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ミアの誓いとゴブリンの謎

「ジオは……死なせない!」


ミアさんは盾を両手に構えた。その顔は、決死の覚悟に満ちていた。


「ジオは……私が守るんだから!」




「またゴブリン?」


ミアさんは不満そうにそう言った。


「芋煮会でもゴブリン……洞窟でもゴブリン……なんだか私たち、ゴブリンづいてない?」

「まあいいだろミア。オレたちはまだ実力不足だ。ゴブリン程度で丁度いい、だろ?」

「そうだけどー……」


ミアさんは私の方を見て言った。


「エルナちゃんはどう思う?やっぱりもっとドカーンと、派手なことしたくない?」

「この間のユニコーンで十分です……」


あのユニコーンはなかなか帰ってくれなくて、あのあと本当に困ったのだ。


「……それで、アルドさん。今回はどういう依頼なんですか?」

「ええ、簡単にお話すると……ゴブリンが、おかしな行動を取っているから出来れば退治してほしい、とのことですね。」


おかしい行動?ゴブリンが……?


「アルド!それはどういう行動なんだ!?悪の芽なら摘まなくては!」

「それが……どうにもよくわからなくて。村の近くで様子をうかがってはいるそうなんですが、子どもにも動物にも手は出していないと……」


本当に不思議だ。いったいどういうことなんでしょうか……。


「まあ、何かあってもなんとかしてきたしな。慎重にいけば今回もどうにかなるだろ。」

「ジオったら〜!頼りになること言うんだから!」


……このカップルは、いつも通りみたいですけれど。



いつも通り、アルドさんはギルドへ認可を取りに、私たちは薬の調達を。

そしてジオさんとエンツォさんは武器防具の整備をしていました。

今回はネロさんは先に行って聞き込みをしているらしくて。

エンツォさんはげっそりとしていました。そんなに離れるのが嫌なのかな。


「エルナちゃん、そろそろ私たちも蘇生薬、とか手が届くかな……」

「1つあれば安心ですよね……」


高い薬瓶。それ1本あれば、瀕死の仲間でも蘇らせられる。


「ちょっと最近、おサイフに余裕もあるし……買っちゃおっか!」

「私のヒールじゃまだそこまでの回復、無理ですしね……」

「何言ってるの!エルナちゃんが倒れた時用だよ!みんなエルナちゃんのヒール、頼りにしてるんだから!」


そんなふうに言われるのは、初めてで。


「ミアさん大好きですよ!」

「えっ?何?私もエルナちゃんの事大好きだけど!」


私達は笑い合いました。



そして、準備をした私達は、先にネロさんが待っている村へと向かいました。

約束通りに、酒場で落ち合って。


「………ゴブリンは、だんだんと数を減らしている。」


ネロさんから聞いたのは、意外な言葉でした。


「けど、ただ単に洞窟から出なくなっただけなのかも知れない……よく、分からない。」


結局のところ、ネロさんでも踏み込んでみないと詳しいことはわからないらしく。

表面的な調査では、ゴブリンは日に日に数を減らしている、ということでした。


「村を襲えるくらいの数は最初に居たんですよね?……ますます不可解だ……」


アルドさんは悩んでいるようでした。

行くか。撤退か。

リーダーはこういう時こそ大変なんだろうな……


「……行きましょう。もしも何かがあって、村に被害があれば……悔やんでも悔やみきれない。」



そして私達はゴブリンの洞窟へと向かいました……。おかしい。門番さえ、いない?


