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魔獣少女たちの同窓会 ~かつて最弱だった魔獣たちは最強まで上り詰めたので再会するようです。~  作者: カモミール
4章:昔の冒険

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86話.白装束の少女


ルナが出て言ってから私は思案に暮れていた。

ルナは、白装束の少女に1日考える時間が欲しいと伝えており、彼女もそれを承諾していた。


けど私に考えて欲しい?なんで私なんかに?

仮に白装束の少女に協力することになったとしても、

私にできることはほとんだどないはずだ。


それなのにルナは私に決めろという。

そうやってあの少女を助けてどんな弊害がありうるのか、何一つ分からないのに。


少女のペットをさらったのは貴族だという。

王と貴族の関係は対等に近いらしい。

もしその貴族と問題を起こして、ルナが王女の立場を追われたら。


いや、でもそんなことをモノともしないルナの行動が私は見たいのであって。

いや、でもそのルナの行動を私が決めるのはおかしくない?


だめだ。頭がこんがらがってきた。

頭から湯気がでているように、脳がショート仕掛けていた時、

ちょうど私の思考の真ん中にいた白装束の少女が扉から出てくる。


「どこに行くの?」

この少女はこの教会から出る理由はとくにないはずだ。


「…偵察」


私の問いに対して少女は視線だけこちらを向き、答えた。


「偵察って何を?」


予想外の返答が返ってきて私は首をかしげる。


「気になるならついてくる?」


私はこくりと頷くことで返答し、少女についていくのだった。




◇◇


人気の少ない路地裏を歩く。

会話はなく、気まずさに目を逸らしながら私は少女の後をついていく。



「あなたはどうしてあの人間についていっているの?」

すると少女が突然話しかけてきた。


「え?」

私は思わず凝視してしまう。

どこかこちらに敵意さえ見え隠れしている彼女が私に話しかけてくるとは思わなかったのだ。


少女はこちらに振り返りもせず、歩き続けている。

私もその後に続いた。

「それは、面白そうだから」


「面白い?」

私の返答に少女は眉をひそめ、そこではじめて私の方に視線を向けた。


「うん、何をするか検討もつかない。けど、一緒にいるとなんでかワクワクするんだ。それが心地よくて見ていたいから、かな。」


私は笑っていう。


「…あんな卑怯なのに?人間なんてみんな同じよ」

初めて感情を見せたその少女の言葉からは強い怒りを感じた。

「卑怯?」

何のことか分からずに首をかしげる。

ルナ何か卑怯なことしてたっけ。誠実そのものと言っても過言でないルナがそのように思われている

ことがとても疑問だった。


「あなた達、貴族を無理やり罠にはめさせてたじゃない。じぶんで手も汚さずに」

「ああ!」


おそらくマクラがさっき貴族と思われる少年を糸の罠で転ばしたことを言っているのだろう。

この少女の視点だとそう見えたんだ。

マクラはテイムされてると思われてるし。


得心が行ったと、手があれば手を叩きたくなる。

スライムなので手はないが。


「あれは」

「もういいわ」


弁明しようとするが、少女は会話を打ち切ってしまった。

少女は少し速足になる。

あれは、マクラが勝手にやったことなんだけどなぁ。

説明の余地もなく会話を打ち切られ、タイミングを失ってしまった。


そのまま私たちはお互いの歩調を合わせないまま目的地に向かうのだった。



◇◇



都市の中心から離れた緑豊かな郊外に、その貴族の館はひっそりと佇んでいた。 広大な敷地を囲む生け垣の向こうには、手入れの行き届いた庭園が広がり、その奥に本館と思しき豪邸が立っている。


