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21話.セレーネと真蜘羅の過去③

コボルトがスライムの体当たりによって吹き飛ばされた。

残りのコボルトは警戒して、動きを止める。


「あ、あんた。なんで」

なんと、我を助けたのは、我が狩ろうとしたスライムだったのだ。


さっきまで敵だった相手なのに、なんで。


「こいつらむかつくし」

「へ?」

「私と君の決着がついて、君が動けなくなったところを狙ってくるなんて。これは私と君の真剣勝負だったのに。私の勝ちを汚されたみたいでむかつく」


グサッとスライムの言葉が真蜘羅の心に刺さる。


なんて綺麗な目で見つめてくるんやろ。この子。


今までなんの躊躇もなくやっていた汚い戦法が、

人に指摘されると何故か後ろめたくなる。


ごめんなさい。我も割と漁夫の利的なことは今までたくさんやってました。

もうそれはやめます。

そう心の中で誓った。


グルルとコボルトが唸り始めた。

攻撃を再開するつもりだろう。


「来るよ。動ける?えっと」

「…我は真蜘羅(まくら)や。正直足やられて動けへんけど糸で奴らの動きをとめるくらいはできるわ」

「じゃあ、奴らを止めるのは任せるわ。マクラ!トドメは私が。あと私のことはセレーネって呼んでね」



次は二匹のコボルトが突っ込んできた。

コボルトは間違いなくセレーネよりフィジカルが強い。

そのことはさっきの一連の動きで分かっていた。


でも大丈夫だろう。


セレーネが突っ込んでくるコボルトに体当たりを仕掛けた。


スライムとコボルトは激突し、ズガンと衝撃音がする。


本来の力の差を考えれば、セレーネの方が押し負けるはずだ。


だが、セレーネのぶにょっと弾力のある液体の体はコボルトの勢いを一瞬止める。


「ここやな!!」

「いまっ!!」

我とセレーネの考えがシンクロした。


我は動きが止まったコボルトにすかさず糸を吹きかける。

それは、セレーネごとコボルトを捉えた。


2匹とも我の糸の網に捕まった。

だが、セレーネはすぐにその液体の体で糸を潜り抜ける。


結果、蜘蛛の糸にコボルトだけが捕らえられる結果になった。


コボルトは糸を爪で引きちぎろうとするが、

コボルトの爪程度で我の糸が切れることはない。


やった!まずは一匹。


やっぱり思った通り大丈夫だった。

セレーネの動きは自分の弱さを分かっている動きだから。


我と同じや。


二匹、三匹


学習もしないで突っ込んでくるコボルトを同じ方法で封じていく。


なんだろう。なんか楽しいわ。セレーネとの連携。

お互い息があってる気がする。


だが、


「危ないっ!!」

セレーネが叫ぶ。

なんだ?


後ろを振り返ると、初めにセレーネが体当たりで吹き飛ばしたコボルトが後ろから襲ってきていた。


後ろにいたから気づかなかったのだ。

しまった!!


この体でもう一度体当たりを喰らえば我の脆い体は粉々になるやろう。


今度こそ我は死を覚悟した。


その時。


「やああああああ!」


ズパンと鈍い音を立てて、コボルトの首が宙に浮く。


さっきまで蜘蛛の糸で捕まえていた人間の女が上段から剣を振り落としたのだ。


まさかこいつ、自力で我の糸を外したんか!?


なんてやつ。


「ルナァ!」

嬉しそうにセレーネが言う。

なんかもやっとするわ。

けど、ともかく助かった。


「あー、やっと自由になれたぁ。動けないってホント気分悪い」

「あ、ありがと」

礼を言うと、背筋が凍りつくような冷たい目で見られた。

なんやろう?この女さっきまでと雰囲気が全然違う。

それに、なんというか、怖い?