「………朝にはいた。」


ネロさんの簡潔な言葉。けどますますおかしいです。門番がいたのに、居なくなってる……


「本格的に怪しいですね……すみません、ネロさん。今回も先頭をお願いしていいですか?」

「…………そのくらいしか、できない。」

「いーや!ネロはシーフの技は有能だし料理も上手いしなんだってできる!」


エンツォさんが洞窟の前で叫んでも、何の反応もありません……

逆に、怖くなってミアさんの上着の裾をそっと握りました。



洞窟の中は、静かだった。

水滴が落ちる音すら響く、静けさの中で、私たちはソロリソロリと進む。

最近まで暮らしていたらしい飲みかけの何かや、食べかけの何かが、異臭を放っているのに、

ゴブリンだけが……いない。


「アルドさん……どうしましょう。」


不安になって聞いた。


「とりあえず……見回ってから、最深部、ですね……何もなければ良いのですが……」


私たちは色々な小部屋を覗いて回った。ゴブリンは、一匹もいなかった。

そして最後の部屋……重々しい、扉がついている。

中から、何か、気配を感じる。

みんなそうなのだろう。思い思いに武器を持つ。……私も、長年の相棒の杖を握りしめました。

扉を開けるーー

中には、一匹のゴブリンと、大きな"何か"がいた。

成人男性をゆうに上回る何かーー

巨大で、ツギハギだらけの、ゴブリンーー!?

そのゴブリンは、私たちを認めると、ゆっくりゆっくり近づいてきてーー

ガアアアアン!

思い切り、殴りつけた!ミアさんがとっさに盾で受け止めたが、足が地面にめり込んでいる!?


「ミアに何すんだ!」


ジオさんが怒りのままに横から斬りかかる。アルドさんも魔法の詠唱を開始する。

ーーカウント1。私はこんな時、何もできない……


「ジオ!ミア!そのまま押さえておいてくれ!」


エンツォさんの突撃が綺麗に決まる。

……だというのに、巨大なゴブリンの身体は少し傾いただけで、倒れもしなかった!


「水よ、わが力を持ってーー」


カウント2。

私たちのパーティの最大火力は、アルドさんの魔法だ。彼の魔法が効かなければ、本当に絶望的です!

なんとか耐えるミアさん、必死に斬りかかるジオさん、突撃をもう一度繰り返すエンツォさん、弱点を探っているネロさんーー

みんな、みんな頑張っている。

そこへ、つぎはぎだらけのゴブリンは、思い切り巨大な丸太をーー横に薙いだ。


「ぐぉ………っ!」


思い切り受けてしまい、壁に叩きつけられるジオさん……ピクリとも動かない。

慌てて駆け寄ってヒールを唱える……が、ジオさんの顔色はどんどん悪くなっていく……

口から、血が溢れる……どうしよう!?どうすれば!!


「水よ、わが力を持って、目の前の敵をーー」


3カウント……だが、ジオさんは……つぎはぎのゴブリンはジオさんに近づいてくる。

確実にとどめを刺しに来ているのだ。しかし……ミアさんが割り込んできた!


「ジオは……死なせない!」


ミアさんは盾を両手に構えた。その顔は、決死の覚悟に満ちていた。


「ジオは……私が守るんだから!」


その時、ネロさんが叫んだ!


「フレッシュゴーレムだ!」


フレッシュゴーレム……死体を継ぎ合わせた、ゴーレム……!?


「額のeの文字を狙え!」


emethと書かれた、額の小さな文字。

言われなければ、気づかないような。


「水よ、わが力を持って、目の前の敵を、……貫け!」


魔法が、一直線に走る。

人では到底届かない高さに、アルドさんの魔法が炸裂する!

eの文字を貫かれたフレッシュゴーレムは……解けて、沢山のゴブリンの死体になった。



残った一匹の小さなゴブリン……

おそらく、このゴブリンが今回の犯人……

邪法の研究書を持って逃げ出そうとした所を、エンツォさんの突撃とアルドさんの魔法でとどめを刺した。

けれど、ジオさんが……


「ジオ、ジオ!目を開けてよ!ねえ!」


必死に呼びかけるミアさん。……ふと出発前に買った、あの小瓶のことを思い出しました。


「ミアさん!蘇生薬!!!」

「あっ……!」


ミアさんは慌ててかばんを探り、ジオさんを横たえて、蘇生薬を自分で口に含みーージオさんに口づけて。


……全員、さっと目をそらした。

(み、ミアさんたら大胆……。)

私はこっそり真っ赤になっていました。



「今回は迷惑かけちまって悪かったな、皆。」

「本当よ!どれだけ心配したと思ってるの!」


あのあと回復したジオさんに、さらにヒールをかけて、ジオさんは完全に復活しました。

ミアさんは涙目で、それでも嬉しそうにジオさんに寄り添っています。

……二人が離れることにならなくて、本当に良かった。

二人ともーー皆とも。もはや離れがたくなっている私は、そう思いました。

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