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魔獣少女たちの同窓会 ~かつて最弱だった魔獣たちは最強まで上り詰めたので再会するようです。~  作者: カモミール
4章:昔の冒険

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81話.前の話と目線を変えたセレーネVSマクラ

「ぐえっ!?」


私の体当たりはタランチュラに直撃し、タランチュラは堪らず後ろに吹き飛んだ。


「なっ!?どうやって我の糸から抜け出したんや??ただのスライムごときが」

このタランチュラ、なんて失礼なやつだ。

スライムだって必死に強くなろうと頑張ってるんだぞ。

「ただのスライムで悪かったね。教えてあげないよーだ!」

べーっと舌を出して相手を挑発する。


確かに私は弱い。


けど相手だってEランクの魔獣なんだ。

そして私はあのルナから修行を受けているんだ。だから私だってやれるはずだ。


タランチュラの魔力を観察する。

青空教室でルナに教わったことを思い出す。

相手の魔力を観察するのは戦闘の基本中の基本だ。

それは前にゴブリンと戦ったときに実感としてよくわかっていた。


タランチュラの魔力がゆらいだ。


あの時と同じだ。相手が動くよりも早く、魔力の動きで相手の次のアクションが分かる。


タランチュラは突進し、鋭い前足を突き刺そうとしてくる。

私はそれをヒョイとかわして、また体当たりをぶちかました。

ぎゃっと悲鳴をあげて、タランチュラは地面に背中からぶつかった。


「あんた、ええかげんにせぇよ。地味に痛いんやその体当たり」

「いや、何言ってんの!?襲ってきたのそっちでしょ」

あまりに理不尽なことを言ってくるので、反射的に言い返した。


いけない、相手のペースに乗るな。冷静になれ。

今、戦況は相手の動きが先読みできる私が有利だ。

糸攻撃も私には効かないし。


相手は私の体当たりを警戒している。

なら、ルナから教えてもらったことを活かしたら、不意を付けるかもしれない。


グッと力を込めて、タランチュラに飛び掛かる。




◇


「セレ―ネはさ、その体の特性を活かして戦うのがいいと思うよ?」


迷いの森に入る前、2度目の青空魔術教室でルナは言った。

「どういうこと?」


「魔獣ってさ、大抵はその体の特性を活かして戦うのが一番強いんだ。セレーネの場合はそのスライムの体を活かした変形自在のボディ。それとその体を構成する水魔法を利用した攻撃とかどうかな」


「それってどうやるの?」


「前、村で畑仕事をした時のこと覚えてる?あの時仕事を楽するために色々と体を変形させてたでしょ。あれと同じ要領だよ。肉体変化か、いい能力じゃない。知恵と工夫次第で格上だって倒し得るし、とっても強力だよ」


◇


タランチュラは、腕を使ってガードの体勢を取る。


そう来ると、思っていた!

