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ダリジャのもとを離れ、クロノスは現在王都の入口の検問のところに来ていた。
「まず入れるかが不安だなぁ。」
クロノスの現在の服装はフード付きのコートを頭までかぶっており、その下は手紙と同封されていた執事服を着用していた。
「次!」
守衛の兵士に呼ばれ前に進み、身元調査が始まった。
「何か身分を証明できるものはあるかな?」
「特にないですが、手紙なら所持しています。」
クロノスは守衛にルビチェスタから預かっている紹介状を渡した。
「ルビチェスタ様の紹介状か。なら入れてもいいだろう。一応フードをとってもらっても大丈夫かな?最近魔族の目撃情報があってな。申し訳ないが今ここを通る人皆に素顔を出してもらっているんだ。」
「わかりました。」
クロノスは恐る恐るフードを脱いだ。
「よし、魔族の類ではないな。もう良いぞ。」
「了解しました。ではこれで。」
クロノスは再びフードをかぶり王都の門をくぐった。門を潜り抜けるとそこには美しい王都の街並みが広がっていた。基本的に建物は二階建てでできており1階に店、2階に住居を構えているといった感じだ。石造りでできており、建物によっては3階建てにもなっている。
「久しぶりに来たけど、徒歩で移動するのは初めてだな。たいてい馬車で移動してたし。」
地図に書かれたアベリア家の屋敷に向かっていく。その間、王都の賑わいをみていると不思議と懐かしさを感じていた。
「昔はよくここにパーティーで来たもんだ。懐かしい。」
感傷に浸りながら道を歩いていくと怒声が聞こえてきた。
「何回も言ってんだろ!この杖を俺様によこせって言ってんだよ!聞こえねえのか?!」
声の方向を見ると青い単発の自分と同じくらいの貴族の子供らしき男が店の人間に罵声を浴びせていた。
「ですから、こちらは別の方向けに特注で作ったものですので差し上げることはできないんです。」
「てめえ!俺様をだれだと思って…!」
「落ち着いてください。」
クロノスは二人の間に入り仲裁を試みた。
「ああ?なんだお前。邪魔だからそこをどけ。」
「あなたがこの杖をあきらめるならどいて差し上げますよ。」
「てめえ、俺様がどんな人間なのか知ってんのか??」
「知りませんよ。ただお店の方がきちんと理由も示して断っているのに立場を利用して無理やり奪おうとするのはどうかと思いますよ。」
「っ…このガキ…さっさとどけ、お前に用はないんだよ!」
男が殴りかかってきたがその拳をクロノスはなんなく受け止めて見せた。そしてその拳を強く握りしめた。男の拳はミシミシと音をたてていた。
「いたたた…!!やめろ!はなせ!」
「杖をあきらめるなら離してあげましょう。」
そう言っている間にもクロノスは力を緩めるどころかむしろ力をいれていった。
「わかった!あきらめる!だからはなしてくれ!」
クロノスは手の力を抜き男を開放した。
「ちっ、覚えとけよ。」
男は腫れた手を抑えながら去っていった。
「大丈夫でしたか?」
「ああ、ありがとなあんちゃん。この杖は特注だからとられるわけにはいかねえんだ。」
「ならよかったです。では俺は急いでるのでここらで。」
「おう、機会があったら寄ってってくれよ!」
店での騒動の後、何事もなく屋敷に着いた。
「ここかな。」
「お、君がクロノス君で良いかな?」
振り返ると青い髪を後ろで結んだ青年が立っていた。
「そうですが、あなたは…?」
「初めまして、アベリア家長男のアイビー・アベリアと申します。」
丁寧にお辞儀をされたのでクロノスも慌てて頭を下げた。
「申し訳ございません。まさかアイビー様だとは思わず。遅れましたが私はクロノス・スペンサーと申します。」
「一人称はいつも通りでかまわないよ。にしても本当にスペンサーを家名としているんだね。」
「はい、師匠からいただいた家名…ってもしかしてご存じなのですか?」
クロノスは驚愕の表情をしてアイビーを見つめる。
「知ったのは最近なんだけどね。立ち話もあれだし中に入っていいよ。」
「わかりました。お邪魔します。」
そうしてクロノスはアイビーに招かれ屋敷の中に入っていった。
「ここがエントランスだね。」
入ると少し豪華なエントランスが出迎えた。正面には机が一つとそれを囲むようにソファが三つあった。照明には光がともっていた。クロノスは歩きながらその内装の豪華さに驚いていた。そこから二階にあがり使用人の部屋を案内された。
「自分の部屋はどこにあるんですか?」
「君の部屋は3階にあるよ。」
「この階じゃないんですか?」
「この階にはもう部屋がなくってね。三階にあった物置を無理やり空けてそこを部屋にしたんだよね。」
「なんか申し訳ないです。急に自分がくるってなって片付けなどさせてしまって…」
クロノスがうつむくとアイビーは笑ってみせた。
「大丈夫だよ。むしろいらない物も見つかってよかったよ。さ、君の部屋に行こう。」
三階に上がって少し歩いたところにある部屋に案内された。
