあるの?」と聞いてきます……
でも、これは私の問題!
他人に心配をかけるなんて、神官として修行が足りません!
やっぱりまずは滝行からかな……そんなことを考えていました。
そんな時……
「エルナ!来てくれ!!!」
エンツォさんの叫び声……?一体何が?
慌てて行くと、そこにはいつものようにいつものごとくミアさんの料理を全部食べて倒れたジオさんが居ました……
慌ててヒールをかけ、なんとか動ける程度にまで回復させます。
「今日もサンキューな!エルナ」
「もうミアさんの料理に立ち向かうの止めたらどうですか……?」
私は疑問を口にしました。
「………エルナ、頼む。」
珍しい。ネロさんが料理中にやけどだなんて!
「…………油断した。」
なんとなく悔しそう。そっと手をかざし、軽くヒールを唱えます。
「……………いつも、助かる。」
ネロさんはそう言ってまたキッチンに戻っていきました。
新しいおやつの練習かな……?楽しみ。
「エルナさん、宿の親父さんが!」
アルドさんが慌てます。
「そんな大したことじゃねぇよ……いててて。」
どうやら上にしまっていた鍋が頭に直撃してたんこぶができてるみたいです!
頭の怪我はすぐに治さなければ危険です!……ヒール!
「すまんな、エルナの嬢ちゃん!」
宿の親父さんは豪快に笑いました。
「やっぱり私たちにはエルナさんが必要ですね。」
アルドさんは微笑みます。
けど私にはよくわかりません。
やっぱり薄い気もするし、ちゃんと役に立っている自覚もないのです。
そしてある日のゴブリン退治依頼。
「またゴブリンなの〜……」
「今回のゴブリンは結構知恵が回るようです……さすがに前のフレッシュゴーレムみたいなことにはならないでしょうけど……おっと。」
上からゴロゴロと岩が落ちてきます!?
「高低差を利用するとは、考えたなゴブリン…………!?ネロ!」
同時に3つの岩がネロさんに向かいます!
避ける場所がなく、顔色が白くなったネロさんに……!
「うぁ……っ!」
「エンツォ!」
ネロさんの代わりに、岩の直撃を受けたエンツォさん!
頭から血が流れて、ピクリとも動きません!
「エルナさん!エンツォさんとネロさんを頼みます!私たちはゴブリンを!」
私たちは下がって、エンツォさんの治療を始めました……
深い傷は、直しきれないけれど。軽傷にはできる!
「エンツォ……エンツォ……」
ネロさんは必死でエンツォさんの手を握って呼びかけています。
ヒールをかける手にも、力が入ります!
光よ、わが力を持って、目の前の者を、癒し給えーー
詠唱とともに、エンツォさんの頭の傷がふさがり、青い顔に少し血が戻ります。
ゆっくりと目を開けて、泣きそうなネロさんに声をかけます。
「………ネロ………」
「エンツォ!」
エンツォさんに抱きつくネロさん。
エンツォさんはかすれた声で言いました。
「ありがとう……エルナ。助かった。」
その後、ゴブリンを討伐して戻ってきたアルドさんたちと合流し、私たちはエンツォさんを病院に担ぎ込みました。
私のヒールがもっと強ければ……
「エルナさん」
アルドさんが優しく呼びかけます。
「エンツォさんが助かったのはあなたのおかげです……ありがとうございました。」
そう言われて、少しだけ心が、軽くなる。
「わたし、足手まといじゃ……ないですか?」
「当たり前でしょう!どれほどあなたのヒールに助けられたと思ってるんです。」
アルドさんは当たり前のように言いました。
本当にそれでいいのかな……
でも、アルドさんの言う事を、信じることにしました。
私はまだここにいていい。
皆と一緒に……いたいから。




