85話.自己判断
「子供?」
私は首をかしげる。
身長はルナの胴体くらいまでの高さだ。
ルナ自身背が低いし130くらいだろうか。
ところどころ汚れた白装束で身を包んでおり、体は明らかに成長し切っておらず、
女性特有の凹凸が欠片もみられない。子供だということが一目でわかる。
瞳はまるで宝石のように奇麗な緑色だ。あと他の特徴と言えばその白銀の髪だろうか。
「あなたは?」
突然現れた少女に対し、ルナは前かがみになり視線を合わせて問いかける。
少女は私とマクラに目を合わせた後何かを訝しむような眼でルナをじっと見つめる。
しばらくだまったまま疑念と何か汚いものを見るかのような眼を向けられ、
ルナは困ったように顔をかしげる。
「えっと」
「あなた、とても強いのね」
少女がやっと口を開ける。
「でもクソ卑怯わね」
少女の突然の罵倒に周りが凍り付いた。
「えぇ」
謂れのない暴言にルナはショックを受けたのか塞ぎこんでしまった。
「君、突然何てこというんだ」
私は少女に抗議すべくズイッと前に出る。
だが、フンッと少女はそっぽを向き、こちらの言葉に耳を貸そうとはしなかった。
私がもっと強く言おうとした時、マクラが私の前に立った。
「女の子がクソなんて言葉使うもんやないよ。それで何か用なん?頼み事する態度やないとおもうけどね」
「…そうね。ごめんなさい。つい」
「つい!?」
私のツッコミを無視し、少女はルナの前に立った。
落ち込んでいたルナは、頭を上げて少女の方を見る。
そんなルナに対し少女は深々と頭を下げる。
「助けてほしいの。お願いします」
◇◇
街のはずれに廃れた教会があった。
そこに白装束の少女は入っていき、ルナたち一行もその後に続く。
「こんな所に住んでるんですか?親御さんは?」
ルナが聞く。
「親は死んだ。私は1人でここに住んでる」
「あ、ごめんなさい」
「いいわよ。そんなこと。それより本題に入りたいのだけど」
「分かりました。詳しい話を聞かせてもらえますか?」
ルナが言う。
ルナは私やマクラが相手じゃないから敬語モードは行ったらしい。
少女は無言で近くの半壊している木の椅子に座るように促す。
灯りは机の上のロウソク一つで、かろうじて相手の顔が見えるくらいの灯りしかない。
ルナと私とマクラがその上に乗るとミシミシと音が鳴った。
「…私の…ペットを助けて欲しいの」
「ペット?」
「ええ、ペルニシアって言うの。魔獣だけどとてもいい子よ。私はその子と一緒にずっと幼少期を一緒に過ごしたわ。でも連れていかれてしまったの。貴族に」
ここは魔法都市ともいわれる場所だ。
魔獣も魔法の実験体として使われることがあるから気を付けてとルナから話を聞いていた。
「ペルニシアは、彼らに実験材料として囚われてる。だから、助け出してほしいの」
その予想外の話に、全員が固まる。
貴族の厄介さは、私とルナは前の村のことでよくわかっている。
貴族に連れ去られた魔獣を救い出すことなどできるのだろうか。
貴族は王族とも権力が近いらしい。
おそらくルナが王女であることを主張したとしても救出は困難なんじゃないかと思う。
「貴族からって」
ルナの困っていう様子が自分の推論を裏付けていた。
そうすると、少女は予想外の提案をした。
「もちろんただとは言わないわ!もしペルニシアを助けてくれるなら、私のもう1匹のペットをあげる。
フェルミナって言うの」
提案の不明さに全員が顔をかしげるのだった。
◇◇
ルナとセレーネとマクラは、少女からのSOSにどう応えるか話し合う為に
隣の部屋に案内してもらってた。
少女には部屋の外で待機して貰っている。
少女から聞いた話をすべて要約すると、少女は両親と死に別れ、ペルニシアと2人で暮らしていた。
ところが、ある日どこかの貴族たちがペルニシアを奴隷とするため、
連れて行ってしまったのだという。
よく聞く貴族の横暴ではあるが、相手が貴族である以上、下手に手を出すと
どうなるか分からないため、少女の頼みを受けるか3人で話合うというわけだ。
「どう思う?」
ルナが議論の口火を切る。
「そうやな。困ってるってとこはほんとやと思うわ。何か隠してそうな気もしたけどな。それに別にフェルミナとかいうペットはいらんけど」
「そうね。報酬はともかく助けてあげたい。けど、お父様に掛け合っても難しいと思う。だから、やるなら非合法な手段を使うしかないかな。セレーネはどう思う?」
ここで予想外に私に話題が振られ、私は困惑する。
「え、私は…」
2人の視線が私の方に向く。ルナは本人が言うように助けたい気持ちが強くあるのだろう。
ルナはそういう人だ。
だが、それでもこうして議論しているのは、私たちの身の安全にも関わりがあるからだ。
とはいえ、いつぞやルナと話した時のように私はルナの生き方の邪魔をしたくないし、
彼女の立場を考えれば私が決める事ではないと思った。
「ルナの決定に従うよ。やっぱり一番影響が大きいのもルナだと思うし」
私はそう答える。
ルナは王族だ。その立場に影響する問題だし、それが一番いいとだろう。そうして、私はそのルナの選択をただ見ていればいい。
だが、そう言った私をじっと見つめた後、ルナはゆっくりと首を振った。
そして、私が予想もしないことを言う。
「…いいえ。やっぱりセレーネに決めてもらうことにしましょう」
「え?」
そんなことを言われて私は硬直し、目をしばたたく。
「それがどんなものでも私はそれに従うから。明日までよく考えてみて」
私の反応などお構いなしに一方的にそう言って、ルナはその部屋から出て行ってしまった。
私は呆然とルナの背中を見つめる事しかできなかった。
読んでくださりありがとうございます。
下にある☆☆☆☆☆から、評価をくださると嬉しいです。
よかったら感想もお願いします。