「ここがクロノス君の部屋だよ。」
部屋はモダンチックな内装になっていた。クローゼットにベットが一つずつあり基本的な日知用品や家具はそろっていた。
「基本的にはここの部屋を使ってもらうことになるかな。あとカギはつけなくてもつけててもどちらでも大丈夫だよ。夜はなるべくつけたほうがいいとは思うけどね。」
「わかりました。ここの部屋は自由に使っていいんですよね?」
「ああ、好きに変えてもらってかまわないよ。次のところ行こっか。」
さらに少し歩くと少し豪華な扉が四つと正面に観音開きのような扉があった。
「ここの扉四つは僕ら兄妹と父の部屋だよ。そして一番奥にある扉は父の執務室だね。何か用があったら自由に来ていいんだけどノックぐらいはしてね。」
「了解しました。」
「よし、じゃあ執務室に行こうか。父が待っているから。」
クロノスの自室から出て少し歩いたところにある執務室の前に着き、アイビーはノックをした。
「父上、クロノス・スペンサーを連れてまいりました。」
「わかった。入っていいぞ。」
アイビーが扉を開けると正面にある机の奥に青い髪の男が一人座っており、手前にある2つのソファのうちの右側のソファに水色のロングヘアーの少女が座っていた。
「やあ、こうやって話すのは初めてだねクロノス君。私がアベリア家当主のルビチェスタだ。よろしく頼むよ。」
クロノスは膝をつけ胸に手を当てて挨拶をした。
「お初目にお目にかかります。ダリジャ・スペンサーが弟子、クロノス・スペンサーです。よろしくお願いします。それとクロノスで構いません。」
「そうか、よろしくねクロノス。カメリア、挨拶をしなさい。」
ソファに座っていた少女が立ち上がり、ぶっきらぼうに挨拶をする。
「…カメリア・アベリアよ。よろしく。」
「ええ、よろしくお願いいたします。」
二人が顔を合わせることはなかった。言葉だけでの挨拶となった。
「アイビー、サンクレットはどこに行った?」
「それが少し前に買い物に行くと言い残し屋敷を出たとのことです。」
「全く、時間には部屋にいろと言っただろうに…すまないねクロノス、少し待っててもらえるかな。」
「全然大丈夫ですよ。」
そこからルビチェスタとアイビーと軽い雑談をしていると、
「親父、悪い、遅くなった。入っていいか。」
「何をしているんだ。さっさと入れ。」
扉が乱暴に開けられるとそこには先ほど店の人を脅し、クロノスに拳を握られた男が立っていた。
「…あれ先ほどお会いしました?」
「あ?…ああ!お前さっきの!」
「なんだ二人とも会ったこともあるのか?」
男はクロノスを指さしたかと思うとずかずかと近づいてきた。そしてクロノスの眼前まで迫ってきていた。
「お前がいなければさっきの杖は俺のものだったのによお!ふざけんなよ!」
「そんなこと言われてもあの杖は所持者が決まっていたのに奪おうとしたのはあなたですよ。」
「んだとてめえ!」
「やめんかサンクレット。父上の前だぞ。」
クロノスの胸ぐらをつかんだサンクレットをアイビーは腕を使い止める。サンクレットもハッとして手を離す。
「…サンクレット、お前はまたそんなことをしているのか。すまないねクロノス、この馬鹿が次男のサンクレット・アベリアだ。ほら挨拶せんか。」
「…サンクレットだ。」
「どうぞよろしくお願いします。」
クロノスは頭を下げずに挨拶を済ませた。その姿を見たルビチェスタはため息をはき、そひてクロノスのほうを向きなおした。
「クロノス、早速だが決闘をしてもいいかな?面倒ごとはさっさと終わらせたほうがいいだろう?」
「大丈夫ですよ。お相手はサンクレット様おひとりで大丈夫ですか?」
「いやそれがね…」
「私もよ無適正者。」
先ほどまで座って退屈そうにしていた少女カメリアがすくっと立ち上がった。
「あんた私の指南役なんでしょ。なら私より強くないと認めることはできないわ。」
「…そういうことだクロノス。すまないが二人の相手をしてはくれないかね。」
ルビチェスタはため息交じりにクロノスに尋ねた。
「別に構いませんよ。いっぺんにやってしまいましょう。」
「…それは私とサン兄の二人を同時に相手するってことかしら?」
「ええ、そうですよ。」
クロノスがさらっとつげるとサンクレットが青筋を浮かび上がらせて怒声を出した。
「なめてんじゃねえぞ無適正者!今の発言絶対後悔させてやるからな!親父さっさとやろうぜ。」
「ああ、そうするとしよう。しかしクロノスよ、本当にいいのかね?親の私が言うのもなんだが彼らはそれなりには強いぞ。」
ルビチェスタが心配そうにクロノスのほうを見るとまったく焦った様子なく佇んでいた。
「構いませんよ。勝ちますから。」
「…もう容赦しねえ、完膚なきまでに叩きのめしてやる。」
「いきましょう兄さま、こんなやつに時間をとられるわけにはいきませんから。」
そうしてクロノスは屋敷についたかと思ったら決闘をすることになったのだった。
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