「ここが?」

「ええ、ペルニシアが捕まっている場所」

少女が私に手を差し向けてくる。


私がその手にちょこんと乗ると、少女は肩に私を乗せ、身軽な動きで飛び上がる。


壁を駆け上がり、目の前の高い塀を一瞬で乗り越えていく。

「うわっ」と思わず声が出る。


衛兵が入り口の前に立っていたが、少女が飛び乗ったのは、建物の横手の塀だったため、気づいてはいないようだ。

そのまま少女は、塀を蹴ってベランダに飛び移る。


その身のこなしに驚いて、少女を私は凝視する。だが、少女はそのことに気にする様子もなく、

「見て」とささやく。


そのベランダにある窓のから部屋の中を覗くと、鳥かごの中に一匹の鳥の魔獣が鎮座していた。


小鳥のように小さい魔獣だった。その大きさから察するに脅威ランクは私と同じEランクといったところか。

真っ先に目につく特徴と言えば宝石のように輝く蒼の瞳だ。


羽は乱れており、全身に斬り傷が見えていて、元気にはとても見えなかった。

心なしかやせ細っているようにも見える。


隣を見ると、少女は少しだが、顔を苦悶に歪めていた。

今まで能面のような顔か仏頂面しかしていなかった少女がこんな顔をした事に少し驚く。


「あれが?」

「ええ、ペルニシアよ」


ペルニシアという鳥の魔物は、少女に気づくと飛ぼうと羽を羽ばたかせる。

しかし、鳥かごの柵に邪魔されるので、ペルニシアは寂しそうな顔をしながらこちらを見ていた。

その表情には、少女を見て安堵をしたことが感じ取れた。


「かわいい子でね。昔からスキンシップが好きで私に寄り添ってくるの。それで私がお返しに頬を当ててあげるとこの世の幸せみたいな顔をするの」

その情景を思い浮かべてか、少女は微笑を浮かべる。


「でも今じゃ檻に閉じ込められて、何かの実験をされてる。

私も毎日こっそり見に来てるけど、日に日に弱っていくあの子をもう見てられないの」

「だから、ルナに助けてって」

「ええ、物陰から見てたけど、あなた達強いみたいだし、それに…」

「あのルナって人、魔獣マニアなんでしょ」

「え?」

「ほら、あなたたちみたいな珍しい魔獣を引き連れてるし」


珍しいというのは、私やマクラがしゃべっている事を言っているのだろう。

普通の魔獣は言語機能は備わってないみたいだし。


「いや、ルナにそんな趣味ないと思うけど」

私の言葉に少女は「ちがうの?」と疑わしそうな顔をした。


少女は再びペルニシアと向きなおる。

触れ合いたくてもできない沈黙の時間。


そんな時間がしばらく続いた。

その時間だけでも、両者の温かい顔を見れば2人の間に絆があることを

察せられるには十分だった。


「また来るわね」

そう言って少女は館の後を去ろうとした。


「ちょっと待って」

私は少女が去ろうとするのを呼び止める。

「なに?」

少女は振り返る。


「君があの子を助けようとするのは何で?」

「どういう意味?」


少女はいぶかしげな眼を向けてくる。

半分はにらみ付けられているような気がした。

「あの子が君にとって大切だってことは私にも分かった。けど、それでも絶対に勝てない相手に歯向かってまで、助けようとするのはなんで?だってあの子は」


「魔獣だからって言いたいの?」

私はコクリと頷く。


「そんなこと関係ない。相手がだれかも関係ない。だって…」


そこまで言って、少女は言葉を止める。

「とにかく、私はあの子が大事なの。ペルニシアを救うためならなんだってする」

その奇麗な緑の瞳の奥にある光を見て、私はこの少女がどういう人間なのか分かった気がする。

彼女はもがいているのだ。

自分の力が及ばない目的を叶えようと必死に。


だから不信感を抱いているルナにも頭を下げた。


私ならどうするだろうか。

ルナが本当にピンチの時、この少女のように私も抗うという自信はあった。


この世界の強さが絶対の法則に歯向かってでも。


でもそれで私に一体なにができるだろう。

考えるだけで怖ろしくなる、何もできない現実に直面する光景を幻視する。