「私、あなたのことは許してないわよ。でも今はともかく、セレーネを攻撃してくるこいつらをぶちのめす」


そういってルナと名乗る人間の女はコボルトの群れに突っ込んでいく。


剣を一振り、二振り、三振り。


それで一頭、二頭、三頭とコボルトは切り裂かれ、残ったコボルトはどこかへ逃げていった。


つ、つえ~~~~~~‼


この女、こんな強かったんや。

なんにせよ、助かった。


安心したとたん、我の意識は遠くの彼方へと消えていった。


目覚めた時、頭がひんやりして気持ちがいいと感じた。



「あ、起きたんだね」

ムニュっと体系を変化させ、上から覗き込むように

見ていたのはセレーネだった。


「あ、あれ、我生きてたんや」

「ルナが回復魔法で直してくれたからね。結構危ない所だったみたいだけど、ルナはすごいんだ」

エッヘン、と自分のことのようにセレーネは得意そうにしている。

「そう、か」

何とか生き延びれたらしい。

「あ、起きたのですね?」

安堵していると、ルナという女が話しかけてきた。

何やら後ろからいい匂いがする。

「ありがとうな。我の傷治してくれたんやろ」

「まぁ、そうですね。あなたのことセレーネが気に入っちゃったらしいのですよ。なので、私たちを襲ったことは水に流してあげます、けどあんまり卑怯なことしちゃダメですよ?」

そういってルナという女は笑った。


え、豹変しすぎやないか?二重人格?

先程までの攻撃的で冷たい目をした女とはまったくの別人だ。

けど、おしとやかになっても目が笑ってね~!!やっぱこの女怖いわ~。


話し方もさっきと違う?

けど、怖さは同じや。

このルナとかいうやつは、得体が知れんなぁ。

怒らせん方がよさそうやわ。


「ルナ~。話し方王女様モードに戻ってるよ。私といるときは敬語やめてって言ったじゃん。

あと、マクラ!はい、これあげる」


そう言ってセレーネは紙でできた皿を渡してきた。

上に乗っているのはさっきのコボルトの肉か。

匂いで何となくわかる。


凄くいいにおいがする。この肉にかかってる液体は何やろう。茶色で何かすごいいい香りがする。


さっそく口に入れてみた。


肉を焼いているのか、ホカホカと温かさが肌から感じられる。我はいつも生で食べてるのに、こんな食べ方があるんやなと感心する。

茶色の液体も、肉の味と絶妙に合っていて、いつも食べる生肉より格段にうまい。



これが人間の調理か。


「我にこんな親切にしても何もないよ?」

「あるよ。マクラは私のライバルだからね。時には助け合いも大事なのだ」

「さっきも言ってたけどなんのことなん?それ」

「マクラは最強を目指すんでしょ?私も目指してるんだ。最弱から最強目指すなんて、めっちゃ燃えるじゃん」

ニッコリ笑ってセレーネが言った。

「あんたもか。そら確かにライバルやなぁ」

真蜘羅もニヤリと笑う。

そのまま残りのコボルトの肉を口に入れた。

牙と上顎で無理矢理噛み砕かなくても

簡単に噛めて、肉が口の中でとろける。


「うまぁ。うますぎるわこれぇ」

「あはは、幸せそうに食うねぇ」

「ほんとです…ほんとね」

ぎこちなくルナが言う。セレーネにさっき敬語を止めるように言われたからか。


セレーネとルナが我を見て微笑んでいる。

なんかいいな。この感じ。


あったかくて。


「じゃあ、マクラちゃん大丈夫そうだし、もう行こうか」

コボルトの肉を完食してから、しばらくして、

ルナは言った。

「そうだね」

セレーネも賛同する。


「あ」

2人は出発の準備をしている。

あかんわ。このままやと行ってしまう。


けど、今ならまだ間に合う。


出会ってまだ1時間くらいしか経っていないのに何故か

このまま別れたらいけない気がして、

我は急いで立ち上がった。


「ま、待って!我も一緒につれていって!お願いや。あんたはんらと一緒に行きたいんや」


我がそう言うと、2人は顔を見合わせる。


「急にしおらしくなったわね」

ルナが言う。

「けど、一緒に来てくれるの?嬉しい。こっちから言い出そうと思ってたのに」


セレーネも嬉しそうに言った。


セレーネは喜んでくれたけど、ルナはどうやろうか。

嫌がる、かな。我の事嫌いそうやったし。


ルナは若干嫌そうな顔をして考えたあと、何か納得したように瞳を閉じた。


「ま、こんな危険な蜘蛛、放置して置けないしね。色んな人に迷惑かけそうだし。マクラちゃん。あなたの捻じ曲がった性根、私がちゃんと更生させてあげるから心配しないで」

「余計なお世話や!」


こうして、王女とスライムと蜘蛛は共に旅をすることとなったのだった。


その後、とある鳥と、とあるドラゴンとの出合いがあるのだが、それは別のお話。








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