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ウエディングフォトと乙女の条件

「ウエディングフォトの依頼!?」


私たちは全員驚いた。


「そうなんです。歩いてる彼を見てビビッときて――」


カメラマンはビシッとネロさんを指さしました。


「彼こそ理想の花婿役!どうか私の被写体になってくれませんか!報酬は弾みます!」

「駄目だ!というか、それなら俺が花嫁役をやる!!!」

「…………エンツォ……」


いきなりカメラマンの要求を断るエンツォさん。

……花嫁と花婿、逆のほうが似合うのでは?

そんなどうでもいいことを考えた。ネロさんは戸惑っています。


「いやいやあなたじゃ花嫁役は無理でしょうよ。それより1日だけでいいんです!相手役もこちらで用意してあるんです!お願いします!」


どうしても、と頭を下げられて、ネロさんはオロオロしました。

けれど、カメラマンの人のあまりに切羽詰まった様子に――


「…………分かった。」


ついに陥落したのでした。


「ネロ…!?アルドからも何か言ってやってくれよ!」


エンツォさんは私の肩を掴んでガクガクと揺さぶります。けど……


「ネロさんが決めたことです。エンツォさん、あなたはネロさんの家族でも恋人でもないでしょう?」

「俺は!」


エンツォさんが声を張り上げる。けれど、すぐに声を落とした。


「………俺は……。」


それでもすぐに顔を上げ、カメラマンの方に向き直り――、


「それなら俺たち全員でアシスタントをする!それが無理ならネロの話はナシだ、いいな!」

「「「「えっ?」」」」


私達は、いつの間にか巻き込まれてしまった――



「まったく勝手に決めやがって……」


ジオさんは困っているようでした。


「だいたいアシスタントって何すりゃいいんだ?」

「お化粧とかー、衣装選びとか?楽しそうだね、エルナちゃん!」

「そうですね!服選びには自信がありますよ!」


女性陣2人は今日も楽しそうですね。

そして、エンツォさんとネロさんは……


「ネロ……今からでも、断れないか?」

「エンツォ……」

「……連れて逃げた俺が言うのもなんだが、それでも……俺はお前の」

「一緒に逃げたのは俺も同じだ。お前だけが、自分を責めることはない、エンツォ。」


なにやら深刻な話をしている……あまり踏み込むのは失礼ですね。

私はみんなに目線と話を戻す。


「服選びや化粧は専門の人がやってくれるそうですよ!私達は荷物運びや道具の調整なんからしいです。」

「えー、つまんなーい!」


ミアさんから不満の声が上がった。


「まあ、決まってしまったものは仕方ありません。」


私はリーダーとして言った。


「エンツォさんが決めたことではありますが…、実入りも悪くありません。放っておくのも後味が悪い。……やりましょう。」

「アルド……!」


エンツォさんが目を輝かせている。自分のせいなので、少しだけ反省してほしいのですが……


「体力勝負……私が行っても役に立てるでしょうか……」


エルナさんは不安げだ。けれど、安心させるように私は言った。


「花を華やかに見せるために整えたり、光の反射板を持つ仕事なんかもあるそうです。大丈夫ですよ。」

「力仕事は私に任せておいてよ!エルナちゃん!」


……ミアさんの言葉は、異様な説得力がありました。



そして当日、ウエディングフォトの見本を撮る教会……

ビシッとタキシードで決まったネロさんは、貴公子様もかくや、という美男子っぷりでした。

……ネロさん顔隠しがちなのに、あのカメラマン、よく見抜きましたね……


「ネロ〜〜〜………」


エンツォさんはなぜか感涙しています。お父さんか何かですか?

その横ではせっせとジオさんとミアさんがウエディングにふさわしい舞台を作り上げています……

エンツォさん、泣いてないで手伝ってあげてください……

私とエルナさんはああでもないこうでもないと

カメラマンに指示されて花の角度を変えたり、挿し直したりこれはこれでいそがしい。

やがて、花嫁役の女性が現れました……さすが、スカウトされただけあって美人……

そして撮影の番になり、カメラマンは並んだ2人を撮っていました。

……ぱっと見完全にお似合いの美男美女です。……まるで、本物の花嫁と花婿のようだった。


「なあ、アルド……」


エンツォさんが話しかけてきました。


「ネロもいつかは、あんなふうに、俺の手の届かないところへ行ってしまうのかな……」

「私にはそうは見えませんけどね。ネロさんはいつもあなたのとなりで、あなたとばかり喋ってるじゃないですか。……最近は、私たちともなんとなく、気持ちが通じるような気はしますが。」

「そうかな……そうだと、いいな……今だって俺は、あいつを連れて逃げてしまいたいよ。」


ぼんやりと考える。この2人って、もしかして?

しかし、そこで花嫁役の悲鳴が上がった。

はっとしてそちらを見ると……ユニコーン、だって……!?


「美しい乙女よ……その相手との結婚はやめておけ……」


ユニコーンの重々しい声が響く。


「その相手は貴女の相手ではない……いや?貴女も乙女ではない!?」


………重々しく現れて、いきなり混乱しています……何しに来たのでしょう?


「浮気者と浮気者の結婚……許すまじ!」


いきなりのユニコーンの攻撃に、ネロさんは花嫁役をとっさに庇います。

しかしネロさんはシーフ、とても一人ではあんな相手とは……!


「大丈夫ですかネロさん!」

「いきなり現れて失礼な馬ー!」

「こいつが噂の処女厨の馬か!」

「ええい煩い!だれが処女厨だ誰が!」


ユニコーンは神聖な馬……のはずなのですが、普通に気にしているのかな……


「ネロは俺が守る!」


エンツォさんが堂々と名乗りを上げました……何このこんがらがった様相……

正に事態は一触即発、こんな存在に勝てるのでしょうか――


「ええい全員男か彼氏持ちではないか!清らかな乙女はいないのか乙女は………ん?」


馬はエルナさんのほうをじっと見ました。

エルナさんはびくっとして一歩下がろうとしました、が――


「清らかな乙女よ……こんな所にいたのか……!」


ユニコーンはいきなり態度を変えて、エルナさんにまとわりつき始めました。


「ああ……清らかな空気……素晴らしい……乙女……」

「い、いきなりなんなんですか……」


一触即発、と武器を構えた私たちのこの心境、どうしてくれるのでしょうかこの馬。

そうしてユニコーンはエルナさんに甘え倒し、カメラマンはその様子を連写しまくり、

エルナさんは困り果て、私達はぽかんとしながらもその様子を見ていることしか出来ないのでした……



「いやー、頼まれていたウエディングフォトの見本も撮れたし、何よりも伝説の存在、ユニコーンを撮れたのは大きかった!」


カメラマンは大満足。私達はげっそりとしながらもギルドに帰ってきました。


「もちろん追加で依頼料は増やしておいたから!今日は本当にありがとう!」


カメラマンはるんるんと去っていき、私達は結構な大金を手にしたのです、が……


「なんで私たち、変な依頼にばっかり当たるんでしょうねぇ……」


全員が、一斉にため息をついた。

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