思い通りに動いてくれるタランチュラを見てほくそ笑む。


セレーネはすかさず薄く体の面積を広げた。

そして、その液体の体はタランチュラのガードをたやすくすり抜ける。

だが、変化した体での攻撃はそこで終わらなかった。

薄べらくなった液体の体がタランチュラの顔をふさぐ。


「ガボガボた、たすけ」

蜘蛛は息ができなくなり、たまらずもがく。

だが、スライムのべったりとひっついた液体の体は簡単には引きはがせない。


やった!これで助かった。

私は勝ちを確信し、半分安堵していた。


目論見通り、次第にタランチュラの動きが鈍くなって行く。

やがてタランチュラの手足が痙攣し始めた頃、

諦めたのかタランチュラは逃げようとしなくなっていた。

「ま、まいった。我の負けや、もう、攻撃、せ、んから、た、助け」

代わりにタランチュラは、必死に顔をスライムボディから離して命乞いをする。


「…」

予想外の展開だった。

数舜考えるが、私は、タランチュラを解放してあげることにした。

勝負はついたのだ。なら命を奪うまでしなくていい。そう思ったのだ。


「ゲホ、ゴホッ、ど、どういうつもりや、あんた」

参ったというからやめてあげたのに、何故かタランチュラは突っかかってくる。

「どういうつもりって。もう私たちに手は出さないんでしょ。だったらもう戦う理由がないじゃん」


「…そんなんあんたよう…いや、そうやな。あんたはんのいうとおり、我の負けや」


また戦うことになるかもしれないと少し焦ったが、どうやらタランチュラは思いのほかあっさりと納得してくれたようだ。そして、かなりしょぼくれた顔をした。


その様子を見て私は安堵の息をもらす。

思ったより素直な子だ。

もしかしたら、この前村であったオークキングのキンちゃんみたいに友達になれるかもしれない。


そう思って名前を聞くことにした。

「じゃあルナの糸とってくれないかな。えっと名前なんていうの?」

「ああ、我は」


だが、自然界の生存競争はそこまで甘くなかったらしい。

タランチュラが答えようとしたとき、黒い影が乱入し、タランチュラを吹き飛ばしたのだ。


「あぐっ!」

タランチュラはうめいた後、絶叫をあげた。


私はあまりの出来事に唖然としてみている事しかできない。


黒い狼。ルナにこの森に生息していると聞いた、コボルトとかいうCランクの魔獣。

Cランク…私より2ランクも上だ。

この前格上のゴブリンに勝ったが、ゴブリンもランクはE。こいつらは文字通りレベルが違うのだ。


私は足がすくんで動くことができずにいた。


だが、その時私は信じられないものを目にした。

なんと、不意打ちを喰らったタランチュラがガクガクと震えながらも立ち上がったのだ。


なんで、立ち上がれるの!?あんな強力な不意打ちを受けて。


コボルトはその満身創痍の様子をみてウオーーーー!、と吠えた。

すると、十匹ほどの狼が集まってくる。


相手が生きてるのを見るや、即増援を呼ぶ。

なんて狡猾なんだろう。

Cランクがあんなにたくさん。ルナも動けない。太刀打ちしようがない。もう終わりだ。


私の胸は絶望でいっぱいになる。


だが、そんな私とは対照的に、諦めないものがいた。


「はぁ、はぁ、た、楽しそうやね。ふ、不意打ちで後ろから突き飛ばした、くらいで、そんな嬉しいん?あいにくこんなん、痛ないねん。我はいずれ最強になる蜘蛛やぞ。お前らなんか…返り討ちにしたる!」


啖呵を切ったのは、瀕死のタランチュラだった。


私は目を見開く。

なんで、この状況でそんな強がれるの?

相手はCランクの魔獣で、私と同じEランク魔獣のあなたに勝ち目なんてないのに。


タランチュラが言った最強という言葉がひっかかった。


私と同じ最弱魔獣のタランチュラ。そんな魔獣がなんで最強になるなんて言えるの?

