↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿中】スキル『魔石生成』で追放された僕、国から役に立たないと切り捨てられた辺境で「あんぱん」を作ります ~貧困領地が大発展していくまで~』  作者: きいろい なつ
第一章 あんぱん作り、布教編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/82

第18話  職人がいないなら


 「……ふむ。工房の拡大、設備の導入、そして新規雇用と教育期間中の賃金保障……」


 領主館の執務室で、僕は羊皮紙にサラサラと数字を書き連ねていた。

 傍らに置かれた小さな袋には、僕が生成した高品質な魔石が数個。


 「必要な分だけ換金し、事業の初期投資へ回す。無暗に市場へ流せば貨幣価値が狂うが、生産能力を作るための限定的な投入なら、経済を正しく循環させるエンジンになる」


 「あの……カイル様?  難しそうな計算をされておりますが、まずは『パン職人』を探さなければならないのでは……?」


 心配そうに覗き込んでくるのは、僕の婚約者であり相棒のリーザだ。美しい銀髪を揺らし、薄紫の瞳を不安げに揺らしている。


 「ノルデンは貧しい街ですわ。職を求めている方は大勢いますが、パンや菓子を作れる熟練の職人なんて、街には片手で数えるほどしか……」


 「大丈夫だよ、リーザ。職人がいないなら、職人でなくてもできる仕組みを作ればいい」


 「……はい?」


 首をかしげるリーザに、僕はずらりと並べた工程表を示した。


 「一つの製品を作るすべての工程に、職人の熟練した技が必要なわけじゃない。作業を分解するんだ」


 僕が羊皮紙の上に書いた工程を、リーザの細い指がゆっくりとなぞっていく。


「材料を運ぶ。豆を選ぶ。洗う。量る……。これなら、パンを焼いたことのない方でもできますわね」


「そう。包装や清掃だって同じだ。まずはそこを未経験者に任せる」


 僕はその隣に、もう一本線を引いた。


「少し教えれば、餡の仕込みや生地の分割、成形まで任せられるようになる。だけど――」


 最後に残った工程を、ペン先で軽く叩く。


「配合、発酵の見極め、そして焼き上がりの判断。ここだけは経験がいる」


「……なるほど」


 リーザの薄紫の瞳が、ぱっと輝いた。


「十人のパン職人を探す必要なんてないんですのね」


「そういうこと。一人の熟練した職人に、十人分の仕事をさせるんじゃない」


 僕は工程表を横へ滑らせた。


「一人にしかできない仕事だけを、その一人に任せればいい」


「まあ……!」


 リーザがぽん、と手を打った。

 店主には、ただパンを焼いてもらうのではない。  配合や発酵を見極め、働き始めた者たちに技術を教える――いわば工房全体の『先生』になってもらうのだ。

 これなら職人が少ないノルデンでも、生産量を増やせる。同時に、これまで仕事のなかった領民にも賃金を払える。

 ――だが。

 僕のペン先が、最後の一文字で止まった。

 焼成。


「……ここだな」


「焼き加減、ですか?」


「ああ。窯は増やせる。けれど、焼き上がりを見極められる人間までは増やせない」


 リーザが再び考え込む。

 だが僕には、心当たりがあった。

 魔石の普及によって仕事を失いつつある、ノルデンの古い職人たち。


「リーザ。――『火守り職人』を集めよう」


「火守り職人……?」


 そう。

 仕事は失っても、彼らが何十年も培った技術まで消えたわけじゃない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。