そして、この少女はそんな状況の真っただ中にいるのだ。

私が次の言葉を紡ごうとして…



その時。


バタンと大きな音がして扉があいた。

振り返ると中から2人の男が入ってくるが見えた。


私たちはその男たちがこちらに気づく前に、窓の横に隠れる。


「おい!!ゲンザルマン!ペルニシアの実験はどうなっている!!」

「は、はい。死力は尽くしているのですが、蒼眼はやはり未知の部分が多く、

解析にもう少し時間がかかるかと。申し訳ございません。ゼイ伯爵」


「ゼイ伯爵って」

その名前を独り言ちる。

その名前は覚えがあった。


「知ってるの?」

少女がささやく。

「うん、前にいた村を卑怯な手で乗っ取ろうとしてた悪い貴族の名前。多分一番偉い貴族」


「あいつが黒幕ってことね」

少女はゼイ伯爵を睨みつける。


そんな視線には当然気づくことなく、ゼイ伯爵は続ける。


「ふざけるな!!いつまでかかるんだ!こっちはあの化け物にここを乗っ取られかけてるんだぞっ!」

ゼイ伯爵は、ゲンザルマンと呼ばれた男の胸倉をつ噛み、詰め寄った。

「あ、あの女ですか」

「そうだ!状況はお前も分かっているはずだぞ。このままいけば我々は一生あの女の奴隷だ。だが幸いなことに奴は我らが魔法の実験を続けることは禁じていない。ルナ王女に刺客を送り続ける限りはな」



「え?」

私の喉から頓狂な声が出る。

突然ルナの名前が出てきて、頭がフリーズする。

刺客を送るだって!?何のために?


セレーネの困惑を他所にゼイ伯爵の言葉は続く。


「だが、まだ逆転の目はある。それがコイツの眼だ。これと片割れの力があれば、あの化け物さえ倒しうる力に成る。もうもたもたしている時間はないっ!」

「しかし、先程も言いましたが解析にはまだ時間が」

ゲンザルマンはおろおろしながら言う。


「ぬるいッ!貴様にはこれが我が都市の命運を賭けたプロジェクトだという自覚が足りんのだ!もう貴様などに任せておけん」


そう言うと、ゼイ伯爵は乱暴にゲンザルマンを突き飛ばす。

そして怯えた顔をしていたペルニシアに杖を向けた。

すると、ペルニシアの様子がみるみる内に変わっていく。


目を凝らすと、そこにはペルニシアから大量の魔力が溢れ出ているのが見えた。


あまりに鮮明に見える魔力の奔流。目を凝らして魔力をやっと見れる程度の私でもここまではっきり見えるなんて。なんて魔力。



「ちょっ、なにを!?」

ゲンザルマンが困惑した顔で言う。


「初めからこうしておけばよかったのだ」

質問には答えずゼイ伯爵は、どこか愉悦のこもった顔で言う。


魔力があふれ出すそれは暴走に近かったようだ。

ペルニシアは苦しみ、絶叫を上げる。


まずいよこれ。はやくルナに伝えないと。

そう思い、私は振り向いた。


だが、私は分かっていなかったのだ。あのペルニシアという魔獣にあそこまで親愛の情を向けていた少女がこの光景を見てどう思うのか。


「ペルニシア!!!」

少女が悲痛な顔で大声をあげる。


その声に反応して、ゼイ伯爵と付き人の男が振り向く。


しまった。今気づかれたらルナの助けを呼べない。けどルナがいないと私じゃ…





読んでくださりありがとうございます。


今話は切れる場面がなく少し長めになっていますが、その分全話で謎だった白装束の少女の内面やこの都市の状況などを書けたと思っています。

いかがでしたでしょうか?


話は変わりますが、なろうのリアクション機能が改修されましたね。

いいねの表現できる範囲が広くなったみたいです。

話の反応が知りたいため、感想を書くのが面倒…という方はぜひいいねで

反応を教えて貰えるとうれしいです。

私も新機能がどんな感じなのか気になっているので、試してみてください(笑)


◇◇


下にある☆☆☆☆☆から、評価をくださると嬉しいです。


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