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魔獣少女たちの同窓会 ~かつて最弱だった魔獣たちは最強まで上り詰めたので再会するようです。~  作者: カモミール
4章:昔の冒険

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71話.悪巧み

「お…ぉ」


オークは、うめき声をあげ、糸が切れた操り人形のように倒れた。


「ルナ」


私はルナに駆け寄る。


「こんな怪物を…すごい」

羨望のまなざしを向けると、ルナは困ったように顔をそむけた。


「いえ、そんな。運が良かっただけですよ。

このオークさん、テイムされてたからか、動きが鈍かったですし」


「そっか。だからなの?」

「え?」

「こんな怪物に向かって言った理由。絶対に勝てるって分かってたから」

そう。ルナがオークに向かって言った理由は、自分の力で確実に勝てると

分かっていたからだ、と納得がいった。

そうに決まっている。自分に危険があると分かって立ち向かう奴なんているわけがないのだ。


だが、ルナは私のその考えを肯定しなかった。

「それは違いますよ」

「え?」

「確かに勝算は高かったです。でも、そうでなくても私は戦ったと思います」

「なんで!?自分が死ぬかもしれないのに」

私が食い下がると、ルナは困ったように笑った。

「事前に調べたんですが、この村の人たちの生活はあの畑に依存してるんです。作物を売る、収穫して自分たちの食糧にする、そうやって彼らの生活は回っています。だから、私が絶対に守らないといけないんです。そうしないと彼らの生活は壊れるから」

「でも、それで負けたら」

「その時はその時です。それが私の使命ですから」


私は驚愕を覚えた。

こんなに強いのに、それを他者のために使うなんて理解できなかったからだ。


なんのために?

強さがあるなら、自分が生き残るために使えばいいのに。

弱い奴を蹂躙して、支配して、自分の願望を叶えるために使えばいい。


なのに、強さを自分の利益にならないことに使うなんて、

本気で意味が分からない。


「…分からないよ」

「そうでしょうか?じゃあ、スライムさんはなんで来てくれたんですか?」

「え?」

「退くべきだって言ってましたよね。でも、そうはしなかった」

「それは…」


先程、オークについて行った私の姿がフラッシュバックする。


確かに、なぜ私は逃げなかったんだろう。

あの場面、いくら人間に囲まれた場所にいるとはいえ、危険なのはどう

考えてもルナについていく選択だった。


戸惑っている私にルナがニッコリと笑って言った。


「心配してくれたんですよね?」

「ち、違う!違うから!!」


思わず顔を背ける。


「ふふっ、ありがとうございます」

笑顔でルナは言う。


「……」


そうやって笑うルナに私は何も言うことができなかった。



◇◇



ぼんやりとした頭でふらふらとよろめきながら、

主が待つ場所に向かう。


その行動の意味は自分でもよく分かっていない。


ただ、主の命令は絶対だ。重い体を引きずって、ゆっくりと歩いていく。

やがて、待ち合わせの場所についた。


「おい、遅いぞ。それになんだ、貴様その傷は?」

命令係の男は、汚らわしいものに向けるものと同じ目でこちらを見上げた。

そうして、おでに思い切り蹴りを食らわせた。


大した威力ではないが、もともと立っていることがやっとだったから、

おでの体は、簡単に地面に転がった。


「役立たずが!まさか失敗したんじゃあるまいな」


命令係の隣にいた男が怒鳴ってくる。

たしか、カルシュウム男爵とか名乗っていたはずだ。


おでに命令してくる奴の更に上司のやつ。



おでは、命令係の男に必死に説明する。

テイムされた魔獣は声を出せなくても、思念で会話ができるのだ。


あの村の畑を荒らす命令は成功したが、その後、謎の女とスライムの一行に一方的に

やられたことを訴えた。


そのことを聞くと、カルシュウム男爵の顔が煮詰まったように赤くなった。


怒っているのだと気づくのに少し時間がかかった。


おでが気づく前に男はおでに何度も蹴りを食らわせてくる。

血に這いつくばっているおでは頭を手でふさぐことしかできない。


「貴様!それは誰かにバレたということではないか。ふざけおってぇ!」


なんでこうなってしまったんだべか。

おでは、これでもオークキングと恐れられた魔獣だったのに。


オークを統べる存在。

それがある日、圧倒的力に支配されて、それ以降こんな家畜みたいな扱いをうけて。


そうだ。あの女、あの女だ。

思い出しただけでも恐ろしい。道端の石を蹴るような簡単な作業のように、

おでを何度も何度も地に伏せさせ、テイムの魔法をかけてきたやつ。あで?あの女、どんな顔してたんだっけ。


プライドも自尊心もズタズタだ。

だれか、この地獄から助けて…


「やめなさい!」


その時、制止の声が上がった。

それは、他でもないおでをぼこぼこにしたあの女だった。


一体何しに。


「それ以上、そのオークを傷つけるのはやめなさい!!」


女は鞘から剣を引き出し、男たちに突き付けた。


唖然として女の方を見ていると、命令係の男が、怒声を上げた。


「なんだ、貴様は!この方をどなたと心得る!カルシュウム・マッシュ男爵だぞ」

持ち上げられたカルシュウムは満足したというように、胸を逸らす。


「狼藉者が、命が惜しければ消えろ!」

「まぁまて」


カルシュウム男爵は、命令係の男を制止して女に近づいていく。

そして、ねめあげるような視線を女に向けた後に言った。


「なかなかに美しい顔だ。報告は聞いているぞ。そこのオークの邪魔をしたのはお前なんだってな。

どうだ?私の愛人にならんか。そうすれば、私の邪魔をした罪を許してやろう」


そう言って、カルシュウム男爵は女の頬に手を伸ばしていた。

確か人間にも階級があったはずだ。おでたち魔獣のように力による基準じゃないが、

その階級の差は力では覆せないらしい。

あの女、とてつもなく強くて、おでを倒した。あんな強い女でも、この目の前のクズのような男に屈服させられてしまうのだろうか。


力が絶対の世界で生きてたおでにとってそれは、自分の価値観をぐちゃぐちゃに否定されるような嫌悪感があった。

だが、不快さを感じてもおでには何もできない。

悔しさに拳を握る。


その時。女のバックの中から一匹のスライムが飛び出してきた。

そして、カルシュウム男爵が伸ばした腕に体当たりをする。


「ぐお」


カルシュウム男爵はたまらず手を引っ込めて、後ろによろめく。


「なんだ!?スライム!?」


カルシュウム男爵は予想外のスライムに登場に驚いていた。


しかしすぐに気を取り直し、懐から短剣を取り出してスライムに切りつけた。


だが、スライムを切りつけようとする男爵の顔面に、女の蹴りが炸裂した。


男爵は鼻地を吹き出しながら後ろに吹き飛んでいく。

おではあんぐりと口を開けていた。


「スライムさんに手を出す奴は許しませんよ」

女はカルシュウム男爵を見下ろしながらフンスと鼻息を鳴らしたのだった。








読んでくださりありがとうございます。


補足です。

今回出てきたカルシュウム男爵はルナに興味を持っていましたが、

ルナはこの時点でまだ10歳です。


暗闇だったこととルナの発育がそこそこよかったので、

どうやらそのことに気づかなかったみたいですね。

なので、決して彼が幼女趣味というわけではないです。


まぁどうでもいいことなのですが…



□□


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