私なんて弱さをいつも言い訳して、ルナの影に隠れて、どこか諦めてたのに。


でも、私だっててっぺんを目指したことはある。


初めて生まれた時、他のスライムより高くジャンプして、その頂点の景色に憧れた。

上に行こうと冒険の旅に出た。


その決意のすぐあとに冒険者たちに襲われてそんな気持ちとっくに忘れていたけれども。


でも。

同じ最弱魔獣のこの子が同じ最強を目指してるなら、私だってまた目指してもいいんじゃないかと思える。


そうだ。あの時の気持ちを思い出せ。

私はこの世界を楽しみ尽くしたい。いつか1番上の景色を見てみたい。

そう思っていたはずだ。それが最初の衝動。


その道を目指すなら、まずはこの大切な気持ちを思い出させてくれた目の前のあの子を助けてあげなきゃいけない。


「私のライバルに、手ぇ出すなぁ!!」

私はタランチュラを襲っていたコボルトに横から体当たりをぶちかました。


コボルトが後方にに吹き飛んでいく。


「あ、あんた。なんで」

疑問の表情を浮かべてタランチュラは問うてくる。

あなたの啖呵を聞いて感動したから、なんて言わない。なんか恥ずかしいし。

けど、代わりにもう一つ感じたことを言う。


「だって。こいつらむかつくし」

私は、コボルトに体当たりをした2つ目の理由の方を言った。

「へ?」

「これは私と君と勝負だったんだよ。私の珍し〜い勝ちだった。なのに、勝負がついたところを狙ってくるとか、ほんとないわ。私の栄光の勝利を汚されたみたいでむかつく」



グルルとコボルトが唸り始めた。

攻撃を再開するつもりだろう。

正面からまともにぶつかって勝てる相手じゃない。


ではどうするか。

そのヒントは私の隣のこの蜘蛛の魔獣が握っていた。


「来るよ。動ける?えっと」

「…我の名前は真蜘羅(まくら)や。よろしゅうな。スライムはん。正直動けへんけど糸で奴らの動きをとめるくらいはできる」

「じゃあ、援護は任せるよ。マクラ!あと私はセレーネ。セレーネって呼んで」



次は二匹のコボルトが突っ込んできた。

まともにぶつかれば粉々になる一撃。


でも大丈夫だろう。だって。


私は突っ込んでくるコボルトに体当たりを仕掛けた。

コボルトと激突し、ズガンと衝撃音がする。


だが、事前に予想したように粉々にはならなかった。


スライムのぶにょっと弾力のある液体の体はコボルトの勢いを一瞬止めたのだ。


「ここやな!」

「いまっ!」

私とマクラの考えがシンクロした。


マクラは動きが止まったコボルトにすかさず糸を吹きかける。

それは、私ごとコボルトを捉えた。


2匹とも我の糸の網に捕まった。

だが、私はすぐにその液体の体で糸を潜り抜ける。


結果、蜘蛛の糸にコボルトだけが捕らえられる結果になった。


コボルトは糸を爪で引きちぎろうとするが、

コボルトの爪程度で我の糸が切れることはない。


やった!うまくいった。

マクラの戦いを見て思ったのだ。戦いとは強い弱いだけに左右されない。工夫次第でいくらでも出来ることはあるって。


「ルナを捉えられる糸をあんたらごときがちぎれるわけないでしょ」

私はそう吐き捨てるように言う。




二匹、三匹

学習もしないで突っ込んでくるコボルトを同じ方法で封じていく。



なんだろう。なんかワクワクする。これが連携するってことなんだ。

楽しい。


だが、そのときマクラの背後から一匹のコボルトが迫ってくるのが見えた。

私は背筋が凍りつくような寒気を感じた。

マクラがもう一度あの体当たりをくらったら。


「危ないっ!!」

必死に叫ぶが遅い。マクラが気づいた時にはもう間に合わない間合いまでコボルト

が攻めてきていた。


あれじゃかわせない。

私は、マクラが粉々に吹き飛ばされる状況を幻視する。


だが、そうはならなかった。

ヒーローはどうやらいつだって遅れてやって来るらしい。


「やああああああ!」

ズパンと鈍い音を立てて、コボルトの首が宙に浮いた。


それはルナだった。


「ルナァ!」

マクラが死んでしまうと思っていたから。

私はその劇的な乱入に感動のあまり、声を上げていた。


だが、すぐに異変に気付いた。

ルナの様子というか、見える魔力が違うのだ。


禍々しい。あれはあの青空魔術教室で一瞬みたときのようだった。


ルナはコキコキと首を鳴らして、ニイと凶悪に笑う。

「あー、やっと自由になれたぁ。動けないってホント気分悪い」

口調も仕草もいつものルナのものと全く違う。


「あ、ありがと」

マクラが礼を言うと、ルナはとても冷たい目でマクラを見つめ返していた。


「ルナ?」

困惑の余りに私は彼女の名を口にしていた。


「私、あなたのことは許してないわよ。でも今はともかく、セレーネを攻撃してくるこいつらをぶちのめすわ」


そういってルナはコボルトの群れに突っ込んでいく。


剣を一振り、二振り、三振り。

それで一頭、二頭、三頭とコボルトは切り裂かれる。残ったコボルトはどこかへ逃げていった。


その圧倒的強さはいつも通りのものだ。


だけど、何かが違う。


なんというか、うまく言えないがルナから放たれる魔力は別人のように冷たかった。


その圧倒的な蹂躙を私はただ見守ることしかできなかった。











読んでくださりありがとうございます。

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